15.思わぬ助け(アレクシス目線)
屋敷に着くと、メイドたちが慌ただしく駆け回っていた
私の存在に気づいた侍女に名を告げると、驚きと安堵が入り混じった表情を浮かべた
「レティシア様はどちらに?」と尋ね、応接室へ向かう
途中、侍女が言葉を選びながら話しかけてきた
レティシアが私の話をよくすると
お嬢様が家族以外の、それも男性の話をするのは初めてだと
愛おしさと、優越感が心を支配する
応接室の扉の前で、私はそっと手をかける
扉を開けると、レティシアは小さく肩を震わせ、視線を下に落としていた
恐怖と緊張が全身に張り付いているのがわかる
あの男が婚約の話を押し通そうとする声が響く
内心で吐き捨てる
粗野な圧力で彼女を屈服させるつもりか
私は感情を抑えて声を発した
「失礼いたします、グリムヴァルト殿」
声は冷たく、視線には冷徹な意思が宿る
「おや、ルーヴェンシュタイン殿……何故ここに?」
何故だと?
理由は分かっているだろう
感情は出さず、冷静に見下ろす
「私はヴァルグレイヴ嬢と友人でして
偶然近くを通りかかった折、貴殿の馬車が慌ただしくこちらへ向かう様子を目にいたしました」
「それで心配して様子を見に来たのです
侍女に聞けば、両親不在の中で話を進めようとしていると
ヴァルグレイヴ嬢は内気な方です
彼女の意思が尊重されるよう、私も同席させていただきたく」
揺るぎない重みを帯びた言葉
決して拒否はさせないというその圧
があの男の押し付けがましい態度を一瞬で制する
応接室の空気は、完全に私の掌の上にある
目の端でレティシアを確認する
震える肩、固く握られた手
この脆い存在を、私以外の手に渡すわけにはいかない
「レティシア、私に全てを任せて安心してください」
私はレティシアを安心させる様、軽く微笑む
それと、わざとレティシアと呼び、あの男に親密さを見せつける
「ふむ……なるほど、噂は本当だったか」
噂か
私が新たな駒を作るため、ある令嬢に近づいているという話
見当違いも甚だしいが、聞かれても否定も肯定もせず、あえて曖昧にしていた
私が駒ではなく本気で欲していると知れば、策略、陰謀、嫉妬などに巻き込まれる可能性が高い
だから今はそのままにしている
まだ、環境が整っていない
私は距離を調整し、彼女の隣に座る
安心させるように視線を向けると、レティシアは安堵の息を吐いた
彼女に触れていいのは
価値を知るのは
――私だけでいい




