虹色の混沌Sheet5:スペクトル
「『ナカムラケンタ』!人の名前だ!」薔薇筆の声が店内に響き渡った。
「まぁ、どうにかこうにか正解にたどり着いたな」アキラは言ったが、エルはどこか浮かない表情を浮かべていた。
「エル、何か気になることでもあるのか?」
「うん、色は関係ないのかなって…」
これに対して薔薇筆が答えた。
「ウチのクイズだって数え歌に意味なかったでしょ。アレと同じじゃないですかね」
「ブラフってことか…」川口が呟いた。
「でも『NIJI嬢』のメンバーカラーでしょ?何か意味を持たせたいのが普通じゃない?」
育美も引っ掛かりを感じているようだった。
「蒸し返すようだけど、殺されたか誘拐されたか知らねぇけど、そんな時に回りくどい…」
「グッさん、それは一旦置いておこう」アキラが制した。
「大体、虹色っていうけど順番もバラバラじゃねぇか」
「!」川口の何気ない一言に皆が虚を突かれた。
「それだ、グッさん!」アキラがそう叫ぶ間にも、エルは既に動き出していた。
元のカラーの上にカタカナの名前を入れたセル。それをコピーしながら、虹の光の波長順に並び替えていく。
「『ムラタケカンナ』…こっちも人の名前になってる」薔薇筆が呆然と呟いた。
「"アナルグラム"ってやつ?」エルが思わぬ言い間違いをした。
「ちょっ、エル、"アナグラム"な。"ル"は要らないから」アキラの顔が何故か赤くなっている。
「一問目からこれって、ちょっと難易度高すぎじゃないですか?」薔薇筆は怪訝そうに言った。
「まぁ、ヒントで『男ではない』とか付けとけば回避できるかも」育美の妥協案には納得できる部分があった。
「じゃあ今回はアドバイザー的立場から、難易度が高めの問題なのでヒントでフォローするのが望ましいと思います…とでも返しておくわ」アキラが言いながら薔薇筆の方を向いた。
「こりゃこっちの作問も気合入れて作らねぇとな。頼りにしてるぜ、ペンちゃん」
「そうですね。問題送ってって言ったのはこっちですけど、何か挑戦状叩きつけられた気分です。やってやりますよ!」
薔薇筆の言葉に、川口が飲んでいたドリンクにむせて顔を赤くした。
アキラと育美はニヤニヤしている。アキラがツッコむ。
「それ、店のサイトからいきなりクイズ送り付けてきた君が言うかな〜"薔薇筆"くん」
わざとらしくその時のハンドルネームで呼ぶ。
今度は薔薇筆の顔が赤くなった。