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Sheet2:一通のメール

『エンター』のサイトに新作クイズをアップロードしたのは、その日の仕事を終えた直後のことだった。

翌朝、PCを起動しメールをチェックすると、問い合わせ用アドレスに1通の新着メールが届いていた。

受信時刻を確認すると、昨夜のクイズ公開からわずか1時間も経っていなかった。恐らく、送信者がクイズを解くのに要した時間はほんの数分程度だったのだろう。


そのメールには、クイズの解答とともに、ある依頼が記されていた。本文の内容は以下の通りだった。

------------------------------

スナックエンター

クイズご担当者様


平素よりエクセルクイズを楽しく拝見させていただき、誠にありがとうございます。

今回の答えは『713』で間違いないかと存じます。コメントの使い方が非常にユニークで、早速仲間たちにもシェアさせていただきました(もちろん、答えは伏せております)。


クイズ正解者への来店時の特典(最初の一杯無料)は大変魅力的ですが、遠方在住のため残念ながらその機会に恵まれておりません。そこで、恐縮ではございますが、一つご相談させていただきたく存じます。


私は山藤と申しまして、東京を拠点にイベントの企画・運営を手がけております。約3ヶ月後に、あるクライアント様の周年記念イベントがございまして、その余興の一つとして依頼を受けております。具体的には、いわゆる"リアル脱出ゲーム"のような謎解きですが、クライアント様の業種の特性上、「エクセルを使ったクイズ」という形式を希望されております。


つきましては、このクイズの作問にご協力いただけないかというのが、今回のお願いでございます。これまでに出題されたものの流用でも構いません。薄謝ではございますが、クイズの使用料・制作料もお支払いさせていただく所存です。

ご検討いただける余地がございましたら、イベントの詳細等、追ってご連絡させていただきます。ご連絡をお待ちしております。


何卒よろしくお願い申し上げます。

------------------------------

「...というわけだが、どうする、ペンちゃん?」

アキラがグループLINEでメールの内容を共有すると、薔薇筆が店の開店と同時に駆けつけてきた。育美も一緒だ。

「その会社について調べてみましたが、関東の謎解きゲーム業界ではそこそこ知名度があるようですね。自社の常設スペースも持っているみたいです」薔薇筆はスマホの画面を見せながら説明した。

「昨日のクイズもあっさり解かれてしまったし、少しリベンジしたい気持ちもあります」と薔薇筆。横で育美も同意するように頷いている。


「エル、お前はどうだ?やってみたい気はあるか?」アキラがエルに尋ねた。

「うーん、私は問題を作るより解く方が好きかな」とエルは少し躊躇いがちに答えた。

「エルさんには問題の監修をしてもらったらどうでしょうか」と育美が提案した。

「そうだな。じゃあ、一旦協力する方向で返信しよう。それと、先方にすでに出来ているクイズがあれば送ってもらおうか」アキラの提案に薔薇筆も乗り気な様子だ。

「向こうのクイズ、どんなものか腕前拝見といったところですね」


話がほぼ固まった頃、川口が姿を現した。

「まぁ、俺があれこれ口を挟む案件でもねぇし、チームじゃなくてエンターで請け負えばいいんじゃねぇか。それより、二階、いいか?」

店の二階の居住スペースには猫のオムがいる。川口が手にしたレジ袋の中身は、恐らく猫のおやつだろう。


彼はただ猫と触れ合いたいだけのようだった。

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