無添加79話 にぎにぎタイム
昼になり、ちょこちょこお菓子をつまんでいた連中も本腰を入れて飯を食おうと屋台へと並び始める。
マグダとロレッタは七号店でお好み焼きを、ジネットは二号店でクズ野菜の炒め物やちゃんちゃん焼きを作っている。
というかジネットは屋台とウーマロ作の簡易厨房を行ったりきたりして大車輪の活躍だ。
ちゃんちゃん焼きは何度かお披露目したこともあり安定の人気を博しているが、意外だったのがくず野菜の炒め物への関心が高かったことだ。
無理やり食べても美味しさに欠けるヘタや皮を、ちょっとした一手間、一工夫であれよあれよとご馳走に変えていく。まぁ、その『一手間』がプロ級の技術の結晶ではあるのだけれど。
奥様方が物凄く興味深そうにジネットの包丁さばきを観察している。
見られながらの調理に少し緊張しているようにも見えるが、それでも楽しそうに工程を重ねていくジネット。
そういえば、クズ野菜の炒め物を一般公開するのは初めてだったかな。前に仲間内でお料理教室をやったことはあるけれど。
あんま見せるような料理じゃないからな。だって、クズ野菜の炒め物だし。
一般家庭で言うところの『冷蔵庫の中の残り物ぶち込みチャーハン』みたいなものだ。わざわざ人前に出てきて見せつけるようなものではない。
だが。
「すごいわ……ヘタがあんなに綺麗に」
「えっ、そこも捨てずに使えるの!?」
「はぁ~……大したものねぇ、若いのに」
「ワシらが若いころはなぁ、そりゃあ食べる物がなくて、あぁやって手間を惜しまずなんでも食べたもんじゃ」
「いや、私たちも一年くらい前までは必死にやりくりしてましたよ」
「けど、あそこまでは……さすがに、ねぇ」
「プロってすごいのねぇ」
「なんだかもう、魔法みたいね」
凄くいい反応だ。奥様方が感心している。
誰もが食い入るようにジネットの手元を見つめている。その誰もが楽しそうに見えた。
その気持ちは分かる。俺も、女将さんの料理を好きでよく見てたもんな。
匠の技は、まさに芸術なのだ。
ジネットの包丁さばきにしたって、あれは最早一つのエンターテイメントといっても過言ではないだろう。
……俺も、見てるの好きだしな
「ねぇ、店長さん。さすがに魚の骨なんかは食べられないわよね?」
「頭と一緒に出汁を取ってみてはいかがでしょう? あとはカラッと二度揚げして骨せんべいにしたり、水気を飛ばした後で粉にしてふりかけに混ぜると面白い風味が出ますよ」
「食べられるんだ、骨!?」
一般主婦からの質問に丁寧な回答をするジネット。
日本だったらカリスマ料理人としてテレビで引っ張りダコだったかもな。爆乳だし。顔も、まぁ……可愛いし?
「では、味を見てみてください」
「……んっ!? 美味しいっ!」
「この歯ごたえが、また……っ!」
「ちょっと、行商ギルドさ~ん! ゴボウとレンコンいただくわ!」
「毎度ありがとうございま~す!」
アッスントがキラッキラした顔をして駆け回っている。
実演販売だな、実質。出演料もらっとけよ、ジネット。
――と、いう具合に、奥様方はジネットの周りに群がっているのだが、一方のオッサンどもはというと……
「モリーちゃんのおにぎり、小さっ! 可愛っ!」
「俺、シスターのとこ並んでくる!」
「ミリィちゃんが、おにぎり『あつっ、あつっ』ってしてる!? 萌えるっ!」
「デリアさーん! シャケくださーい!」
俺考案のおにぎりスタンドに群がっていた。
居並ぶ美女の中から、好きな娘に目の前でおにぎりを握ってもらえるのだ、そりゃ並ぶさ。
手間と工数削減のため、一人につき一具材を担当してもらっている。
パウラとモリーがおかかでネフェリーとミリィが梅。ノーマがシソちりめんでデリアはもちろんシャケだ。
ベルティーナはジネット特製の海苔の佃煮を担当している。これがまた、ジネット会心の逸品なのだが、美味いぞぉ~。あまりの美味さに『ご○んですよ』という名前を付けようとしたら「海苔ですよ?」と真顔で返されてしまった。海苔の佃煮はご飯じゃなくても『ごは○ですよ』なのに……
ちなみに、なんでミリィが「あつっ、あつっ」ってなっているのかというと、朝用意したご飯じゃとても足りないと判断した結果、追加で炊いたからだ。……英断だったよ、小一時間前のジネット。さすが、料理の量を見極めるプロだ。
どの女子の前にも凄い列が出来ている。
「パウラちゃ~ん、酒は~?」
「日が沈んでからね」
「ちぇ~!」
パウラは酒飲みどもに人気だ。
パウラの顔を見ると酒が飲みたくなる体質になってるんじゃないか、あいつら?
パブロフの犬……いや、イヌはパウラの方なんだけど。
「あ、ヤシロ~! 見て見てっ、おにぎり大盛況だよ!」
俺たちを見つけて、ネフェリーが自慢気な顔で手を振ってくる。
本当に大盛況だ。おにぎりが……というか、『美女が握るおにぎり』が。
おにぎりスタンドに群がるオッサン連中は、具材ではなく明らかに女子たちを見て列に並んでやがるもんな。
何度も同じ列に並ぶオッサンも散見される。……握手券付きの定食を作ったらバカ売れしそうだな。
「さすがにこの辺は上手いな」
「へへっ! あたいらは陽だまり亭で何度も作ってるからな」
デリアがちょっと大きめのおにぎりを豪快に握っている。
デリアのおにぎりは迫力があって、食べ盛りのガキや肉体労働系のオッサンどもに好評なのだ。今日も顔なじみが列を作っている。
グーズーヤがキラキラした目でデリアを眺めている。あいつだけ特別料金取ってやろうかな。たぶん払うだろうし。
「は~い、おまちどうさま~」
「よく噛んで食べてね」
パウラとネフェリーが出来たおにぎりをカウンターの大皿へと置く。
寿司屋の下駄ように、完成品は客の前の皿に置かれる。客はそれを受け取って列を離れていくのだ。
おにぎりは一律同じ値段なので、おにぎりを受け取った者は皿の横の木箱に小銭を入れていく。
回転率最優先のやり方だな。多少計算が合わないのは覚悟の上なのだが……バカ正直なヤツばっかだからなぁ、四十二区は。俺なら入れたフリして入れなかったりするのに。みんな真面目に金を払っていく。偉いぞお前ら。
陽だまり亭お手伝い常連は手際もよくどんどんと客を捌いていく。
なので、列が出来てもさほど客を待たせることはない。
そんな中、凄まじい大行列を作っている場所がある。ノーマのところだ。
パンダが初来日した時のような盛況ぶりだ。
「凄いな、ノーマのとこ……」
「朝に試食したけど、美味しかったもんね、シソちりめん」
「いや、エステラ。並んでる男どもの顔を見てみろ。あれはシソちりめんを楽しみにしている顔じゃねぇよ」
「はは……まったく、四十二区の男たちときたら……」
完全に『ノーマの握ったおにぎり』目当ての男どもが、少年のような無邪気な瞳をキラキラさせて待機している様は非常に暑苦しい。
前から順に水風船をぶつけていってやりたいくらいだ。
「しかし凄い列だな。これではいつ食べられるのか分からぬではないか、なぁ、ギルベルタ」
「推奨する、ルシア様、別のところへ行くことを、私は」
「いや待ってよ、ギルベルタ。領主たる者、注目のパビリオンは真っ先に押さえておくべきだと、ボクは思うよ」
パビリオンって、万博かよ。
何をどう翻訳したんだ、『強制翻訳魔法』?
まぁ、言わんとすることは分からんでもないけれど。
つーかエステラ、お前は単純にシソちりめんが食いたいだけだろう。
「では、エステラよ。そなたは私に、この行列の最後尾に並べというのか? あぁ、そうか。カタクチイワシが並べば万事丸く収まるな」
「何一つ収まってねぇよ」
「私はおにぎりが食べてみたいがこの行列に並ぶのは苦痛だ。一方の貴様には拒否権がない。利害が一致しているではないか」
「俺の利がどこにもねぇじゃねぇか!?」
拒否権は、ありまーぁぁす!
「大丈夫ですよ、ルシアさん……主催者権限を発動します!」
「うっわ、ずっる!」
「うるさいよ、ヤシロ。いいじゃないか、みんな友達なんだから」
こいつは、普段貴族っぽい強権は一切振るわないくせに、こういうしょーもないところではフル活用しやがるよな。
「さすがに気の毒思う、この列に並んでいる者たちが」
「確かに、これほどあからさまに順番抜かしを行うと、我々の主の悪評が立ちかねませんね」
権力にモノを言わせる気満々の領主二人を抑えるべく、良識派の給仕長二人が列に並ぶ男たちの前に進み出る。
「ここは真っ当に、拳で語り合いましょう」
「いい思う、私も。出ないはず、文句は、正々堂々戦った結果なら!」
「「「お先にどーぞ!」」」
「「「列とか関係ないんで、どーぞ!」」」
「そうですか?」
「そこまで言うなら、皆様が……」
「「「どーぞどーぞ!」」」
必死だなぁ、四十二区オジサンズ。
……給仕長二人を相手に拳で語るとか、野生の熊を素手で狩るのと同じくらい不可能だから。
「権力にモノを言わせずに済んでよかったです」
「よかった思う、私も」
腕力にモノを言わせたけどな!
まったく、とんだ認識違いだった。良識派どころが、めっちゃ武闘派だったわ、この給仕長たち。
そうして、領民たちの多大なる厚意によって、エステラとルシアは堂々と横入りを敢行した。
支持率、地に落ち果てろ。
「違うんだよ! ボクたちは心底おなかがすいているんだよ! でも彼らの目的は空腹を満たすことじゃないだろう?」
「まぁ、そこは確かにそうなんだろうが……」
それにしても、やっぱり飲食店に従事する者としては、横入りはちょっと看過出来ないんだよなぁ……
というわけなので……
「お前らも、食ったらおにぎり係な」
「えっ!? ボクたちもやるの!?」
「貴様、他区の領主である私をアゴで使う気か?」
「他区の領主って、リカルドやゲラーシーと同列だろ?」
「一緒にするでない!」
いや、一緒のはずだが!?
「嫌なら並べ」
「ふん。貴様の指図は受けぬ。私はノーマたんに握ってもらうからよいのだ! な~、ノーマたん?」
「ぅなぁぁあああ!? 尻尾をもふもふしながら背中に張りつくんじゃないさね!? 背骨がぞわぞわするんさよ!」
昨日一緒に泊まったことで、えらくノーマが気に入ったようだ。
嫁にもらってやってくれるか、ルシア? お前ならノーマを養える。
「あんたの分、先に作ってやっから、ヤシロが言ったようにあとで手伝いなね。でなきゃ握ってやらないさよ」
「うむ。ノーマたんがそう言うのであれば仕方ない。カタクチイワシはともかく、ノーマたんの言うことには逆らえぬからな。もふもふ」
「尻尾をもふもふするなって、さっき言ったさよ、アタシ!?」
「それは聞けん」
「逆らってるさね!? 舌の根も乾かぬうちに!?」
ルシアがこれでもかとノーマの尻尾をもふっている。
気が付いたら、レジーナが混ざっていた。あいつ、面白そうなところにはすぐ混ざるな。まったく……
よし、俺も混ざってこよう!
「そこから動くと、お父様の刑に処しますわよ、ヤシロさん?」
「な、なぜイメルダがここに!?」
そして、そこはかとなく恐ろしいぞ、『お父様の刑』。
ハビエルがやられているようなことをされるのか、それとも……今後一生ハビエル扱いされるのか!?
うわ、後者の方が嫌だ。
「せっかくだから、イメルダとレジーナも参加していけ。ファンが喜ぶ」
「どうしてこのワタクシがそのような真似を? ご冗談にもほどがありますわ」
「まぁ、ファンがいないなら仕方ないけど」
「さぁ、お並びなさいまし! このワタクシが直々ににぎにぎしたおにぎりを所望されるボーイズ&紳士の皆様!」
ドレスの袖を捲くり上げ、真っ赤な鉢巻を巻いて意気込むイメルダ。
乗せやすいなぁ……つか、なんで運動会の鉢巻持ってきてるの?
「ワタクシの舞うようなおにぎり捌き、とくとごらん遊ばせ!」
言うが早いか、イメルダはデリアから引っ手繰ったしゃもじでおひつのご飯を掬い取り、手のひらへと乗っけた。
「熱っついですわ!?」
舞うような手捌きどころか、まともに持ってもいられなかったイメルダ。
ご飯をおひつに戻して、水瓶に両手を浸けて冷やしている。
お前の舞い、滑稽だな。
「ほれ、レジーナ。お前もやってみろ」
「せやけどウチ、さっきお尻かいた手ぇ、洗ってへんさかいに~」
「大丈夫だ。熱湯消毒してやるから、手ぇ出せ」
「アカンって!? それ、めっちゃ湯気立ってるやん!? シャレにならへんヤツやん!」
何度も同じようなことを言うからだ。
つべこべ言わずに握れ。
「言ぅとっけど、全っ然じょーずに出来へんからな?」
「期待してねぇから気負わずやれ」
「ホンマ厳しぃわぁ……将来、子供がドMになる未来しか見えへんわ」
「縁起でもない未来を見てんじゃねぇよ」
ドMになるような教育をする予定はねぇよ。
しゃもじの握り方一つとっても、レジーナは素人丸出しだった。
ご飯をしゃもじで掬う。そんなことですらたどたどしい。
こいつ、ホント薬以外のことまるでダメなんだな。部屋も散らかってるみたいだし。薬研の扱いは見惚れるくらい鮮やかなのにな。
「あ~、アカンわぁ。べたべたひっついて、ぶっさいくになってもぅた」
でろ~んと、歪な形の米の塊が晒される。
広げた手のひらや指先に米粒がびっしりついている。
水が少ないんだよ。ちゃんと手を濡らして、素早く握れば指にはひっつかないのに。
「こんなん食べたい人なんておらへんやろ? せやからウチはパs……」
パスしたいなどと言い出す前に、レジーナの手の上の米の塊をひょいとつまみ上げる。
それをノータイムで口へと放り込んで咀嚼する。
「…………うん。塩が足りないな。もっと『えっ』って思うくらい付けてもいいぞ」
「いや……自分、何を普通に味のダメ出ししとんねんな……」
「あぁ、そうだな。両手をしっかり水で濡らして、もっと手早く握れば米粒は付かねぇよ」
「そうやなくて! …………よぅ食べたな、あんなぶっさいくなもん」
ちょっと膨れたような顔で俺を睨むレジーナ。
なんだ? 上手く出来なかったのが恥ずかしいのか? 言ったろうが、期待はしてないって。
「お前のおにぎりは稀少だからな、価値が十分にある。売れる物に関する協力は惜しまねぇよ。失敗したら俺が全部食ってやるから、どんどん握れ」
「……さ、さよか。お米無駄にならんくてえぇな、それは……」
ご飯粒だらけの指をもにもに動かして、憎まれ口を叩きたそうな顔をして口を開くも、上手くいかなかったのか「うぐぅ……」と歯を食いしばって顔を背ける。
「なんや、アレやな。自分がウチんとこで精力ギンギンになる薬を躊躇いなく飲んだ時のこと思い出して、こそばいなぁ~」
初めてレジーナと会った時に、こいつを信用させるために怪しい薬を口にした――フリをした――時のことだな。そんなもんをいちいち覚えてんなよな。
「お尻かぃ~なったわ。かいてんか?」
「自分でかけ」
「せやけど、こんなご飯粒だらけの指でかいたらお尻にご飯粒が…………はっ!? ウチが失敗したヤツはみんな自分が食べるって……まさか、わざとお尻にご飯粒付けさせてぺろりんちょ――」
「さっさと手を洗ってケツをかいて次のを握れ!」
「お尻かいた後の手は洗うなって!?」
「洗えー!」
お前、照れ隠しの暴走も大概にしろよ!?
ここ、食い物を扱ってるスペースなんだわ!
そういうことばっかり言ってると、またエステラが怒って……
「ヤシロ……」
ほらな?
なんでか俺の方に矛先が向く――
「初対面のレジーナのところで飲んだ薬の件、報告受けてないんだけど?」
あっ、なんか違うところに飛び火してるっぽい!?
「報告しなきゃいけないようなことは何もなかった……つか、報告の義務がない!」
「ヤシロさん。私も少しお話を伺わなければいけないかもしれませんね?」
「ベルティーナに怒られるようなことは何もなかったよ!」
というか、あの時は俺のナイス判断で被害を出さずに済んだんだぞ?
俺でなければレジーナかジネットがとっても危険な目に遭っていたかもしれないんだ。褒められてもいいくらいなんだよ、俺は!
……ただ、舐めたフリだったってのはレジーナに秘密なのでここで詳しく説明は出来ないけども。
「なぁ、手ぇ洗ったけど、これでえぇかな、ギンギンはん?」
「火種をまき散らすな、真っ黒薬剤師!」
お前のために甘んじて受けてる被害もいくつかあるんだからな、こっちは!?
もうちょっと感謝して、気を遣って!
「ベルティーナ。レジーナに教えてやってくれるか?」
「はい。私でよろしければ。レジーナさん、見ていてくださいね」
普段、あまり料理はしないというベルティーナだが、こいつは子供のための労力は惜しまないヤツだ。以前、陽だまり亭で客のガキがご飯を残した際、俺がおにぎりにしてやったら完食した――そんな話を聞いて以降、ベルティーナも教会のガキにおにぎりを作ってやっているらしい。
その手つきはとても慣れたものだった。
「1、2、3……と、軽く包み込むように握ってあげると食べた時に口の中でご飯粒がほどけていく感じで、とても美味しいんですよ」
言いながら、あっという間に綺麗なおにぎりを作ってみせる。
お見事だ。
ジネットとは異なるが、安心感がある手つきだったな。
「はい、ヤシロさん。味見をお願いします」
「なんで俺に?」
「いつも味見をさせていただいていますので、そのお返しです」
そのお返しなら、かなりの量をいただかないと釣り合いが取れないと思うんだが……まぁ、ベルティーナと同じ量を渡されても食えないけどさ。
ベルティーナが握ったおにぎりなんて、教会のガキ以外は滅多に食えない物だからな。ありがたくいただこう。
……っていうか、握りたてをダイレクトに手渡しって、なんか、ちょっとドキドキするな。お皿にワンバウンドしない感じが、こう、特別な感じで……
「じゃ、いただきます」
「召し上がれ」
ジネットもそうなんだが……なんで俺が食うところをそんな近くで見たがるんだ?
ちゃんと感想を言うまで視線を逸らしてはくれない。
……見られながら食うの、緊張するんだっての。ったく。
「うん。美味い」
「よかったです。安心しました」
口に入れるとご飯粒がほろりとほどけ、いい塩梅の塩味が口に広がって、海苔の佃煮のうま味が一層際立っている。
ただのおにぎりなのに妙に美味い。
ベルティーナに握ってもらったって特別感がそう感じさせるのかもしれないな。
「ヤ、ヤシロさん!」
「ぁの、てんとうむしさん」
モリーとミリィが並んで自作のおにぎりを差し出している。
「審査を!」
「みりぃのも、食べて、みて、くれる?」
「二人とも、おにぎり小っさ!?」
手が小さいのか、二人が握ったおにぎりは一口サイズだった。
なんとも可愛らしい。オシャレ女子のお弁当に入っていそうな出来映えだ。
まずはモリーのおにぎりを手に取る。と、持ったそばからおにぎりがぼろっと崩れた。
「モリーはもう少ししっかりと握らないとな」
「でも、三回と言われましたから……六回くらい握れば崩れないんですけど……」
「レジーナと一緒にベルティーナに教わってくるといい。ベルティーナの手つきを見せてもらえ」
「はい! 今日中にマスターしてみせます!」
モリーが燃えている。
飲食店従業員魂でも芽生えたか?
……まさか!? あのアリクイ兄弟に食わせて「美味しいね」って言われたいとか、そんな感じか!?
くっそ! あいつらめ! 見かけたら問答無用でデコピンしてやる!
「ぁの、てんとうむしさん? 顔が、怖い……ょ?」
「しかも幼馴染がこんなに可愛い! おのれアリクイ兄弟!」
「へっ!? ネックとチックがなにかした、の?」
何かしたかと問われれば、恵まれ過ぎだと答えよう!
「俺もミリィの幼馴染になりたい!」
「ぇ……っと、ぁの、幼馴染は、無理……だけど、仲良し……には、なれるょ……ね?」
わはぁ~! ミリィ、マジ可愛い!
「ミリィたんマジ天使!」
「うーまろさん、みたいになってる、ょ?」
ミリィがいい娘なので、アリクイ兄弟を血祭りにあげるのはやめておいてやる。
感謝しておけよ、可愛い幼馴染と寛大な俺に。
「じゃあ、次は、みりぃの、ね? ちゃんと、ぉいしぃとぃいけど……」
小さなおにぎりを摘まんで口へ放りこむ。
…………ん?
うん!
「ミリィ」
「ぇ、な、なに?」
「具を入れよう」
「ぅぇええ!? 入ってなかった!?」
完っ全なる塩むすびだ。
「まぁ、美味いけどな。握り加減もちょうどいいし」
「ぁう……だったら、余計に残念……」
「ミリィ味だな」
「塩味だょぅ!?」
ミリィ味のおにぎりを堪能して、ふとカウンターを見ると――オッサンどもがものっすごい並んでた。……分かりやすいな、お前らのリビドー。
「ミリィちゃん味一つ!」
「こっちにも!」
「是非具なしで!」
「ぁぅう……ちゃんと具、入れるょぅ……」
「「「「いいえ、具なしで!」」」」
「……てんとうむしさぁん…………」
涙目で助けを求めてくるミリィ。
いいんだぞ、ミリィ。イラッてしたらグーで殴っても。
でもきっと喜ばれちゃうと思うけど。
「塩むすびは通好みの味なんだ。具なしがあっても面白い。ミリィは塩むすび担当でいいんじゃないか?」
「ぅう……ちょっと失敗しただけなのに……」
「失敗から生まれるもんなんだよ、人気商品ってのは」
落ち込むミリィの頭をぽんぽんと叩いて慰める。
オッサンどもの期待ははち切れんばかりだ。もう、止められない。
ミリィが「ぃいもん、がんばるもん」と意気込んでカウンター前に立ったところで、レジーナが俺の前におにぎりを差し出してきた。
「ほいな。今度は結構じょーずに出来たんとちゃうか?」
目の前に差し出されたのは、少々歪んではいるが、綺麗に出来たおにぎりだった。
少し小さめで具材が真ん中からズレているのでおにぎりの上から透けて見えている。これは梅か。
だが、これなら客の口に入れても問題ないだろう。
「合格だ。これなら出してもいいぞ」
「ほなら、自分がお客はん第一号や。食べたって」
「いや、俺は失敗したヤツをって……」
言い終わる前にデコを突かれ、おにぎりを強引に押しつけられた。
「ちゃんと出来たんも食べてんか。……それ、ウチの生涯で初めて人のために作った料理やさかい」
「……お、おう」
独特な、緑の瞳が見たこともないような色を帯びて俺を見ていた。
じっとこちらを見つめた後、ぴくっと動いて、忙しなく右往左往して、すいっと逸らされた。
「ま、他の人と比べるとしょーもない出来かもしれへんけどな」
「んなことねぇよ」
少し小さめのおにぎりは一口で半分以上なくなった。
塩がやっぱり少し足りないが……
「上出来だ」
「…………さよか」
軽い口調でそう言って、こちらに背を向ける。
気のないフリをしているが……右手が「ぐっ」と拳を握っていた。隠すとこを誤ってないか、お前?
「よっしゃ。ちょっと真面目にやってみよかな」
緑の長い髪を持ち上げて一つで縛り、なんとも珍しいポニーテールレジーナが誕生した。
気合いを入れてカウンターへと向き直ったレジーナ。その肩がビクッと震えた。
「ぅおおう!? なんやの、この列!?」
レジーナがおにぎりスタンドのカウンターに立つと、そこにはすでに長蛇の列が出来ていた。
オッサンたちが気持ち悪いくらいにきらきらした目をしている。
「いや~、さっきのよかったなぁ~」
「なに、あの甘酸っぱい感じ!?」
「萌えたわぁ~!」
「初めてのお料理……俺もそういうの欲しい!」
ここに来て、まさかのレジーナファン爆誕である。
需要って、どんなものにでもあるんだなぁ。
「うっわ、めっちゃ人おるやん……帰ろ」
「帰んな! ちゃんと出来てたから、食わせてやって! みんな期待してるから!」
チラッとこちらを睨んで、意地の悪そうな顔で口角を持ち上げる。
「自分、ズルいお人やなぁ~。ウチのことまで手玉に取ってからに」
「お前を手玉に取れる人間なんか、この街にはいねぇよ……」
「いやいや、褒められるんは悪い気せぇへんで? ほら、ウチ、おだてられて伸びるタイプやし」
「『褒められて』だろ? おだてられては別のことわざだ」
「せやったな。『メスブタもおだてりゃポールダンス踊る』やったっけ?」
「ブタが木に登るんだよ!」
「『えぇでぇ~、えぇでぇ~、めっちゃ綺麗やわぁ~、ほなら一枚脱いでみよか~?』」
「おだて方が倫理的にアウトだよ! いいからおにぎり握れ!」
「へいへい……あ、減っとる」
レジーナの前に出来ていた行列が短くなっていた。
やっぱレジーナの全部を許容出来る猛者は少ないかぁ……
けれど、数が減ってレジーナは安堵したような表情を見せていた。何気に、ちょっと緊張しているようだ。
あいつもこういう経験を増やして人に慣れていけばいい。
「出来ましたわ! さぁ、ヤシロさん試食を!」
にょきっと、目の前にイメルダのおにぎりが差し出された。
イメルダが物凄く得意げな顔をしている。
それもそのはず。
イメルダのおにぎりは、まるで定規で測ったかのような綺麗な正三角形で、ちょっとした芸術性を感じさせる見栄えだった。
「めっちゃキレイだな!?」
「当然ですわ!」
「じゃあ、味を見てみるか…………」
ぐにっ…………ってした。
「……イメルダ…………握り過ぎ」
「形を整えるためですわ!」
「これ、おにぎりじゃない……焼いてないきりたんぽ」
団子だ、もはや。きりたんぽなんて立派なものですらない。
食感と口当たり、悪っるぅ~!
こいつもベルティーナ行きかと思ったのだが、現在ベルティーナはモリーとレジーナの指導をしつつ自分の仕事もこなしている。
さすがにイメルダまで面倒見させるのは大変だろう。
というわけで、もう一人の職人に任せることにする。
「お前は、ノーマを手本にしろ」
ノーマは手際がよく、かつ出来映えも完璧だ。
さっさっと握って、同じ大きさ、同じ形、同じ塩加減で大量のおにぎりを量産している。
特に頑張っている様子もなく、自然体で、なのに迸る母性に食欲が刺激される。ジネットや女将さんがそうなのだが、なんというか、調理場に立っている後ろ姿を見るだけでもう『美味そう』って思えてくるのだ。
緩く弧を描く口元から微かな鼻歌が漏れ、ご飯を優しく包み込むようなしなやかな指先が「にちゃ、みちゃ」っと瑞々しくも粘り気のあるおにぎり特有の音を鳴らし、「出来たさね」という言葉の中には「美味しく召し上がれ」という気持ちがこれでもかとこもっている。
「ノーマはママの味!」
「ママになったことはないさよ!?」
どうやってここまでの母性を身に付けたんだろう、ノーマは。
そしてどうして、こんなにも非の打ち所がないノーマが未だに……いや、やめておこう。今一瞬、ノーマの指に力がこもった。……敏感なんだよなぁ、そういう空気に。無心、無心……何も考えない。
「ノーマさんのおにぎり、うめぇぇぇえ!」
「毎日食いてぇぇぇええ!」
「理想の味だなぁぁあああ!」
大絶賛である。
ノーマも、この大絶賛に満更でもなさそうな顔をしている。
「褒めたって、何も出ないさよ……」
とか言いながら、物凄いスピードでおにぎりを量産していく。
もっと称賛が欲しいのか? 本能が渇望しているのか!?
「あ~、私もおにぎり作ってみた~い☆ デリアちゃ~ん、迎えに来て~!」
「んだよぉ、しょうがねぇなぁ……」
デリアが一時離席し、マーシャを連れて戻ってくる。
マーシャの参戦に、男どもがどよめく。
期待した空気が辺りを包み込む。
「マーシャ、具材は何がいいんだ? あたいと一緒の鮭にするか?」
「私はやっぱりちりめんかなぁ~☆ 海のお魚だしねぇ~」
そうして、シソちりめん担当のノーマの隣でにこにこちゃぷちゃぷぷるんぷるんと体を揺らしながらおにぎりを握る。
もっと揺れて! もっと!
「は~い、出来上がり~☆」
もともと器用なのか、マーシャのおにぎりは最初の一個から十分に商品となり得るクオリティだった。
「は~い、ヤシロく~ん☆ 味見~」
手渡されたおにぎりを一口頬張ると――
「んっ! 美味い!」
絶妙な塩加減。
そうか、これは……マーシャの手に染みついた海の塩!
女将さんのおにぎりが俺史上最強の座をほしいままにしている要因に、ぬか漬けが関係している。
女将さんは長年自家製のぬか漬けを漬けていて、毎日素手でぬか床をかき混ぜていた。
そうすることで女将さんの手にはぬかの香りと風味が染みついていたのだ。
それが、おにぎりを握るとご飯にぬかの風味がほのかに移って、絶妙の味を醸し出すのだ。
あれは美味い!
出そうとして出せる味じゃない。
それと同じ現象が、マーシャの手のひらで起こっているのだろう。
長い年月をかけて染み込んだ、天然の塩味。
これに勝る物はない。
それを証明するように、マーシャのおにぎりを食べたオッサンどもがその場に次々倒れ込んだ。美味過ぎて!
「うっ、うっまぁはぁぁあ~!」
「マーシャさんの塩! 最っ高!」
「マーシャさん味のおにぎり! まさに神!」
「ほのかにホタテの風味がっ!」
「毎日食べたいっ!」
「「「激しく同意!」」」
そうして、ノーマの前に並んでいたオッサンどもは根こそぎマーシャの前へと移動してしまった。
「ちょいと、あんたたち!?」
「「「いや~、すまねぇ、ノーマちゃん。やっぱ男はホタテには逆らえねぇ生き物なんだ」」」
「ホタテくらい、アタシだって……っ!」
「そこは張り合っちゃいけないとこですよ、ノーマさん!?」
モリーが賢明にノーマを抑える。
そうしなければ、今この場でノーマがホタテを装着してしまいそうだから…………いや、してもいいんじゃね?
「モリー。ノーマの好きにさせてやるのはどうだろうか?」
「ヤシロさん、真顔でそういうことを言うのやめてください。イメージが崩れます」
モリーは俺にどんなイメージを持っているんだろうか?
紳士的? そんな感じ?
「まったく。ボクたちが食事をしている間に、騒ぎを起こさないでくれるかい?」
「節操という言葉を知らぬのか、貴様は」
呆れ顔で二人の領主が俺の前に立つ。
二人とも、ほっぺたにご飯粒を付けて。
……がっついてんじゃねぇよ、領主。
「ほっぺたにご飯粒が付いてるぞ」
「本当のことか、それは、友達のヤシロ?」
背後からギルベルタの声がして「お前じゃなくて主の方だ」と言ってやろうとしたのだが……ギルベルタのほっぺたにも付いていた。
……お前らな。
「ギルベルタ、こい」
「従う、私は、友達のヤシロの言葉に」
疑いもなく近付いてきたギルベルタのほっぺたに付いていたご飯粒を摘まみ取って、もったいないので食べる。
「はぅっ!? ちゅー、間接、おぶ、ほっぺた」
「落ち着け。文法とかいろいろメチャクチャになってるから」
別に、俺の唾液が付いたご飯粒をギルベルタのほっぺたにつけたんじゃないんだから、ギルベルタが照れることは何もない。
俺はただ、食い物を米の一粒まで無駄にしたくないだけだ。
で、これは食い意地の張っている領主二人への警告でもある。
「お前らも付いてるぞ?」
俺が指摘すると、エステラとルシアは慌てて自身のほっぺたを手で拭った。
俺に食われては堪らないと、自分でご飯粒を除去する。
最初からそうしとけよ。曲がりなりにも領主なんだから。
世話が焼けるな――と、ナタリアに同意を求めようと視線を向けると、つるっとした綺麗なほっぺたに、わざわざご飯粒をくっつけて、こちらへと差し出してきた。
「あ~ん」
「わぁ、斬新。食い物で遊ぶな、こら」
本気で「あ~ん」したら照れるくせに。
俺が照れて絶対やらないって確信してるってのか? 甘いな! 俺はやる時はやる男なのだ! そういうことばっかしてると、いつか本気でやってやるからな?
まぁ、今回は見送るけども!
ほら、子供もいるし。教育上よくないし!
とにかく、飯を食ったならお前らは仕事に従事しろ。
ほら、カウンターに並んでおにぎりを握れ握れ。
「ナタリアとギルベルタは、おそらく大丈夫だろうけど……問題はエステラとルシアだな」
エステラは器用なのだが、こと料理に関しては素人以下の腕前だ。
ルシアはきっとそれ以下だろう。自炊なんて言葉すら知らないかもしれない。
……とか思っていたのに!
「どんなものだ、カタクチイワシよ?」
「上手い……そして、美味いっ!」
ルシアのおにぎりは普通にキレイで、味も申し分なかった。
なんか悔しい!
「花嫁修業をしているからな……ハム摩呂たんのために!」
「動機は不純の境地なのに!」
それでも技術は上がっているということか……ハム摩呂、本気で逃げろ。この女はマジだ!
「食べてみてほしい、友達のヤシロ」
ギルベルタの握ったおにぎりは普通に美味しかった。
「おにぎりはこれが初めてか?」
「初めて、作ったのは。不安、ちゃんと出来ているか」
「ちゃんと出来てたよ。美味かったぞ」
「えへへ……」
「安心した、私は」とか「よかった思う」とか言わずに、ただ嬉しそうに笑うだけ。そんなギルベルタを見ていると、なんだかすごくほっこりした。
そしてもう一人の給仕長。ナタリアは料理も出来る完璧超人だ。
おにぎりなんてお手の物で、凄くきれいなおにぎりを作っていた。
その出来立てのおにぎりを、つるつるのほっぺたに押しつけて――
「ヤシロ様、あ~ん」
「それさっき見た!」
米粒からおにぎりにグレードアップしてるけどね!
……うん、神様って意地でも二物を作りたくなかったんだろうな。
完璧超人は、完璧ではなかったようだ。
と、給仕長が遊んでいる間ももくもくとご飯を握っていたエステラは――
「あぁ~、ダメだ。みんなと比べると、ちょっと歪だなぁ」
自作のおにぎりの出来に眉をゆがめていた。
レジーナよりはマシだが、ナタリアやギルベルタと比べられると厳しい。
前に一度陽だまり亭で練習したんだが……あれ以降作ってないんだろうな。一応マシにはなっているようだけど。
「エステラも握り過ぎだな。……もぐ…………食えなくはないけどな」
「食べられるなら、それでいいよね」
「寛容な旦那を見つけるんならな」
「我が家の食事は、基本的にシェフか陽だまり亭任せだから」
もうこれ以上の努力をしようという気はないようだ。
料理のスキルを上げるヒマがあるならナイフの腕を上げたいとか言いそうだもんな、こいつは。
「三回程度でいいんだよ、握るのは」
「三回で綺麗な形になるわけないじゃないか」
「出来るっつの」
ジネットやノーマがやってんだろうが。
「ヤシロは出来るの?」
「当たり前だろうが」
エステラに懐疑的な目を向けられては証明しないわけにはいかない。
よぉ~く見ておけ。俺のおにぎりテクを。
手を洗って、ご飯をよそって、具材を包み込んでいく。
一回、二回、三回で、綺麗な三角おにぎりが出来上がる。
「どんなもんよ?」
自信作をエステラに手渡す。
エステラはそれを受け取って、かぶりつき、もぐもぐと咀嚼して、目を細めて「ん~!」と幸せそうな声を漏らす。
「やっぱりボクは作ってもらう方がいいな。こんな美味しいものなら毎日でも食べたいよ」
エステラがそう言った瞬間、会場中の音が止んだ。
「……ほぅ、ヤシロ様の手料理を、毎日?」
「なっ!?」
ナタリアの言葉に、エステラが「ばばっ」と辺りを見渡し、全員の視線が自分に向いていることを悟って顔を赤く染める。
「ち、違うよ! 『陽だまり亭』の料理をだよ! ヤ、ヤシロは陽だまり亭の従業員!」
俺を指差して猛抗議する。
だから、エステラ……そういう反応が面白がられてるんだっつの。
ほんと、領主と領民の仲がいい街だこと。……俺を巻き込むな。
「うぅ~……みんなの目がムカつく……っ」
なるべく周りを見ないように俯いて、俺のおにぎりを口いっぱいに頬張るエステラ。
お前のそのクセ、直らねぇな。照れると目一杯頬張るの。
「……決めた。ボク、ジネットちゃんをお嫁さんにもらう」
「エステラ、お前……そうまでして巨乳遺伝子を一族に取り入れたいのか?」
「違うよっ! もらえるものなら欲しいけども!」
「……エステラ様のご息女からみんな巨乳(ぼそっ)」
「やっぱりいらない、その遺伝子!」
ナタリアの呟きで百八十度意見をひっくり返したエステラ。
クレアモナ家の呪いは、まだ当分継承されていきそうだな、これは。
仄暗い領主一族の未来に同情しながら、俺はそっと調理場を離れる。
陽だまり亭メンバーの激励だ。売上も気になるしなぁ~。頑張るマグダとロレッタを褒めに行ってやらなければな、うん。
……とにかく、エステラという名の自爆娘からは距離を取ろう。
俺は可及的速やかに、生温い空気が漂う調理場を離脱したのだった。
あとがき
『胸躍る』
そんな言葉に
胸躍る
どうも、盆踊りに一文字追加するとボイン踊りになることを発見した宮地です。
今度学会で発表しようかと考えています。
きっと「ブラボー!」「アメイジング!」「ファンタスティック!」と称賛の嵐になることでしょう。
アメリカ人学者「ブルゥァアア(←巻き舌)ジャー!」
私「感動がおっぱいに引っ張られて胸部下着になってるよ!?」
ロシア人学者「プラシーボ!」
私「たぶん、言いたいの『スパシーボ』だよね!?」
ロシア人学者「いやいや、ロシア語の『o』はアクセントがない時は『ア』になるから。スパシーボじゃなくてスパシーバの方が近いから。ロシアでは常識ですから」
私「うわっ、メンドクサイ! 物言いが物凄くメンドクサイ!」
アメリカ人学者「スポブゥゥゥルァァァアア!」
私「相変わらず凄いな巻き舌!? そして胸部下着大好きか!?」
ロシア人学者「スパシーバ、スポブーラ!」
私「お前も胸部下着大好きか!?」
アメ&ロシ「「じゃあユー、嫌いなの?」」
私「愛しているさ!」
と、まぁいつもだいたいこんな感じですよね、学会。
『スパシーバ』と『スポブーラ』が似ているなぁ~
と、思って文字にしてみたら『ス』と『ー』しか合ってなくて
あまつさえ、『スポブラ』には本来『ー』がない!
完全に雰囲気だけで押し切った感が……
でも、きっと口に出して言いたくなったはず!
\(*゜∀゜*)/ スパシーバ、スポブーラ!
「ありがとう、スポブラ」
いい言葉です。
ちょっと揺れが気になっちゃうぽぃんぽぃん系女子の皆様にはマストなアイテムかもしれません。
ほら、お盆の時期にはボイン祭りも開催されますし。
……お盆…………おボイン……
はっ!?
なんか、お上品!?Σ(゜д゜;)
夏って、いろんな発見があって楽しいですね♪
そして本編ではお挟み……もとい、おにぎり大会でしたが、
悩みました……
今回すごく悩んでしまいました。
はたして……
おにぎり握るだけのお話で10000文字も書いていいのかと!
だってもう、書く前から確信してましたもの!
このメンバーでおにぎり大会なんかしたら10000文字超えるって!
案の定ですよ!
10000超えても全然終わる気配がなかったので、陽だまり亭でおにぎり握った経験者はバッサリカットされちゃいましたよ!
おにぎりで2話またぎはさすがにきつい!
そんなわけで、こんな仕上がりでした。
過去にエステラがおにぎりに挑戦するお話がありまして、
(『後日譚37 出発前のわくわく感』)
……まぁ、ぶっちゃけそれみたいな感じです。
失敗してもヤシロさんがちゃんと食べてくれますよ~、的なお話です。
じゃあわざわざ書かなくてもいいじゃないか!
そんな意見があるやもしれません!
それでも!
書いてみたかったんです!
「ミリィちゃんのおにぎり、ちっちゃ~い!」
って、
それが書きたかったんです!!
あはぁ、満足☆
あ、ちなみに、
レジーナに言った「『えっ』ってくらいお塩をつけていい」は、
レジーナ的感覚で『えっ』ってくらいですので、
本当に『えっ!?』ってくらい塩をつけると塩辛いですのでご注意を。
レジーナ「(お塩)……ちまっ」
ヤシロ「少ねぇよ」
レジーナ「せやかて、お塩は摂り過ぎると体に良ぅないし」
ロレッタ「大丈夫ですよ、レジーナさん! これくらいは全然平気です! ね、お兄ちゃん?」
ヤシロ「あぁ。もっと『えっ』ってくらいつけても平気だ」
レジーナ「そうなん? ほなら……(お塩、中指と薬指の間に『こんもり』)」
ロレッタ「えっ、そんなところに!?」
ヤシロ「『えっ』の方向性が違う!」
もしかして、男子に喜ばれる手料理って、
肉じゃがやカレーじゃなくて、おにぎりなんじゃないかと、そんな気がします。
だって、好きな女の子に握ってもらったおにぎりなんて……最高ですやん!?
女の子「あ、ウチ、アルミホイルで握る派なんだ~」
私「いや、アルミホイルは握ったあとに包むんだよ!? サランラップ的な握り方は出来ないからね!?」
女の子「ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅっ! はい、アルミホイルが鉄球みたいにツヤツヤ!」
私「物凄い圧がかかってる!? 中のご飯が心配!」
――と、このようにときめきの展開に!
女の子「ちなみに、中の具はチーズフォンデュだよ」
私「フォンデュさせる気ゼロのチーズ!」
女の子「あと、こっちが白玉小豆で、こっちが抹茶ミルク」
私「おにぎりの中に!?」
女の子「そしてこれが、おにぎりin梅干!」
私「梅干の中に!?」
そんな女子がいたら、是非ご一報ください☆
というわけで!
次回でオバケコンペ終わらせて、そのあと牛飼いのところへ行きますよ~!
……と、思っていたのですが、
諸事情によりストックが尽きてしまったのでオバケコンペもう一回追加です。
新しい展開はその次に!
いや~、場所転換しなければいくらでも書けちゃいますよねぇ~
さくっとストックを作って、新しいところへ向かいます!
次回もよろしくお願いいたします!
宮地拓海




