無添加60話 閉会式、そして夕食会と隠された意味
「優勝旗、授与!」
もはや真っ暗になった空の下、篝火の照らし出すグラウンドに選手一同が整列している。
四十二区のあらゆるギルドが協力して作り上げた優勝旗が今、大会委員長のエステラから優勝チームである白組チームリーダーのマグダへと手渡される。
場の空気を盛り上げるため、給仕たちが楽器を演奏してくれている。あんなもんまで練習させてたのか。すごい気合いの入れようだったんだな、エステラのヤツ。
おかげで優勝旗授与に箔がついた。実に厳かな光景だ。
「それじゃあ、優勝した白組チームリーダーから、何か一言もらおうかな。でも、時間がかなり押してるから短めにね」
「……承知した」
大きな優勝旗を抱え、マグダが壇上に立って選手一同へ相対する。
ゆっくりと選手を見渡した後、静かに口を開く。
「……今回の勝利は、白組が一丸となって戦った結果。いろいろと思うところはあるかもしれないけれど、選手たちは皆懸命に頑張ってくれた。至らない点があったのであれば、それはチームリーダーであるマグダの責任。どうか、選手たちを責めないでほしい」
決してまっとうな競技運営ではなかった今回の運動会。
それぞれが好き勝手にやった結果、不満を抱く者も少なからずいるだろう。
そんな者への配慮を、マグダが見せる。こうして言葉にされることで「蔑ろにされた」という感情は薄らぐ。
多少の不満は、それだけで飲み込めるようになったりするものだ。
「……もし文句があるならマグダに言ってほしい」
「マグダたんに文句があるなら、代わりに全部オイラが聞くッス!」
「……では、マグダへの文句はウーマロ――は、今回すごく頑張ったから――グーズーヤに言ってもらうということで」
「とんでもないキラーパス飛んできたぁ!?」
「そういうことならグーズーヤ、あとで話しあるから」
「ちょっと顔貸せな、グーズーヤ」
「グーズーヤ、サイテーだな」
「面白がってる人がいっぱいいるー!?」
領民のグーズーヤいじりで会場がどっと湧く。
くたくたな体で、誰もが笑顔を浮かべている。
多少の不満は、こうして楽しい思い出へと昇華されていく。
「……思うところはあるかもしれない。けれど、マグダは今回の運動会がとても楽しかった」
マグダの静かな声に、賑やかだった観衆が口を閉じる。
言葉にせずとも、みんながマグダに共感しているのが分かる。
あぁ、そうだな。
バカバカしくて、すっげぇ疲れたけど、メチャクチャ楽しかったよな。
「……白組の勝利は、選手たちの努力によるもの。そして、この区民運動会の成功は、ここにいるみんなの想いがひとつになったからこそ得られたもの。みんなの協力があってこそ。みんなで勝ち得た成功だと、マグダは確信している」
わっと、歓声が上がった。
優勝は1チームのみだが、成功は全チーム、いや、選手以外も含めたこの場にいる全員の手柄だ。
それを認めてもらえるってのは素直に嬉しいものだ。
下手したら、優勝よりも価値のある言葉かもしれない。
「……マグダは、四十二区の領民を、そしてここにいる仲間たちを、心から誇りに思う」
普段は感情を見せないマグダの熱い言葉に、会場の中から洟をすする音が聞こえてくる。感動屋の涙腺に直撃したらしい。
大きく息を吸って、マグダがはっきりと言う。
「……マグダは、四十二区が大好き」
歓声とともに拍手が巻き起こる。
しばしの間拍手と喝采を全身で浴び、マグダが最後の一言を口にする。
「……以上をもって、閉会の挨拶とする」
「それボクの仕事だから、取らないで! まぁ、言いたかったことほとんど言われちゃったけども!」
隣でエステラが盛大に突っ込む。
会場中が笑いの波に飲み込まれる。
もう夜だってのに、この街の連中は疲れを知らないらしい。
こっちはもう腹ペコだってのに。
「続きまして、大会委員長による閉会の挨拶です」
「エステラ~、『以下同文』でいいぞ~」
「うるさいよ、ヤシロ! ちゃんとやるよ! 記念すべき第一回大会なんだから!」
第一回ってことは、やっぱ来年もやるつもりなんだな。
実行委員は固辞しよう、そうしよう。あと、他区のゲストは禁止にしておこう。
……あぁ、そういう意見をねじ込むには委員にならなきゃいけないのか……もどかしい!
「え~、みんな、本当にお疲れ様」
マグダが降りた壇上で、エステラの挨拶が始まる。
が、『お利口さんな領主様』的なご挨拶だったので、まるっと聞き流しておく。
みんなすごいよ、感動したよ、ユーアーベリーグレートフルだよ~、みたいな内容だった。
「――ここに、第一回四十二区区民運動会の閉幕を宣言する!」
閉幕宣言が行われ、会場中から大きな拍手が巻き起こる。
あぁ……やっと終わった。
長かったぁ……心も体もくたくただ。
「じゃあ、このあとはお待ちかねの夕飯タイムだよ!」
「「「ぅぉおおおお!」」」
「本日の夕飯は、陽だまり亭全面協力で料理を用意していただきました」
ナタリアの説明を受け、ジネットがぺこりと頭を下げる。
割れんばかりの拍手がジネットへと送られる。
朝からフル稼働していた屋台は軒並み売り切れ、品切れ、閉店ガラガラ。大通りから離れたこのグラウンドには、もう食い物がなかったのだ。
腹を空かせた野獣が、ずっといい匂いを放ち続けていた大鍋に期待の眼差しを注ぐ。
「本日は、カレーと芋煮をご用意しました。おかわりもたくさんありますので、みなさんおなかいっぱい食べてくださいね」
「「「ぅぉおおおお!」」」
「芋煮ってな~に~?」
「芋煮というのは、味付けのベースを――」
と、ジネットの口からベーシックな芋煮の説明がなされると、会場のあちらこちらから腹の虫の合唱が聞こえてきた。
何味がベースになっているとか、何肉を使っているとか、聞くだけで胃が消化液を垂れ流し始めるようなパンチ力がある説明だった。
俺も久々に食いたくなってきた。
女将さん直伝の伝統的芋煮レシピをそのまま伝えたのだが、果たして、ジネットの作った芋煮はどんな仕上がりになっているのか、ちょっと楽しみだ。
「ウチからは、ドドーンとお酒の差し入れだよー!」
「「「ぃやったぁぁぁああああ!」」」
パウラとパウラの父親がドデカい酒樽を抱えている。酒飲みたちのテンションが一気に限界を突破していく。
やっぱ、運動した後は酒なのかねぇ。
「皆様、お盛り上がりの中失礼します」
アッスントが声を上げる。布に覆われた大きな荷台の前に立ち、観衆の目が集まったところでその布をまくる。
「来賓の方から、『是非皆さんで』と差し入れをいただきました。どうぞご賞味ください」
荷台には色とりどりのフルーツが山と詰まれており、女子たちが瞳を輝かせる。
差し入れというか、金を出すから用意するようにとアッスントに依頼があったのだろう。
来賓ねぇ……
「それ、大人が食べてもいいのか?」
「もちろんですよ」
「じゃ、ハビエルじゃないな」
「どーゆー意味だ、ヤシロ!? ワシもちょっと出したわ!」
聞けば、来賓席で観戦していた貴族たちがちょっとずつ出し合ったのだそうだ。
ちょっとといっても、これだけの量だ。そこそこの出費にはなるだろう。
ちなみに、言い出しっぺはドニスだそうで、「彼らの頑張りに報いたい」というドニスの言葉にマーゥルが「素敵な考えですね」と賛同したのだとか。
あぁ、だからドニスが言い出しっぺのくせにこっちにも来ず来賓席で横になってるのか。心臓への負荷が大き過ぎたんだろうな。褒められて寝込むなよ……好きな娘とすれ違っただけで幸せな気持ちで一日過ごせる中学生男子か、お前は。
ナタリアやギルベルタ、イネスとデボラにネネ、モコカらが率先して人々を誘導していく。
給仕が走り回り、配膳や食事場所の割り振りなんかを行っている。
さすがの手際で、今のところ混乱は見られない。
「皆様、会場は暗いですので、なるべく篝火かウェンディさんのそばで食事をしてください」
「ナタリアさん、それはちょっと!?」
陽が落ちて以降、これでもかと存在感を発揮し続けているシャイニングウェンディ。
ガキどもに群がられて困り果てた顔をしている。
しかし暗いな……
「なぁ、イメルダ」
「なんですの?」
「あぁ、いや。いいや」
キャンプファイヤーでも出来ないかと思ったんだが、このグラウンドは四十二区の東端といっても過言ではない場所だ。湿地帯を除けば西端と呼べるような場所に建つ木こりギルド四十二区支部まで戻って、キャンプファイヤーに使えそうな薪を持ってきてくれなんてとても言えないよな。
木こりたちも一日中運動会をやって疲れてるだろうし。
この規模でキャンプファイヤーっつったら、薪の長さも100cmとか120cmとか、そんなレベルになるだろうしな。
「そうそう。棒引きが始まる前に手の空いていたウチの者たちに薪を取りに行かせましたので、そろそろ戻ってくる頃合いですわ」
「えっ、薪……?」
「えぇ。外の森では薪を組んで火を絶やさないようにして夜を凌ぐんですのよ。『井』の字に薪を組めば、燃焼時間は減りますが、大きな炎が上がりますから、この場所には打ってつけかと思いましたの」
そいつは、まさにキャンプファイヤーだ。
こいつ、自分からそんな提案を……
「それに、こういう状況になれば、きっとそういう要望を口にするのでしょうねと思っていましたのよ、ヤシロさんが」
「俺が、そんな気の利くいいヤツに見えるってのか?」
「あら? 先ほど言いかけたのはそういうお話ではありませんでしたの?」
「う……」
こいつ、なんだか随分と気が回るようになってないか?
支部長になるって、そんな急激に成長するような重責背負わされるもんなのか?
恐ろしいもんだな。こいつの、これから先の未来が。……化けそうで怖いよ、イメルダは。
そんなことを思っていると、木こりがデッカイ荷車に大量の薪を積んで戻ってきた。
棒引き以降の競技に参加しなかった木こりたちだ。
観戦したかったヤツもいたかもしれんが……まぁ、最愛のイメルダお嬢様の命なら喜んで仰せつかるか、あそこの連中は。ある種、メドラに心酔する狩猟ギルドに近しい力関係だよな。
イメルダの結婚を機に統率力を失うなんてことがなければいいが……
「最高の配慮に感謝するよ。あ~、運営委員の末端として」
「あら? 上座に鎮座されているものとばかり思っていましたわ」
「上座は大会委員長のエステラだろ」
「それはそれは、随分と風通りのよさそうな委員会ですこと」
「遮蔽物がないからな」
「えぇ、吹き抜けバストですから」
「誰のバストが吹き抜けだ!」
イメルダの背後から腕が伸びてきて、イメルダのほっぺたを両側からむに~んっと摘まむ。
「エフフェファひゃん、なにふぉなふぁいまふの!?」
「何をなさいますのじゃないよ、まったく」
ぷんすかと怒り顔のエステラ。
「これでもボクは、他の誰よりも風の抵抗を受けやすい真っ平らバストなんだよ! 流線型でなく!」――とか言ったら面白いのに。
「ヤシロ。今頭の中で思ったことを一言一句違えずに言葉にしてみてくれるかい?」
「ならまず、その物騒な刃物を懐にしまえ」
体操服の時まで刃物を隠し持っていやがったのか。
とんだ危険人物だな。
「あ、そうだ。実はイメルダに頼みたいことがあって――」
「薪でしたら、たった今届いたところですわ」
「おぉ! 助かるよ! ヤシロが言っておいてくれたのかい?」
「エステラ。今すぐその認識を改めないと、来年の騎馬戦で負けちまうぞ」
俺もそうだったが、エステラもイメルダの成長速度を過小評価している。
二手三手先を読んで行動出来る組織の長ってのは、一度成長を始めると加速度的にその才能を伸ばし続けるからな。
来年はイメルダと同じチームになりたいものだ。そしたら楽が出来そうだし。
「英雄様」
能天気なエステラと、大物の片鱗を見せ始めたイメルダの一年後を想像していると、不意にセロンが声をかけてきた。
振り返ると、メッチャ眩しかった。
「なんだ、嫁が伝染ったか?」
「いえ。あと、ウェンディが発光しているのは別に細菌のせいではありませんので……」
「じゃあなんだ? 嫁にすりすりはすはすし過ぎて光の粉が全身に付着したのか? 顔の輪郭すら眩しくて見えないけどグーで殴るぞ?」
「待ってください、英雄様! 光のレンガです!」
言われて、目を眇めてよく見てみると、セロンは眩い光を発するレンガが大量に入ったちょっと大きめの木箱を抱えていた。
「レンガとは言っていますが、これ一つで独立して夜間のトーチ代わりに出来る商品なんです」
手に取ってみると一端が平らになっており、確かに自立しそうだ。
上部には引っ掛けるためのフックもついていて、これがあれば室内でも屋外でもランプの代わりに灯りとして十分な能力を発揮してくれるだろう。
「幼い子供たちが炎のそばに近付くのは危険だとウェンディに言われまして。騎馬戦が始まる前に急ぎ取りに戻った次第です」
「ウェンディは連れて行かなかったのか?」
「ウェンディは、あの通り――子供たちに大人気ですので」
と、スーパーな戦闘民族ばりに発光しているウェンディを微笑ましそうに見つめるセロン。
確かにガキどもが群がっているけど、アレは人気というか、珍しがられているというか……まぁ、いいように映っているならわざわざ否定はしないけどな。
「ただ、ちょっと疲れました。いつもウェンディにこんな重たい荷車を引かせていたなんて……もっと体を鍛えます!」
「いや、人種差がえげつないから、よほど努力しないと覆らないぞ?」
あの小さくて可愛らしいミリィでさえ、俺たちの数倍は力持ちなんだ。
今お前がひぃひぃ言いながら引いてきた荷車を、ウェンディがいつも余裕で引いていたんなら役割分担が正しく出来ていたというだけの話だろうに。
「まぁ、それくらいの努力はしてほしいものですわね、一家の主たる殿方には」
「そうだね。結果ではなくて、そうやって努力しようと思うこと、そしてそれを実践することが信頼関係に結びつくよね」
イメルダとエステラが恐ろしいことを言っている。
あのな。
木こりだの給仕長だののレベルを求められてるんだとしたら、お前の旦那候補は結婚初日に裸足で逃げ出しちまうと思うぞ。
俺なら無理だもん。木こりみたいな筋肉になるのも、ナタリアみたいに人間の規格を飛び越えるのも。
あんなもん、人間の到達出来るレベルじゃ……いや待て、あいつら全員人間が努力した結果その高みに到達した連中なのか。
木こりは獣人族と人間の割合が半々くらいなんだっけ。ホント、バケモノばっかだ。
そんなバケモノみたいな木こりの連中が、てきぱきと、そしてあっさりと巨大な薪を組み上げた。あれ、普通に準備したら小一時間かかりそうな重労働なんだけどなぁ……物の数分で見事にまぁ。
そして、早々に点火され、炎は瞬く間に夜の闇を煌々と赤い光に染め上げた。
グラウンドの中心に炎が上がり、セロンの光るレンガはキャンプファイヤーから十分に距離を取った位置に等間隔に並べられていった。
「こりゃ、明るいな」
夜だとは思えないくらいに光に包まれたグラウンド。
それでも空は真っ黒で、なんだか不思議な雰囲気に包まれている。
「ヤシロ氏~! 拙者も微力ながら協力出来ないかと、大急ぎで『灯の英雄像(キャンドル仕様)』を彫り上げてきたでござるぞ~!」
「よぉし、キャンプファイヤーに燃料投下だ、え~い!」
「拙者の努力の結晶がー!?」
ふん。どうせ二~三分で彫り上げたんだろうが。
ジネットに見つかったら「欲しい欲しい」と三日後ぐらいまで尾を引くんだぞ、あの蝋像は!
そうなる前に焼却処分だ、あんなもん。
「ダ~リ~ン!」
こちらに駆けてくるメドラ越しに見ると、幻想的な炎の灯りが地獄の業火に見える。
これを錯視と言う。……言わねぇよ。
「秘蔵のお肉が今届いたよ」
「もうか?」
「はははっ! ウチの若いのが張り切ってね」
四十一区まで戻って、大量の肉を準備して、その大量の肉を荷車に乗せてえっちらおっちら引きながら戻ってきたのか。この短時間に。
やっぱ、獣人族に対抗するなんてのは無謀なんだよなぁ。
よくいい勝負になったもんだよ、区民運動会。
「魔獣の肉は、みんなエステラのところの給仕長に渡しておいたから、上手くやってくれるはずさ」
「そっか。ありがとな」
「なぁに。アタシがやりたくて勝手にやったことだよ。楽しい運動会に参加させてもらった礼さ」
楽しい運動会、ね。
「確かに、メドラが参戦したことでスリルは満点になったよ」
「あははははっ! 褒め言葉だと受け取っておくよ」
「おう。すっげぇ褒めてるよ」
メドラが豪快に笑う。
貴族も恐れる狩猟ギルドの大ボス、メドラ・ロッセル。
よくもまぁ、そんな大物とこんなに気楽な仲になれたもんだ。
「それから、もう一つだ」
「ん、何がだい?」
「ありがとうな」
何がとは言わずに礼だけを述べる。
それでメドラには十分だったようで、世間のイメージからはかけ離れた、少女のような照れ顔を見せた。
「まぁ……アレはその…………もうちょっと先の、お楽しみ、ってことで……ね」
メドラ自身も少し戸惑いを感じていたようだ。
俺と一泊二日で外の森で特訓をするって状況に。
強く欲したはずのものでも、いざ目の前にぽ~んと現れたら尻込みしてしまうなんてことはよくある。
けど、今回はきっと俺に気を遣ってくれたのに違いない。
ルシアの『ハム摩呂たんの嫁になる!』発言に触発されてちょっと暴走していたのかもしれないが、その『流れ』に違和感を覚えていたのだろう。
だからこそ、自分からその機会を潰してくれたのだ。
そういう潔いことをされるとだな、こっちも「別にそこまで心底嫌がっていたわけじゃないんだけどなぁ」なんてあるはずもない良心が微かに、極僅かに、計測不可能なレベルの範囲内で、疼いたりもするわけだ。
だから。
「じゃあ、今回の賭けはドロー。またいつか再戦だな」
そんなことを言ってしまうわけだ。あとで後悔することになるんだろうなってことを重々理解した上で、な。……あ~ぁだ。
「ふふっ」
俯いていたメドラが口元を緩め、そして俺を見てにっこりと微笑む。
「だからダーリンが、大好きさ!」
言った後でちょっと照れたのか、俺の肩をぺしりと叩いて逃げていった。
……『ぺしり』じゃねぇよ、今の……『ぐしゃぼぎぃ!』だよ…………絶対肩の骨粉砕されたろ、今の……
本当に照れからの行動か? 殺意なかった? 殺意なくてこれ? 凶悪だな、メドラ……
「……肩が、痛い……」
「乙女に『大好き』と言っていただいた代償ですわ。我慢なさいまし」
「えぇ……どこにいたの、乙女? 見逃しちゃったよ、俺」
「ホント、君には頭が下がるよ」
「エステラ。下がってんのはお前の目尻だよ。……俺の不幸がそんなに面白いか?」
「面白いか面白くないかで言えば、とても愉快だよ」
にゃろう……
「けど。頭が下がるって言うのも本当さ」
じんじんと痛む俺の肩に手を乗せて、エステラがグラウンドの方へとアゴをくいっと動かす。
見ろってことらしい。
「一年前の今頃、誰が予想し得たと思う? 外周区や『BU』の領主たちと、主要ギルドの幹部、おまけにマーゥルさんみたいな大物貴族やシラハさんみたいな重鎮までもが四十二区の、それもこんな辺鄙な場所に一堂に会するなんてことをさ」
確かに、この狭い場所に濃ゆい連中がよくもまぁこんなに大勢集まったもんだ。
「全員、意外と暇人だったってだけだろう。去年はその情報がなかった。それだけだ」
「あはは。領主やギルド長が口には出来ない言葉だよ、『暇だ』なんて」
いや。俺はお前の『暇だ~』って言葉を聞いたことが何度もあるが。
あと『もうやる気出ない~』ってのと。
「あと、これは一人の友人として言いたいことなんだけど。マーシャがあんなにはしゃいでいる姿は久しぶりに見たよ。一応感謝しておくよ」
「いや、マーシャはだいたいいつもあんな感じだろうが」
俺の知る限り、マーシャはいっつもにこにこふわふわして、オールウェイズ大はしゃぎだ。
「いいや。彼女はあれで結構ナイーブなところがあるからね。……それを悟られないように空元気を出している時も多々あったしね」
以前、人魚はあまり人間に関わらないという話を聞いたことがあった。
そんな中でマーシャは例外で、人間や陸地に興味を抱いて、そして実際に実行してみせるバイタリティを持ち合わせている。
それは、もしかしたら異端に映るかもしれないことであり……人魚の中では微妙な立ち位置になることもあるのかもしれない。まぁ、憶測でしかないが。
だから、エステラは時折マーシャに接触していたのかもしれない。『海魚が欲しい』という建前で、年齢と立場的に上であったマーシャに甘えるという形で。
エステラも、周りからの声に思うところがあっても面と向かって反論出来ないポジションにいたからな。シンパシーみたいなものを感じていた……かもしれない。全部憶測だ。
けどまぁ、「あり得ない」とは言えないくらいの確率で『ないこともない話』ではあるな。
「別に一人増えようが二人増えようが準備する苦労は変わらねぇんだし、参加したきゃすりゃいいんじゃねぇの」
「……ふふ。そういう対応が、きっと居心地いいんだろうね。ま、あの照れ屋でへそ曲がりな人魚は、そういう素直な感情をストレートに表現しないから想像するしかないんだけどね」
そう言って、水槽に入りながら芋煮を頬張るマーシャに苦笑を向けるエステラ。
ぜ~んぜん気付いていない風にマーシャがはしゃいでいる。が、ここでの会話、全部聞こえてんだろ? きっと今ごろ背中がむずむずしてんじゃねぇの?
きっとこの後、エステラはマーシャのそばを通った際に抱きつかれるだろうな。
「えへへ。なんか、ガラにもないこと言っちゃったかな?」
ぽりぽりと頬をかき、大会委員長という重責から解き放たれたフラットな『エステラ』としての笑みを俺に向ける。
「大会が無事に終わってほっとしたのと、嬉しかったのと、そんな感じで口が滑ったんだよ、きっと。あんまり気にしないで」
「そうだな。今日なら俺も、人に優しく出来そうだしな」
「へぇ、ヤシロがかい? それは凄いね。なら、毎日運動会を開催した方がいいかもね」
「残念だな。今日は『精霊の審判』禁止なんでなんでも言いたい放題なんだよ」
誰が他人に優しくなどしてやるか。
お前らの方こそ俺を敬って親切にしやがれってんだ。どんだけ疲れたと思ってんだよ、今日。まったく……
「それじゃ、ボクはお腹が限界だからカレーをいただいてくるよ」
「ワタクシは魔獣のお肉のバーベキューが楽しみですわ」
そうして、腹を空かせた『淑女』が二人、腹の虫で輪唱しながら去っていった。
淑女って、なにかね?
「あ~、おったおった」
エステラたちが去って間もなく、今度はレジーナがやって来た。
特に足を引き摺るような素振りは見せていない。
「足は大丈夫か?」
「大丈夫や。まだ誰にも生ぺろぺろされてへんし、新品やで!」
「そんなこと聞いたんじゃねぇよ! つか、生じゃない『ぺろぺろ』ってなんだ!?」
「自分がよぅやっとる『エアぺろぺろ』やないかいな」
「う~っわ、冤罪ってこうやって生まれるんだぁ」
そんなもん、やったことねぇわ。
……今度試してみるか。
「いや~、まいったで~。店長はんにな、『ぼぃ~ん。カレールーを多めにお願いします、ぽぃんぽぃん』って頼まれてやなぁ」
「3バウンドしてたのか」
「そんで提供したんやけど、この人数やろ? 足らへんでなぁ。せやから大至急、救護テントで調合したんやで」
ジネットが張り切って、この場にいる人数分を作ったのだとしたら、ルーも相当な量必要だったことだろう。
「せやから今回のカレー、いつもと味が違ぅてあんま美味しくなくても文句言わんといてな」
「配合が多少変わっても、ベースがしっかりしてりゃマズくはならねぇよ」
風味や辛さが変わろうが、大筋でカレーからは外れない。
そして、そのベースをレジーナはしっかりと理解している。
「お前が関わってる以上、ルーにはなんの心配もしてねぇよ」
「そら有り難いことやけど……調合の前にお尻を掻いた手ぇ、洗ったかどうか記憶が定かやのぅて……自信ないわぁ……」
「そこは自信持てよ! 頼むから!」
そんなもん、一部のマニアしか喜ばねぇんだよ。
衛生面で看過出来ない案件だよ、それが事実ならな! ……ま、冗談なんだろうけど。
「ほなら、ウチもこれで」
手を上げて歩き出すレジーナ。
こいつはなんでわざわざ、そんなどーでもいいことを言いに来たのか。
その答えは一つ。
捻挫した足はもう平気だと、俺に見せるためだ。俺に心配をかけてしまったと思って、「もう心配しなくていいから」と遠回しに態度で示してみせたわけだ。
こいつも大概素直じゃないよな。
「んじゃ、俺も食ってくるかな、レジーナの手料理」
「は、はぁ!? 何言ぅてんのんな、自分!? 作ってはるんは店長はんやんか」
「ルーはお前のお手製だろ? それも、さっきこの場所で作ったばっかだ」
「それは、せやけど……」
「じゃ、美味しくいただいてくるよ」
「ん…………むぅぁああああ! ホンマ『いけず』やな、自分! ほなら絶対残さんと全部たいらげなアカンで! ほんでなぁ――!」
勢いよくしゃべっていた口がふいに止まる。
そして、口もとを手で隠して視線を外して。
「ほんで……美味しかったら、今度はウチに食べに……来ても、かまへんわ」
言い捨てて、足早に去っていった。
足はもう大丈夫なようだ。……慣れないことして、また転ぶなよ。
「ヤシロさ~ん!」
そして、最後に俺を出迎えてくれるのは、やっぱコイツらなわけだ。
「カレーと芋煮とバーベキュー、どれがいいですか?」
運動会の疲れなんか一切見せないで料理を配膳しているジネット。
そして、それを当たり前のように手伝っているロレッタ。
マグダはというと、ヤップロックが持ってきたのだという大量のポップコーンを豪快に弾けさせていた。疲れた体に、はちみつとバターのいい香りが沁み渡る。
「味見してみたんですが、どれもこれも美味しくて、ちょっと自信作なんです!」
珍しく、自分の料理を自分で褒めるジネット。
こいつは、自分の料理に自信は持っていても、あんまり自分で「美味しい」とは言わない。
美味しいかどうかは食べた人が決めればいいというスタンスだ。
そのジネットが「美味しい」と言うとは、よほど美味いに違いない。
というか、アレだな。
「外で食うと格別だろ?」
「はい! 疲れてお腹が減っていたのもいいスパイスになっています」
うふふと、嬉しそうに笑う。
「お兄ちゃん! 今日のカレーは凄いです! これは食べておかないと絶対後悔するですよ!」
「……魔獣のバーべーキューは絶品。けど、デザートにマグダのポップコーンがあるので食べ過ぎには注意」
「芋煮も、いい味になっていると思います。ヤシロさんの故郷のお味になっているか、確認してほしいです」
陽だまり亭三人娘にそれぞれを進められちゃあ、しょうがないよな。
「じゃあ、全部くれ」
「はい!」
「それじゃあよそってくるです!」
「……特に美味しい部位を発注してくる」
三人が一斉に解散する。
周りを見渡せば、会場中の者たちが手に料理を持って楽し気に談笑している。
肉にかぶりつき、カレーを頬張り、芋煮に舌鼓を打って、色とりどりのフルーツにうっとりしている。
デリアはずっとポップコーンを貪り食ってるな。
「ヤシロさん、お待たせしました」
「お兄ちゃん、特盛です!」
「……ボナコンがあったのでくすねてきた」
同じタイミングで三人が戻ってくる。
手にはそれぞれ大量の料理。
そんなに一人で食えるかよ。
「マグダ、ポップコーンは?」
「……まだ必要と思われる……が、当面は在庫で事足りる状況」
「ロレッタ、配膳は?」
「エステラさんとこの給仕さんたちがすごくて、もうほとんど終わってるです」
「ジネット。調理は?」
「もう、食材が残っていません」
それはまた、張り切って作ったもんだな。
「んじゃ」
「はい」
「……うむ」
「みんなで一緒に夕飯です!」
珍しく、陽だまり亭従業員全員で夕飯を食うことになった。
まぁ、実は狙ってたんだけどな。こういう機会はなかなかないし。
「うふふ。実は、一緒に食べたくて、ちょっと頑張ってお料理終わらせたんです」
「あたしもです! 配膳、めっちゃ頑張ったです!」
「……マグダは、すべて計算尽く」
みんな同じ気持ちだったらしい。
「ねぇ。ボクも混ぜてもらっていいかい?」
まだ一口も手を付けていないカレーを片手に、エステラが輪の中に混ざってくる。
「お前は、関係者とか来賓と食わなくていいのかよ?」
「大急ぎであいさつ回りしてきた」
「まったく、どいつもこいつも……おんなじこと考えやがって」
「それは、君も同じ穴の狢だと自白しているようなものだよ」
「うっせ」
セロンの持ってきた光るレンガを囲んで飯を広げる。
なんとも統一性のないラインナップだが、外で食うと美味いってカテゴリーは一緒だ。
「んじゃ、いただきますか!」
「はい。召し上がれ」
「「「いただきます」」です!」
号令をかけ、一斉に料理を口へと運ぶ。
俺はカレーを食ったのだが――
「うっ……まぁー!」
乳酸にいじめられて死屍累々と倒れ込んでいた細胞が、スパイシーなうま味を浴びて踊り出しやがった気分だ。うま味が全身に沁み渡っていく。
「ジネットちゃん! この芋煮っていうの、すっごく美味しい! どうやって作ったの?」
「それはですね、ベースに――」
「さぁ、魔獣の肉を食べよう! ボナコンは久しぶりだなー!」
嬉しそうに話すジネットの声を聴きながら、こんがりと焼けたボナコンにかぶりつく。
美味い!
柑橘系にも負けない勢いで肉汁が溢れ出す。口の中が美味さに侵食されていく。
白米をかき込みたい! あ、カレーの白米があったか! うはっ、うまっ!
「ヤシロさん、芋煮はどうですか?」
「うん。美味い!」
日本で食った物とは少しだけ味が違うが、それもまた個性だ。
これが、四十二区の、陽だまり亭の芋煮になっていくんだろうな。とにかく美味い。
「見てヤシロ! ボナコンカレー! すっごい贅沢!」
「エステラ、お前な……料理を混ぜんじゃねぇよ、行儀悪ぃな」
「いいじゃない。外での食事なんだし、こういう日なんだし」
二つの料理を混ぜるという、マナー的にアウトっぽいことを喜々として自慢してくるエステラ。普段じゃ絶対しないんだろうな。
貴族が肉や魚をごちゃまぜにして食べるなんて、はしたないと言われるだろうし。
こいつらきっと、ねこまんまとか食ったことないんだろうぜ、可哀想に。美味いのに。
「ふぉおお!? ボナコンカレー、暴力的な美味しさです! これは凄まじいです!」
「……ボナコンのうま味がカレーの強さに負けていない。そればかりか、ボナコンの肉汁がカレーに深みを与えている」
「こういう風に味が変化するんですね。新発見です」
確かに、いい肉の入ったカレーは美味いが、その味は想像の範疇を超えない。
ジネットをわっしょいわっしょいさせるほどではなかったようだ。
まぁ、肉を追加したからってそこまで劇的に変わるわけが――
「うっっっまっ!? なにこれ!? うまっ!」
めっちゃ美味い!
鶏、豚、牛が裸足で逃げていくくらいに美味い!
「変わるもんだなぁ」
「そうですね。わたしもびっくりしてます」
「その割には、わっしょいわっしょいしてないんだな?」
「へ? そう、ですか? まぁ、でも、想像の範疇でしたし、おそらくこの味は初めの一口のインパクトが長く続かない気がしまして」
そんなジネットの推測はまさに正解で、凄まじい衝撃を与えたボナコンカレーだったが、二口、三口と食べ進むにつれ「まぁ、こんなもんか」という気になってきた。
いや、美味いんだが、美味いのが当たり前というか、平たく言ってしまうと、ちょっと飽きるというか。
きっと、カレーもボナコンも主張が強過ぎるんだろうな。
それぞれが主役を張れる強烈なインパクトを持っているから、――例えるならバンドのような一体感がなくて、別のバンドのボーカル同士が組んだスペシャルユニットのような、その一曲は特別感があっていいけど、長く活動するならやっぱ元のバンドの方が調和が取れていていいなというか――そんな印象だ。
それを一口目で見抜いていたジネットは、さすがプロといった感じか。
……一体感、か。
「なぁ、ジネット。チーズはないか?」
「チーズですか? えっと……」
「ございますよ」
にこやかに答えたのはアッスントだった。あちらこちらをうろうろして、人々の反応を窺っていたらしい。感触がよければ何かしらの商売につなげようという魂胆か。商魂逞しいねぇ。
「少々お待ちを」と言って駆けていったアッスントは、物の数分で何種類かのチーズを持って戻ってきた。
その中でも特によくとろけるチーズを選び、薄くスライスして、カレーに乗せる。
「えっ!? カレーにチーズを入れるんですか!?」
「まぁまぁ、いいから。一口食ってみ」
とろけ始めたチーズをたっぷりと絡めて、一口分のカレーとライスを掬ってジネットへと差し出す。
一瞬戸惑いを見せて、ジネットがそっとカレーを口に入れる。
瞬間、ジネットの瞳がきらりと輝いた。
「……チーズのコクがカレーを包み込んで……お口の中でわっしょいわっしょいしています!」
「えっ、美味しいの、それ!? ボクもやってみよ!」
「あたしもです!」
「……マグダはすでにやっている」
それぞれがスライスしたチーズをカレーに入れ、そしてかき込む。
エステラとロレッタはスプーンを皿の上に落とした。
「……これは、反則だよ」
「……まさに、反則的な美味しさです」
「……う~ん……まんだむ」
最後のはマグダだ。まぁ、言うまでもないか。
あと『強制翻訳魔法』さ……雰囲気で翻訳すんのやめろや。
「ヤシロさん」
「ん?」
「これは、陽だまり亭のメニューに追加決定ですね」
追加は別にいいけれど。
「ボナコンカレーに比べるとインパクトは薄くないか?」
「確かに、インパクトという面ではそうかもしれません。ですが」
残りわずかとなった俺のカレーを指差して、ジネットはプロの顔で言う。
「これは、またすぐにでも食べたくなる味です」
ボナコンカレーは、素材の高級さもさることながら、味的にも「特別な日に食べるご馳走」感が否めない。
それに引き替えチーズカレーは、「気が向いたら気楽に食べられる」そんな味だ。
「気負わず、笑顔で食べられて、それでいて今度食べようって決めたらその日からわくわくして待っていられる、そんな料理が陽だまり亭に相応しい物だと思うんです」
「じゃ、お眼鏡にかなったわけだ」
「はい! 大合格です」
合格に大も小もないだろうに。
「…………あっ!?」
自分のカレーにもチーズを乗せようとして、ジネットが声を上げる。
そして、俺のカレーを見て、自分のカレーを見て、自分のスプーンを見て、俺のスプーンを見て、そして気が付いたらしい。さっき自分が口にしたのが俺のスプーンだったということに。
「あぅ、あの、えっと…………ご、ごちそうさま……でした」
んんっ、ん!
妙なことを口走らないように!
そんな深い意味とかないから!
ちょっと食ってみるかって、ただそれだけのことだから!
……えぇいくそう!
チーズカレーが食いたいのに妙に気になってスプーンが使えないじゃないか!
「い、芋煮、食べませんか!? お箸で!」
「そ、そうだな! とりあえず……いったん休憩を挟むか」
スプーンを箸に持ち替えて、ジネットお手製の芋煮を啜る。
あぁ、温まる。つむじからつま先までポッカポカだ。暑っついわぁ~!
しょうがない、話を変えるか。
「なぁ、お前ら。特にエステラ。気が付いているか?」
「何にだい?」
「白組の逆転劇の裏で、俺が狙っていた真の目的に、だよ」
「真の、目的……?」
エステラがマグダたちに視線を向ける。
だが、誰一人として俺のメッセージには気が付いていないようだ。
なんだよ。
白組の優勝に相応しいメッセージを、折角仕込んでやったってのによ。
棒引きの前に得点ボードを見て、それが可能だと気付いた時は、精霊神辺りが「そうしなさい」と一丁前に示唆してんのかと思ったくらいだ。
「得点ボードを見てみろ」
リレーは、一位に500ポイント、二位に400ポイント、三位に300ポイント、4位に200ポイント加算される。
それらのポイントを加算した合計点は――
青組:3880ポイント
黄組:3980ポイント
白組:4180ポイント
赤組:4080ポイント
「白組の得点をよぉく見るんだ」
「4180ポイント……それが、なにさ?」
まだ気付かないのか。しゃ~ね~な。
答えを教えてやるか。
「白組の合計点は『4180』だ。それを逆から読むと『0814』となる」
すなわち。
「『おっぱいよ~ん』になるわけだっ!」
「あ、ごめんロレッタ。おかわり頼めるかい?」
「じゃあ、あたしのもついでによそってくるです!」
「……マグダはボナコンを追加してくる」
「って、おい! 聞けよお前ら!?」
俺が割と苦労して仕込んだメッセージだぞ!?
もうちょっとなんかあるだろう!? 「感動した!」とか、「おっぱいのメッセージのおかげで優勝出来たんだね!」とか、「じゃあ、今日はもうおっぱいカーニバルだね!」とかよぉ!
「ヤシロさん」
俺の努力をスルーする悪辣三人娘に代わり、ジネットが俺を見つめて言う。
「懺悔してください」
ふん。
まぁ、想像通りの結末さ。
折角出張懺悔室があるからな。もう一回くらい入っておくのも、悪くないだろうよ。けっ。
あとがき
運動会、閉幕しました。
そして、これを書いた時と、
チェック1回目と2回目と、
そのすべてで、
チーズカレーが食べたくなりました!
美味過ぎでしょう、チーズカレー!
牛のおっぱいを醗酵させたものを入れるだけで、
カレーが物凄く美味しくなる!
これって素晴らしいことですよね!
『薄幸の美少女』みたいなもんですよ
『醗酵のおっぱい』
さて、
キャラによって言葉のチョイスはなるべく変えるようにしているのですが、
たとえば、
誰かが悪だくみをして失敗、自分の首を絞めたとした場合――
ヤシロ「自業自得だな」
エステラ「身から出た錆だね」
マグダ「……因果応報」
ロレッタ「見事な自爆です!」
ノーマ「当然の報いさね」
デリア「自分のせいだろ」
パウラ「こういうの、ブーメランっていうのよね」
ネフェリー「墓穴を掘ったってわけね」
ジネット「あの、……次からは気を付けましょう、ね?」
――と、このように「こいつならこう言うかなぁ~?」みたいな言葉を
なるべく選ぶようにしているんですが……それはそうと、罵られまくりですね!? ちょっと羨ま……いえ、なんでもないです。話を続けます。
言葉を選ぶようにはしているんですが、
たまに思いつかない時がありまして、
「あれぇ~、たしかこんな感じの言い回しがあったと思うんだけどなぁ……検索しようにも、どう検索したらいいんだろう……たしかあったと思うんだけどなぁ……」
みたいな。
そんな時は、ちょっとしっくりこないんですけど
伝わる言葉に置換しちゃいます。
実例として、
今回アッスントの台詞で
アッスント「お盛り上がり中失礼します」
というのがあったんですが、
『盛り上がる』と同じような意味で、
「ご歓談中失礼します」的な言葉があったと思うんですよね。
でも、運動会が終わって「わぁぁぁああ!」っていうのは「歓談中」ではないですし、
騒がしい盛り上がりに当てはまる言葉が思いつかず、
結局「お盛り上がり中」としました。
……しっくりこない。
検索とかしてみたんですよ。
そしたら、ちょっと違う角度の検索結果がありまして、
ほら、よく間違われる日本語みたいなのあるじゃないですか。
その中の定番で、
『さわり』は、『序盤』という意味ではなく、
物語や話の一番盛り上がるところなんですよ~
みたいな記事に行き着いたんですね。
つまり、
「さわりだけ話して」というのは、「重要なところだけかいつまんで教えて」的な意味合いになるんだそうです。
――というのは、一旦横においておいて。
『盛り上がり』=『さわり』
で、あるならば、
『お盛り上がり中』=『おさわり中』
お触り中!?
アッスント「みなさん、お触り中失礼します」
なにその卑猥な空間!?
みんな運動会終わって何してんの!?
ちょっと開放的になり過ぎじゃない!?
とりあえず私も混ぜて!
いやぁ、
とんでもない日本語マジックに気付いてしまったものです。
じゃあもう、ロック歌手なんかも
ロックスター「お前ら! 今日は最後まで触っていこうぜー!」
女性客「「「「きゃぁああっ!」」」」
もう、「きゃあ」がどっちの意味なのか分かんないですね!
こうやって、
少しずつ知識は広がっていくのですね。
知っていたつもりなのに、まさかそんな用法があったなんて、
私もまだまだ精進が足りないようです。
奥深いなぁ、日本語って。(しみじみ)
というわけで、
四十二区中の人たちが集まり、
他区からも領主や美人給仕長たちが多数参加して、
一日中、思いっ切り触った運動会!
無事終了です!
エステラ「『盛り上がった』に訂正してくれるかい!?」
ヤシロ「いや~、今回の運動会は触ったなぁ~」
エステラ「意味が変わってる! 言葉が置換出来てないから!」
レジーナ「え、痴漢出来てへんって!? ほならウチが領主はんのお胸をぺたぺた……」
エステラ「痴漢じゃなぁーい! で、その効果音について小一時間説教させてもらうよ!」
これからも触れるよう――もとい、
盛り上がれるお話を書けるよう、精進してまいります。
次回もよろしくお願いいたします。
宮地拓海




