無添加40話 パン食い競争はじまる!
会場が沸いている。
「「「「かっ、かわえぇ~!」」」」
ぶら下がったパンにぴょこぴょこ飛びつく幼いガキどもの姿に、観客をはじめ、そこらの大人が手当たり次第に骨抜きにされている。
「あむー! ……………………やわらかぁ~い!」
「おぉい、こら! 口開けるな! 落ちるだろうが!」
新しいパンの柔らかさに驚いて、パンを咥えていた口を開ける教会のガキその1。
ヤギのような耳をぴるぴる揺らして新しいパンの香りと味を楽しんでいる。
「ゴールしてから食え。次のレースもあるから」
「はーい!」
俺に手を振って駆けていくヤギ少女。
ゴールの方へと目をやると、すでにパンをゲットしてゴールしたガキどもが群がって大はしゃぎをしていた。
「こんなパンなら毎日食べてもいい!」
「これパンなの? あの硬いのと同じ食べ物?」
「おいしーねー!」
「あまぁ~! イチゴジャムさいきょう~!」
「いいや! あんこだよあんこ! これ、めっちゃうまい!」
「めろーんぱーん!」
もう、順位ごとに並ぶとかそんなもんは全部忘れて騒ぎまくっている。
そんなガキどもの反応を見て、いまだパンを食ったことのない大人たちが唾を飲み込んでいる。
「そ、そんなに美味いのか?」と。
「これまでのパンは、子供たちにはあまり人気がありませんでしかたらね」
「まぁ、あの鈍器みたいなパンじゃなぁ……」
「主食なので。食卓に並ぶので。親に言われて。と、それらの理由で仕方なく食べる物でしかなかったはずです」
「そのガキどもが、あんなに嬉しそうに食ってると」
「はい。それも、おかわりを欲しそうに、自ら率先して食べたいと言っているのですから、期待は膨れ上がっているでしょうね」
次のレースのパンを金具に固定しながらナタリアと意見を交換する。
コースが二つありそれぞれスタートとゴールの位置が逆なので、順番を待っている大人どもの隣でゴールしたガキどもがパンを食べているわけだ。
これは堪らんだろう。
「満を持しての、出走やー!」
「お、ハム摩呂が走るみたいだな」
「そのようですね」
と言い、小首をかしげるナタリア。
どうした?
「どうやら、この距離では聞こえなかったようですね。では僭越ながら私ナタリア・オーウェンが代役を務めさせていただきます。こほん……『……はむまろ?』」
「いや、求めてないから。毎回やらなきゃいけないヤツじゃないから」
なに「してやったり」みたいな顔してんの?
「我が騎士ー! お勧めのパンはどれなのじゃー!?」
スタート地点からリベカの声が飛んでくる。
大きく手を振ってこれでもかとアピールしている。
お勧めったってなぁ……
「どれも美味いぞー!」
「一番美味しいのはどれかと聞いておるのじゃー!」
だから、一番とか無理なんだっつの。
好みもあるし。
「フルーツとクッキーとプリンと今川焼き、どれが好きだー!?」
「プリンなのじゃ!」
「んじゃ、クリームパンにしとけ」
どっちもカスタードだしな。
大きく外すことはないだろう。
ちなみに、『フルーツ → ジャムパン』『クッキー → メロンパン』『今川焼き → アンパン』を勧めるつもりだった。
さほど大外れしない誘導ではないかと思う。
「リベカさんはいつプリンを?」
「今朝だ。ジネットが食わせてた」
「なるほど。自軍への勧誘のついでにですね」
「ま、そんな感じだな」
そんなもんなくてもよかったんだが、ジネットが「是非頂いてもらいましょう」って聞かなくてなぁ。
「美味しいものを食べている時、人は幸せな気持ちになれます。幸せな時は他人にも優しくなれるものですから」――だそうだ。
「おにーちゃーん!」
今度はハム摩呂が両手を振って俺を呼ぶ。
「ケーキが、好きやー!」
いや、聞いてねぇよ。
つか、選択肢に入ってなかっただろうが。生クリーム入りのパンなんか準備してねぇよ。
「お前はメロンパンでも食ってろ」
「うんー! …………はむまろ?」
「聞こえてたのかよ、さっきの」
にしても、タイミング遅過ぎるけどな。
「ヤシロ様はパンのソムリエのようですね」
「そんなんじゃねぇよ」
……一番足が速いハム摩呂には、一番取りにくいメロンパンで時間をロスしてもらいたいだけだ。
アンパンやジャムパンに比べて、メロンパンは表面が硬く、クッキー生地がボロボロはがれやすい。故に噛みつきにくいのだ。
アンパンなどにあるパンの柔軟性が低いからな。
ただまぁ、その程度のハンデでハム摩呂を抑えられるとは思ってないけどな。
なんにしても規格外過ぎるんだよ、あそこの弟妹は。
長女は普通なのに。
「長女は普通なのにー!」
「なんです、急に!? 普通言わないでです!」
『どこの長女』とは言っていないのにしっかりと反応するあたり、自覚が有り余っているのだろう。それでこそロレッタだ。
そんなこんなをやっていると、給仕が腕を高々と上げた。
レースが始まる。
「位置について、よぉーい!」
――ッカーン!
鐘の音と共に走り出すチビッ子ども。
「ハム摩呂たぁぁあああん!」
それと同時に暴走を始めるルシア。
「行使する、実力を、私は」
「どふっ!」
と同時にルシアのみぞおちにチョップをめり込ませるギルベルタ。
……暴れんなよ、お前ら。
「はゎわぁ! ひらりひらりとかわされて……まさに、パンの世界の酔拳やー!」
食らいつこうとするたびに逃げていくメロンパンを酔拳に喩えたのか…………って、この世界にないよな、酔拳!? 映画やってないよね!? 実在するの!?
あぁ、そうか。またお前の仕業か『強制翻訳魔法』。
「ハム摩呂たん! 今助太刀に向かうっ!」
「ルール違反、それは。願う、私は、ルシア様の自重を」
「なぜだ!? ひらひらと逃げ回るメロンパンとやらを私が反対側から狙い、二人が向かい合って追い込んでいくのだ! そうすればパンは逃げ場を失い見事捕まえることが出来る!」
「大惨事になる、二人揃ってキャッチに失敗した場合は」
「大惨事とはなんだ? どうなるというのだ!?」
「してほしい、想像を。二人が同じタイミングでパンに向かい、万が一パンが逃げたら……ぶつかってしまう、口と口が」
「せっ、せせせせ、接吻か!?」
「それは大惨事思う、私は」
「うきゅ~! 恥ずかしい!」
顔を両手で覆って身悶えるルシア。
「へぇ。あいつ自覚あったんだ」
「いえ。今の『恥ずかしい』はご自身の性癖や痴態を晒していることを指しているわけではないようです」
「えっ、アレ以上に恥ずかしいことなんてあるの!?」
「羞恥ポイントは人それぞれです。例えば私の場合、真っ裸は恥ずかしくないのですが、真っ裸に靴下のみは恥ずかしいと感じます」
「真っ裸も恥ずかしいって感じて、給仕長として! 女子として!」
なんなの? 今日は自分の痴態や性癖を晒し合う大会だっけ?
「あむー! なのじゃ!」
逃げ回るパンに苦戦するガキどもの中で、リベカが一番にパンをキャッチする。
ウサ耳をぴんと立てて、そのままゴールへ向かって突き進む……かと思いきや。
「うまー! ウチの酵母、うまーなのじゃ!」
「いいから早くゴールしろよ! ポイントかかってんだよ!」
立ち止まるリベカに、ゴールへ向かえと急かす。
急がないと、純粋な駆けっこ対決になったらハム摩呂には絶対勝てないんだからな!
苦戦している今のうちにさっさとゴールを……と思っていた矢先。
「あむー! 見事な、キャッチやー!」
ハム摩呂がメロンパンに食らいついた。
マズい! リベカ、急げ!
「うまー! 味覚と食感の、文明開化やー!」
甚く感激した様子のハム摩呂がその場でメロンパンをむさぼり始めた。
……あぁ、うん。ハム摩呂もそーゆータイプだよな、うん。
結局、パンの美味さに夢中になってしまったハム摩呂とリベカは他のガキどもにあっさり抜かれてビリとブービーでゴールした。最下位じゃなかっただけ、まぁ、マシか。
「我が騎士よ! わし、もう一回くらい出てやってもいいのじゃ!」
「一人一回だよ!」
「おかわりじゃ!」
「あとにしろ!」
パン食い競争が終わったら、余ったパンが配布される。
一応、ここにいる全員に行き渡るくらいは用意したのだが……足りなそうだな。
「おっかっわりっ! おっかっわりっじゃ!」
リベカが極端なわけではなく、他のガキどももおかわりを期待してそわそわしている。
どこかから『参加選手にはパンが振る舞われる』という情報が漏れ出したらしい。
……まぁ、漏洩場所は想像出来るけどな。
さっきからずっと「パン、パン~、食べ放題~♪」と鼻歌を歌っているシスターがあそこにいるからな。
つか、食べ放題じゃねぇよ。
すんげぇ大量に焼いてきたけど、数には限りがあるんだよ。
「食べ放題、楽しみなのじゃ!」
ん~……これは、何か対策を立てないといかんかもしれんな。
「また食べたい」と思うより「食べ放題じゃないの?」なんてがっかり感が先に来てしまいそうだ。
それはマズい。
とはいえ、パンを追加するわけにはいかないし……ん~…………
「ヤシロ様。『何パンが一番おっぱいに似てるかな~』とお悩みのところ失礼します」
「悩んでねぇわ!」
「形的にはメロンパンが……ただ、あそこまでガサガサですと色気にかけますし…………悩ましいですね」
「だから悩んでないって言ったよね!?」
「味ではクリームパンかと思うのですが!」
「用件話してくれる!?」
クリーミーな点には大いに賛同するけども!
「お子様たちの部が終了しましたので、次はお待ちかねのご年配の部です」
「……別に待ちかねてねぇよ」
「ですが、おそらく揺れますよ? 『ぺっちん、ぱっちん、ぶら~ん』と」
「音っ! その擬音、一切わくわくしない! 『ぷるん』とか『ぽいん』がいいな!」
そんなわけで、まーったく期待が持てない高齢者の部が始まった。
普段日向ぼっこしかしていないようなジジババから、歳を取ってもバリバリ働いているジジババまで入り乱れてのレースは、それはそれで楽しめた。
やはり、パンのキャッチで時間がかかり予想外の大金星が連発したりして、ジネットなんかは大はしゃぎだった。ジジババの知り合いが多いからなぁ、あいつ。
で、俺の知り合いでもあるジジババも参加したのだが……
「まぁ! まるで別の食べ物みたい。ねぇ、ゼルマル」
「む……ま、まぁな」
「あら? どうしたの、そっぽ向いちゃって」
「ムム……口にクリームが付いとる」
「えぇ~。どこ?」
「そこじゃ。ほれ、口の端の……えぇい、逆じゃ」
「分からないわ。取って、ゼルマル」
「ごふぅ!? ごーっほごほごほ! ばっ、ばかなことを言うもんじゃないわ!」
焦り過ぎだよ、ゼルマル。
あと、いちゃいちゃすんな。見たくもねぇ。
「ご年配の方にも好評のようですね」
「みたいだな」
いくつかのレースが終わり、ジジイもババアもこぞって楽しそうな顔を晒している。
「こんなスカスカしたもんが食えるか! 米を食え!」みたいな年寄りは、さすがにこの街にはいないようだ。もともとパンが主食の世界だしな。
ひょっとしたら、慣れ親しんだあの硬さを好み、歯ごたえのほとんどない柔らかいパンは忌避されるかもしれないなぁとか思ったのだが、杞憂だったようだ。
新しいパンは年齢を問わずに受け入れられそうで一安心だ。
この『パン食い競争』には菓子パンばかりを使用しているが、柔らかさと小麦の味と香りを堪能出来る丸パンや食パンもきっと受け入れられるだろう。
「よぉ! 陽だまりの小倅!」
「なかなか大したもんよなぁ、このパンは」
怒り肩のフロフトと猫背のボッバがパンを片手にやって来る。
フロフトはアンパン、ボッバはジャムパンを食っている。
「これもおんしゃが考えたんじゃろ?」
「発案者は極秘機密だよ」
「ひゃっひゃっひゃっ! この四十二区じゃあ、隠し通せや~せんでよぉ」
「そうじゃい。こういうことには必ずおんしゃが絡んどるんじゃ」
好き勝手言って、ボッバたちはゼルマルと合流する。
また揃いやがったよ、ジジババフォー。
「そういやぁ、オルキオんやつぁは参加しとらんのか?」
「オルキオなら、この後の特別枠で参加することになってるぞ」
オルキオってのは、ジジババファイブの元メンバーで……まぁ、今でも仲は良いんだろうが、ずっと離れて暮らしていた愛妻シラハのもとへ引っ越していったジジイだ。
今日は貴賓席で夫婦一緒に運動会を観戦している。
「見に来てる連中にもお裾分けしてやろうと思ってな」
「このパンをか?」
「そりゃあいい! 連中、きっと腰を抜かしよるぞ!」
「ひゃっひゃっひゃっ! そりゃあ、見ものだぁ~なぁ~」
ジジイたちが笑っている。
その隣でナタリアが「いいから早くムム婆さんの口元を拭いてやれよ。有耶無耶にしてんじゃねぇよ、このヘタレジジイ」みたいな冷めた顔をしていた。
ムム婆さんも、ちょっとだけ不機嫌そうに見える。いや、いつもの笑顔ではあるんだが……こういう微妙な雰囲気の変化に気付けないんだよなぁ、ゼルマルは。
「婆さん、俺が口元を拭いてやろうか?」
「あら、ヤシロちゃんが? 悪いわねぇ」
「なんじゃ、ムム。子供みたいにクリームをつけて? ワシが拭いてやろう」
「いやいや、ここはワシが拭いてやるとするかのぅ」
「ちょっ、待てお前ら! ワシが拭くと最初に言うたんじゃ! ワシが拭く!」
「「「どうぞどうぞ」」」
「貴様らぁ!?」
俺とジジイたちに弄られてゼルマルが肩を怒らせる。
「ん! これで拭いておけ」
「はいはい。ありがとね、ゼルマル」
少~しだけ、ムム婆さんの声音が変わった。
ちょっとがっかりした感じだ。
ったく、世話を焼かせんなよ、ジジイ。介護にはまだ早いだろうに。
「う~っわ、このジジイ……『ワシが拭く』って言ったのに……」
「男らしゅうないのぉ、ゼルマルよ」
「がっかりなんでねぇ~のぉ」
「やっ、やかましいわ! ……ムム、動くなよ」
「はいはい」
ぶっきらぼうな顔でムム婆さんの口元に手拭いを押し当てるゼルマル。
そっぽを向きながらも、痛くならないように優しく口元を拭っている。
「『帰ったらあの手ぬぐいで自分の顔を拭く』に10Rb」
「ほんじゃあ、ワシは『匂いを嗅ぐ』に50Rbじゃ!」
「ワシは『神棚に飾る』に8Rbじゃ」
「勝手なことを抜かすな、おぬしら!?」
「私もよろしいでしょうか?」
ゼルマル弄りに、ナタリアが参戦してくる。
おぉ、おぉ、参加しろ。好きなだけ。
「では。『その手ぬぐいを煮出したお湯でお風呂に入る』に100Rb」
「うわぁ……ゼルマル、それはないわぁ」
「おんしゃ……それはどうなんじゃ?」
「行き着くとこまでいってもぅ~たんかのぉ」
「やっとらんわ! 人をおかしな目で見るな!」
やってなくても「あいつならやりそう」って思われてんだよ、お前は。
むっつりをこじらせたお前への正当な評価というヤツだ。甘んじて受け入れろ。
「ゼルマル」
「な、なんじゃ、ムム?」
「その手ぬぐい。綺麗に洗って返すわね」
「お前まで信じるんじゃないわ、こんな与太話!」
ムム婆さんの洗濯技術は一級品だからな。
きっと新品同様になって戻ってくることだろう。よかったな、ゼルマル? え? 残念なの? え~、なんでぇ~? にやにや。
「こ、ここの空気は不愉快じゃ! ワシは青組に戻る!」
ゼルマルが足音を荒らげて青組応援席へと戻っていく。
お~お~、照れちゃってまぁ。一切可愛くないな、ジジイが照れても。
「そんじゃあ、ワシらも」
「帰るかねぇ」
「それじゃあね、ヤシロちゃん」
ゼルマルに続いてフロフトたちも応援席へと帰っていく。
そのころ、コースの上ではバーサがプラプラ揺れるメロンパンに悪戦苦闘していた。
「あらあら、うまくいかないものですね」
あ~んと口を開けては、パンに齧りつこうとする。しかし、パンは顔に当たって明後日の方向へと逃げていく。
パンが顔に当たる時に目をつむっているから狙いが定まらないのだろうが……ババアのキス顔見せられてるみたいでイラつくなぁ、この光景。
「……尊い」
リカルドのとこの執ジジイだけが楽しそうだ。
「あ~ん、ダメ。出来ないわぁ」
「助太刀いたしますぞ!」
「反則だからやめろ、ジジイ」
駆け出そうとした執ジジイを取り押さえる。
「では、なにかしらアドバイスをするべきではないですか? あなたは私の敵ではありますが同じチームの仲間でもあるのですから」
まだ敵認定されてんのか、俺……
熨斗つけてくれてやるっつうのに。
「攻略法っつってもな……」
「何かあるでしょう! ご協力を! 私は……これ以上バーサ様の、あの美しいキス顔を他の男に見せたくないのです」
うわぁ、なんだろう。胃がムカムカする。
誰も見てねぇよってツッコミてぇー。
「さぁ、攻略法を!」
「メロンパンに顔面ぶつければくっつくんじゃねぇの? ほら、両方表面がざらざらしてるし、マジックテープみたいに『べりべりべりっ!』ってあとで剥がせる感じでさ」
「まじっくてーぷ?」
執ジジイが訝しげに眉根を寄せる。
まぁ、分かんないよな。
「要するに、顔のシワがメロンパンの凹凸に引っかかって取れんじゃねーのーってことだ」
「バーサ様の顔にシワなどない!」
「いや、あるだろう!? シワッシワじゃねぇか!」
「あれはエクボだ!」
「額や目尻にエクボが出来るか!」
アバタもエクボなんてレベルじゃねぇな、こいつ。
恋の盲目ランキングで一気に上位に食い込んできそうな勢いだな。
フィルマンとかパーシーとかを抜き去って。
「あむっ! 取れたわ! やった☆」
「きゅん!」
メロンパンを咥えてガッツポーズを取ったバーサを見て、執ジジイが心臓を押さえて倒れ込んだ。……発作か? それとも、他人の寿命を奪い取る能力でも持ってんのかあのババア? マジ怖いんですけど。
「ヤシロ」
倒れた執ジジイをエステラのとこの給仕が応援席へ搬送していく中、エステラが俺たちの前へとやって来た。
「『パン食い競争』の特別枠なんだけどね」
やや困ったような顔をして、肩をすくめてみせる。
ま~た何か面倒なことを背負い込んできやがったな。
「この後の青年の部の前に差し込めないかな?」
「順番を変えるのか?」
「うん。まぁ、そういうことだね」
本来であれば、この後『青年の部~ぷるんぷるんカーニバル~』が行われて、特別枠はその後の予定だった。
それを早めてほしいということは……
「貴賓席で暴れ出したヤツがいるのか?」
「うん……子供たちの反応が効果的過ぎたんだろうね、きっと」
パンを食べて大はしゃぎするガキどもを見て、自分も早く食べたいと言い出したヤツがいるのだろう。
何組かの貴族に参加の呼びかけをしていたから、おそらくそこら辺のヤツか……
「大丈夫、だよね?」
エステラ的には、いちいち貴族のわがままを抑え込むようなことはしたくないようだ。妥協出来るところには妥協しようという腹積もりらしい。
区民運動会、特にこのお披露目を兼ねたパン食い競争は、荒れることなくなるべく楽しくハッピーに、か。俺が言い出したことでもあるし、貴族相手に「待て」ってのは意外に骨が折れるからなぁ……ったく、これだから貴族は。
「特別枠のコースは50メートルを予定していますし、ちょうどいいかもしれませんね」
『青年の部~ぽぃんぽぃんフェルティバル~』は80メートルだ。
今の年寄りの部と同じ距離である特別枠を先にやってしまえば、スタートとゴールの位置を変えなくて済む、か。
「分かった。じゃあやかましい連中をさっさと黙らせるとするか」
「助かるよ。さすがに数が多くてね」
ゲラーシーやマーゥル、二十四区のドニスや二十三区のイベール・ハーゲン、それにシラハなんかもいるしな。
そいつらを全員黙らせるのはさすがにしんどいか。
ルシアやトレーシーを黙らせる方がきっと楽だろう。
……ベルティーナが拗ねるかもしれないけどな。後回しにされると。
ま、特別枠にはあいつもいるし、なんとかなるだろう。というか、なんとかしてこい、エステラ。
「じゃあ、エステラ。それを選手に伝えてきてくれ」
「分かった。こっちの準備はよろしくね」
特別枠のレースでは勝敗は関係ない。
なのでパンも取りやすい高さに設定しておく。
あくまで、今度発売される新しいパンの広報活動の一環なのだ、これは。
あわよくば、次回開催時にスポンサーについてもらって資金を引っ張ってくるけどな。
「え~、それでは。ここで会場にお越しの来賓の方々にも参加していただきたいと思います」
給仕がトラックの真ん中に立ち、特別枠の繰り上げを宣言する。
待機していた選手への説明はエステラが行っている。
あ、やっぱりベルティーナとデリアが不服そうだ。まぁ、待ってろって。あとでいくらでも食えるんだから。
……あいつらが『いくらでも』食ったら、あっという間になくなりそうだけどな。
給仕の誘導に従って、貴賓席や観客席からぞろぞろと参加者が集まってくる。
よく見知った顔がずらりと並ぶ。
そんな中に、一組の姉妹が混ざっていた。
「おい、英雄。呼ばれたから来たぞ」
バルバラとテレサだ。
エステラは今頃、こいつを切り札にしてベルティーナたちの説得を行っているところだろう。
ベルティーナとデリアなら、「テレサが出るなら……」と大目に見てくれるはずだ。
「なぁ、アーシらはここでいいのか?」
テレサは特別枠に参加するが、バルバラにはこの後『青年の部~揺れる! 乳祭り~』に参加してもらう予定だ。
「こっちに出るのはテレサだ。お前は一緒に走ってサポートしてやってくれ」
「おう、任せろ! 絶対一番になってやるぜ!」
いや、点数に関係ないから何番でもいいんだけどな。
「テレサ。また走れるか?」
「うん! えーゆーしゃ! あーしの、はしぅとこ、みてて、ね!」
「おう。見てるからな」
「ぇへへ~」
手を振って、テレサがスタート位置へと向かう。
バルバラ、分かってると思うけど、お前はサポートだからな? 手、使うなよ?
まぁ、反則があっても特別枠だから構いはしないんだけど。
「んじゃあ、特別枠第一走者は位置に並んでもらおうか」
わらわら集まってきた特別参加者を並ばせていく。
とりあえず、二十九区領主の姉にして変わったことが大好きなマーゥルと、そのマーゥルのことが大好きな二十四区領主ドニスを並べておいた。
「ちょっとよいか、ヤシぴっぴ! 少し話したいことが!」
「あーやかましい! 時間押してんだからさっさと並べ!」
マーゥルの隣に並ばされて、ドニスが狼狽している。
ひた隠しにしているおのれの恋心が露呈しまいかと焦っている……わけじゃなくて、あれは単純に好きな女の子の隣に立ってどうしていいか分からずにテンパっているこじらせた男子中学生の心理だな。
ほら、意味もなく毛先をいじり始めた。
ドニス。お前は知らないのかもしれないけどな、いじる毛先って基本前髪なんだわ。なんで頭頂部にかろうじて残った一本毛をいじいじしてんだよ。観客がはらはらしちゃってんじゃねぇか。「そんな乱暴に扱ったら……」って。
「よ、……よい、日和だな」
「そうですねぇ。楽しみだわぁ、ヤシぴっぴが考えた新しいパン」
だから、マーゥル。それ極秘機密なんだわ。なに察してくれちゃってんだよ。他所の区の貴族なのによぉ。……まぁ、気付くか。マーゥルだしな。
「ねぇ、DD?」
「ごふぅ! ……けほっ。な、なんだ? マ、マー……ミズ・エーリン?」
へタレー!
ドヘタレ!
お前はなんのために一本毛になったんだ!?
それでもチョロリンか!?
名前くらい呼んでやれよ、……ったく、この街の男どもは。
「DDは何パンを狙うのかしら?」
「ワ、ワシは、そうだな、ん~…………ミズ・エーリンはどうなのだ?」
「私は、そうねぇ。アンパンかしら」
「で、では……同じものを」
無理だよー!
一種類ずつしかぶら下げてないから!
同じパン狙うと奪い合いになるから!
「うふふ。それじゃあ、同じパンに同時にかぶりつくことになりますね」
「なぬっ!? そ、それは…………ダメ、だな」
「うふふ、そうですね。私、恥ずかしいわ」
「はぅううう……っ! …………か、かゎぃい…………っ!」
あ~ぁ、顔真っ赤にしちゃって。悶えちゃってまぁ……
『うっかりほっぺにちゅー』とか想像してんじゃねぇだろうな?
「うっかりほっぺに……いいや、いやいや、何を考えておるのだ、ワシは!」
……考えてんじゃねぇよ。
「で、では、ワシはその隣のパンをいただくとしよう」
「じゃあ、競争ですね」
「あ、あぁ……そう、だな」
妙にきらきらした目をしやがって……
今度は「競争っていったら『つかまえてごらんなさ~い』『あはは、待て待て~』だよなぁ」とか考えてんだろ、どーせ。
「……『待て待て~』……ふふふ」
どんぴしゃかよ!?
ちょっと分かり易過ぎない、この街の領主!?
「テレサは何パンが食べたい?」
「あーしは……、なんでもいぃ」
「遠慮すんなよ。なんかみんな美味そうだぞ」
「えっと……じゃあ……おねーしゃと、おんなしの」
「あぁっ! テレサ可愛いっ!」
テレサも第一走者なのか。
つかテレサ。バルバラは食わないからな?
「はいは~い! 私も特別枠の第一走者だよ~☆」
と、タライに入ったマーシャが入場してくる。
っていうか、運搬されてくる。
タライを抱えているのはデリアだ。
「デリアちゃんとはチームが分かれちゃったから、ここで友情の確認をしておかないとねぇ☆」
「くそぉ! あたいはまだおあずけなんだぞ! マーシャはいいよなぁ、先に食べられて」
甘くて美味いという噂だけを聞いていたデリアは、早くパンが食べたくて仕方がないらしい。
デモンストレーションの時も食べられなかったので、今日のパン食い競争を心待ちにしていたのだ。
もう、目がパンに釘付けだな。
いいか。
サポートはあくまでサポートなんだから、間違ってもお前らが食うなよ?
分かってるよな、デリア? バルバラ?
「デリア、バルバラ、お前らはおあずけだぞ」
「うぅ~、ヤシロが意地悪だぁ!」
「分かってるよ! アーシはテレサのためにここにいるんだ! あと、姐さんを泣かすと折るぞ!」
何をだよ?
どこをなんだよ。
怖ぇよ。
四人の選手と二人のサポートが一列に並び、給仕の合図と共に走り始めた。
「マーシャ! さっさと終わらせて早くあたいにまわせよ!」
「ほ~い☆」
「テレサ、一番近いパンに向かうぞ!」
「あぃ! ……ぁ。ぱぃ!」
直んねぇなぁ、テレサの返事。
思春期に入った途端、俺にクレーム寄越したりしないだろうな?
タライを抱えたデリアと、しっかり手をつないで走るバルバラ姉妹がジジババを残して先行する。
そして、デリアが――おそらく自分が食べてみたかったんだろが――アンパンへ向かってコースを変える。
そこはバルバラたちのいるコースで、一番近くに向かうと言っていたバルバラたちと鉢合わせる。
「バルバラ! あたいはあんこのヤツを食べたいんだ! どけ!」
「すんません、姐さん! 妹のこととなると、アーシは下がれません!」
睨み合う師弟……いや、師弟ではないんだけども。
その師弟に連れられた二人はというと。
「デリアちゃ~ん、食べるのはわ・た・しだよぉ~?」
「おねーしゃ、あーし、何パンでも、いぃょ?」
まっとうなことを言っていた。
選手をほったらかして引率者が争っている。だから、サポートだつって釘を刺しといたのに……
アンパンの前で睨み合うデリアとバルバラ。
しかしそこへ、第三の人間が現れた。
「娘たちよ。そこは先約済みだ。……退けぃ」
全身から領主オーラをバリバリ立ち上らせたドニスだ。
お前、それ……『BU』での領主会談の時よりも禍々しいじゃねぇか。あの時にそのオーラ出されてたら、エステラもルシアもちょっとたじろいでたかもしれねぇぞ。
「なんだこの爺さん?」
「さぁ、知らねぇジジイっす」
わぁ、あの娘たち世間知らず!
おかしいなぁ……デリアは『宴』でドニスと会ってるはずなんだけどなぁ……領主への態度とかちゃんと出来るようになったと思ったんだけどなぁ……あぁそうか、甘いものの前ではそんなもんどうでもよくなっちゃうのか。残念な娘だなぁ、デリアも。やっぱ。
「引かぬというのなら……ワシの持てる全権力を総動員して貴様らを潰してくれるぞ!」
怖いこと抜かしてるよ、あの一本毛!?
好きな女の子のために世界ぶっ壊しても後悔しないタイプだ、あいつは。
……アンパンの奪い合いで開戦とか真っ平だからな?
「んだよ、ジジイ! 邪魔すんならぶっ飛ばすぞ!」
「姐さんの手をワズワワせるまでもねぇっす! アーシがボコしてやりますよ!」
『煩わせる』が言えてないぞ、バルバラ。
しかし、認識していないとはいえ、他区の領主に対して『ボコす』宣言……あいつ、あとでベルティーナあたりにキツークおしおきされるんだろうなぁ……
とか思っていると。
「あなたたち。もう少しだけ、目上の者に対する態度を改めなさいね?」
マーゥルが二人の前に立ちはだかった。――ドニスとは比較にならないオーラを纏って。
俺、普通にオーラとか言っちゃってるけど、見えないんだよ? 本当はそんな超常現象的なもんは見えたりしないんだけれど……確実に感じるんだよな…………つか、空間が歪んで見える気がするんだよなぁ……なんなら色まで付いている気がする。だからもう、これは見えていると表現して差し障りないだろうと……そんなことを改めて考えさせられるくらいに、マーゥルの周りの空気が禍々しかった。
ドニスが三歩、後ずさった。
「身分というものはもちろんのこと、年上の者を敬う心はどんな時もなくしちゃダメよ? 『ね?』」
『ね?』が、怖ぇえええええええええええ!
なに今の『ね?』!?
一文字で人の命消し去れそうな破壊力持ってなかったか!?
「「す、すみませんでした……」」
デリアとバルバラが素直に謝ったぁぁああ!?
ベルティーナですら二~三回話さなきゃ言うこと聞かせられなかった荒くれ女子だったのに!?
……マーゥル、お前、すげぇんだな。
「よかったぁ……二十九区が真性の敵にならなくて」
火事場から逃げ出したネズミの如く、俺たちのそばまで避難してきたエステラがぽつりと呟く。
そうだな。本気のマーゥルと敵対するのはいろいろと骨が折れそうだし、矢面に立つ領主はストレスで胃と毛根が大ダメージを受けるだろうな。
「さぁ、DDに謝りなさい」
「「申し訳ありませんでした……」」
「あんなに丁寧なデリア、初めて見たよ……」
マーゥルの力に、エステラが驚愕している。
やっぱ、ホンモノってすげぇんだなぁ。よかったなエステラ。お前、あと二十年早く領主になってたら、あそこらへんのヤツらとやり合わなきゃいけなかったかもしれないんだぞ。いい時代に生まれたなぁ。
いやほら、今の領主って、アホのリカルドとか、ご病気のトレーシーとか、腰抜けのゲラーシーとかだもんな。
ルシアは厄介な領主だが、それ以上に残念な性格だからプラマイゼロだ。
領主の質落ちたもんだなー、この数十年で!
「あと、私ね。アンパン、食べたいわぁ」
「「はい。どうぞ」」
譲ったぁあああ!?
デリアとバルバラが、一人のババアに道を譲ったぞ!?
「デ、デデデ、デリアが甘いものを譲って、バルバラが妹案件で折れたよ!? なにこれ、夢? 魔法? 天変地異の前触れ!?」
いや、今の領主の覇気だから。お前も鍛えれば同じことが出来る……可能性は限りなくゼロに近いが、まぁないとは言えない。
「おねーしゃ、あっち、いこ?」
「そうそう☆ デリアちゃんも、向こうのコースに行こうよ~」
「「ぐす……っ! うん……!」」
ちょっと泣いてるよ、あの二人!?
慰めてあげたくなってきたな、なんか!?
「それじゃあ、お先に」
道を譲ったデリアとバルバラにぺこりと可愛らしい礼をして、マーゥルがアンパンの下へとたどり着く。
「よくよく考えたら、スポーツマンシップの対極にあるような行為だよね、これ?」
「じゃあお前、マーゥルにクレーム入れてこい」
「やだよ、怖いもん!」
怖いもんって……こんな領主で、四十二区の未来がちょっと心配だよ、俺は。
マーゥルが上品に口を開け、アンパンを目掛けて小さなジャンプをする。
が、ミス。
アンパン、ぷら~ん。
「あら、結構難しいのねぇ。えい! えい!」
「………………ぷりちぃ」
跳ねるババアに見るジジイ。
踊らにゃ損々、か? なんだこの光景。
「テレサ。一番向こうのコース行ってみろ。メロンパン、さくさくのふわふわで美味いから」
「さくさく? ふぁふぁ?」
一瞬矛盾していそうな相反する二つの擬音に、テレサの顔がぱぁあっと輝く。
確かめてみたい。そんな好奇心に満ちた顔だ。
「おねーしゃ! あっち!」
「お……おぉ、そ、そうだな! 行くぞテレサ!」
「うん!」
バルバラの手を引いて走り出すテレサ。
走ることは怖くないらしく、迷いなく駆けていく。
「デリアちゃ~ん! 私もパン食べた~い! あっち、あっちのパン狙おう☆」
空気を読めるいい女、マーシャ。
アンパンに飛びつくマーゥルと、それを見守るドニスを避けて、残った一つのパンへと向かうように指示を出す。
「マーシャ。そのパンの中身、シュークリームに使ってるカスタードだから……ヤバいぞ?」
「きゃはぁ☆ それは期待が高まるねぇ」
デリアが抱えるタライの中で尾びれをびったんびったん跳ねさせるマーシャ。
テンションが上がってんのは分かるが、デリアがびしょびしょになるからやめてやれ、な?
「……いや、待てよ。濡れた体操服ってのも……」
「ナタリア。何か目隠し出来る布持ってきて」
「では、トレーシー様のさらしを……」
「それはダメだ! ヤシロが狂喜乱舞してしまう!」
そんなこんなをしている間に、マーシャが器用にキャッチ!
続いてテレサも揺れるメロンパンをゲットした。
……まぁ、テレサの方は事前に取りやすくしておいたんだけどな。マーゥルがアンパン狙いだって分かった時点で、テレサにはメロンパンを狙わせるって決めてたし。
「まぁ~、柔らかいのねぇ」
マーゥルも見事にアンパンを口でキャッチし、その柔らかさに感激の表情を浮かべている。
こっちも、ロープを長めにして、それから少しだけ揺れにくく細工して難易度を落としてある。
「それじゃあDD、お先にね」
「はっ!? しまった、うっかり出遅れてしまった!」
完全にマーゥルに見惚れていたドニスが慌ててジャムパンにかぶりつく。
ミス!
ピカッ!
こら、ドニス! かがむな! 太陽光が反射する!
「早くしないと『待て待て~』が出来ないぞ」
「ふんンぬっ!」
忠告した瞬間、パンを一発で咥えやがった。
……なんなの、その急成長。時間制限の中で真の力に目覚めたとでもいうのか? パン食い競走の? しょーもない能力の開花だな、おい。
「ふふふ……ま、待て待て~」
決してマーゥルには聞こえない程度の小声で呟いて、ドニスが嬉しそうに駆けていく。
浜辺でやれ。で、観客のいないところでこっそりやってくれ。
「……特別枠、時間食いそうだな」
「そうですね。少し巻きましょう」
というわけで、四十区のデミリー、二十四区教会のシスターバーバラ、二十三区領主のイベール、三十五区のアゲハチョウ人族シラハらが第二走者として走った。
なんやかんやあって、イベールが勝った。大して盛り上がらないレースだった。
「さぁ、次だ次!」
「もうちょっと興味持ってくれないかね、オオバ君!? 私たちも結構頑張っただろう!?」
「心配すんなよ、デミリー。お前が一番輝いていたぜ☆」
「頭皮を見つめながら言わないでくれるかい!?」
まぁそうだな。
特筆するとすれば……シラハの「おかわりぃ……」が久しぶりに聞けたな。
……あいつ、新しいパンの登場でまた太ったりしないだろうな? どきどき。
その後、シラハの旦那のオルキオや、狩猟ギルド本部のアルヴァロなんかが出場し、皆一様に新しいパンの味と食感にド肝を抜かれていた。
これで、四十二区以外にも新しいパンの噂は広まることだろう。
お広まりなさい、お広まりなさいな。……ふふふ。
そうして迎えた特別枠最終レース。
最後の最後になって、面倒が降りかかってきやがった。
……途中からエステラがこっちに来て、妙~にニコニコしていたから引っかかってはいたんだが……こういうことか。
「ふふふはははは! 勝負だ、オオバヤシロ!」
ゲラーシーが俺を指差して宣戦布告を突きつけてきやがった。それはそれは、なんとも楽しそうなキラッキラした表情で。……はぁ。……ため息も零れるっつぅの、まったく。
あとがき
聞こえる……煩悩を焼き払う除夜の鐘が……
レビューをいただきました!
♪わっしょいヽ('∀')メ('∀')メ('∀')ノわっしょい♪
[2019年 02月 03日 01時 19分]の方
「凄い! 煩悩回なのにまともなレビューだ!」――と、思わせておきながらのラストのオチへの流れがお見事。まるで、そこで過ごすうちにだんだんと四十二区の、陽だまり亭の雰囲気に染まっていってしまったヤシロを想起させるかのような面白い暗喩になっているようで面白みが増し増しでした。
単純にレビューとしての構成も効果的で上手く、それでいて主人公を魅力的に見せ、その上で最後に一押しのキャラがその主人公ではないという変化球によって「凄く魅力的なキャラ……の、上がいるのか!?」と思わせる巧妙な心理トリックが小気味よいレビューでした! ありがとうございました!!
そして、やはり突っ込まざるを得ないでしょう……
(」゜□゜)」< 貧乳には挟まれませんよー!
最大の魅力は「おっぱい」
でもエステラが好き
この矛盾がなんとも小気味よい!
エステラ「……どこが矛盾なのか、さっぱり分からないなぁ」
刃物は正しく使いましょう!
ささ、早く鞘にしまってください。早く。……早くっ!
そんなわけで108件です!
ありがたい限りです!
まさか、
本当に到達出来るとは……もう、思い残すことは…………
(そういえば、デパートのスポブラ売り場で一泊って夢、まだ叶えてないなぁ……)
思い残すことはもうほとんどありませんね!
少しだけ残ってるので、まだまだ元気に頑張りますけども!
というわけで、
パン食い競争、開始です!
えぇ、はい。
すみません。
目的のシーンに、たどり着けませんでした……
お子様って!?
ジジババって!?
そこじゃないでしょう、ヤシロさん!
あなたが見たいのは、
そして我々が見たいのは!
まぁ、
お楽しみは後に取っておくのがセオリーですけども……不穏なこと言い出したオッサンがいますよね!? 最後に! 二十九区の領主!
対決?
やめて、もう!
また文字数食っちゃうから!
……と、思われた皆様。
ご名~答~!
すみません、
長くなり過ぎました。
当初、パン食い競争は長くなりそうなので前後編で~
名探偵コ○ンもそういうことよくやるし、きっと許されるだろう~
前編10000文字、後編12000文字くらいで書いちゃえ~
と、開き直って書いていたらですね、
前編の半分くらいで12000文字……
リカルドとの対決の途中で20000文字を超え……
『パン食い競争・前編』を、前後編に分けちゃいました☆
次回は、リカルドたちとヤシロの対決です☆
……だって、
みんな楽しそうに運動会やってるから……
誰が一話の間で三組の爺×婆のラブロマンスとか書きますか?
だというのに、みんなはしゃいじゃって……
ムム婆さんは待ちの姿勢、
マーゥルは結構攻める、
バーサは恋に恋しちゃってますね……って、バーサンの恋の傾向とか書き分けちゃいましたとも!
恋の行方とか、どーでもいいんですけどね!
次回は次回で、また汗臭そうなお話になります。
ジネットがいない!
ヒロインはいずこ!?
というわけで、
あとがきでジネットのSSを書きます!
だって足りないでしょう!?
成分が! 揺れる成分がっ!
では早速、ジネットSSです、どうぞ~。
――『パン食い競走』特別枠を観戦する選手待機列の選手たち
レジーナ「揺れとるなぁ、人魚はん」
パウラ「もう、どこ見てんのよ、レジーナ!」
レジーナ「淫靡なる二つの『たわわ』や」
パウラ「なにその表現!? 気持ち悪いオッサンでも言わないような気持ち悪さ!」
レジーナ「犬耳店員はんは、キモいオッサンにこんなことよぅ言われとるん?」
パウラ「まぁ……商売柄ね」
レジーナ「ノーパン酒場やしなぁ」
パウラ「穿・い・て・ま・す!」
レジーナ「何色?」
パウラ「今日は水色! ……何言わせんのよぉ! バカバカぁ!」
ジネット「あの、パウラさん。落ち着いてください」
レジーナ「そういえば、店長はんはどないなん?」
ジネット「え? ぱ……ぱんつ、ですか?」
レジーナ「違うがな!? キモいオッサンに絡まれたり……いや、違うけど、パンツの方が興味深いな! 今日のパンツ何色!?」
ノーマ「レジーナ……あんたがその『キモいオッサン』みたいになってるさよ……」
レジーナ「せやかて、興味あらへん? 店長はんのおパンツ」
ロレッタ「甘いですね、レジーナさん! 今日は区民運動会という特別な日ですよ?」
マグダ「……特別な日の店長と言えば、言わずもがな……」
マグダ・ロレッタ「……「スケs……!」」
ジネット「違います! 今日は違いますから!」
マグダ「……気合いが入ってない……だと?」
ジネット「わたしの気合いは、そんなところでだけ発揮されるものじゃありませんもん!」
ロレッタ「まさか店長さん……朝、お弁当とかで忙しかったですから…………穿き忘れて……?」
ジネット「穿いてます! もう、知りません!」
レジーナ「お尻、だけに!」
ジネット「ぷん!」
マグダ「……あ~ぁ、レジーナ」
ロレッタ「怒らせたです」
レジーナ「自分ら、ひっきょーやなぁ。ウチだけのせいやないやん、絶対」
パウラ「レジーナが変な話始めるからでしょ!」
レジーナ「あ~こら店長はん、何があっても教えてくれはらへんやろなぁ」
パウラ「普通教えないから」
レジーナ「せやかて、キツネはんやったら」
ノーマ「教えないさよ、パンツの色なんか!」
レジーナ「色なんか知りとぅないわな。なぁ、キツネはん…………そのおパンツ、いくら?」
ノーマ「レジーナ、あんた……何本まで折っていいんかぃね?」
レジーナ「かなんなぁ。前歯の話かいな?」
ロレッタ「骨ですよ、たぶん!?」
マグダ「……前歯は前歯で、キツイ」
レジーナ「まぁ、前歯やったら……8本までかなぁ」
ロレッタ「ほぼ全部です!?」
マグダ「……ノーマ、手心を」
ノーマ「やらないさよ!? 想像しただけで、こっちの歯茎が疼いてきたさね……」
レジーナ「あ~よかったわぁ、前歯の危機が去ったみたいやな」
パウラ「そんな危機、最初からなかったんだけどね」
レジーナ「見逃してくれたお礼に、キツネはんにえぇこと教えたるわな」
ノーマ「いいこと? なにさね?」
レジーナ「キツネはん、めっちゃはみパンしてるさかい、色聞かんでも分かるねん」
ノーマ「はみパン!?」
レジーナ「可愛らしい桃色パンツやな!」
ノーマ「デカい声で言うんじゃないさよ!」(くいっくいっ)
レジーナ「あぁ、せや。ニワトリは~ん!」
ネフェリー「な~に~?」
レジーナ「今、みんなでパンツの話しとるんやけどなぁ」
ネフェリー「そんな話題の時に呼ばないで!」
レジーナ「後ろのタヌキはん、めっっちゃ聞き耳立てとるさかい、気ぃ付けや」
パーシー「んなぁぁあ!? なななな、なにをい、い、いう、いう、言うのかね、君はぁあああ!?」(冷や汗だらだら……)
ネフェリー「……サイテー」
パーシー「ぬぉぉおおおお! 誤解だぁぁああ!」
レジーナ「よし! これで戦力ダウンや!」
パウラ「そうね。残念ながらあんたんとこのチームメイトなんだけどね」
レジーナ「そういうたら、ミリィちゃんは……」
ノーマ「取り押さえるさよ、この危険人物!」
パウラ「レース始まるまで待機列から追放しよう!」
レジーナ「なんでやのんなぁ~、仲良ぅしようやぁ~、水色&桃色はん」
パウラ・ノーマ「「向こう行ってろー!」」
――こうして放逐されたレジーナが向かう先は……
次回、異世界詐欺師のなんちゃって経営術 無添加、第41話
『レジーナorナタリア、弄られるならどっち!?』乞うご期待!
……はっ!?
これ、ジネットのSSじゃない!?
くそう、こんなに長いあとがきを書いたというのに……
次回は短めにしましょうかねぇ……いや、せめて普通の長さで!
…………Σ(゜д゜ )はっ!?
そもそも普通の人は毎回あとがきとか書かないんだったぁー!?
次回も懲りずによろしくお願い致します。
宮地拓海




