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異世界詐欺師のなんちゃって経営術  作者: 宮地拓海
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362/821

無添加17話 『綺麗』へのアプローチ

 幾ばくかの時が過ぎた。

 幸運にも天候に恵まれ、朝の早い時間だというのに太陽が眩しい光を降り注がせて地味に暑い。


「いつ来ても暑苦しいな、四十一区は……」

「天候はウチのせいじゃねぇよ! ってか、天気はどの区でも同じだろうが!」


 雷鳴のようにがなるリカルド。

 晴れ間に雷を起こすなと言いたい。暑苦しさが増す。


「仲がいいのはよく分かったから、そろそろ本題に入ってくれないかな、君たち」


 呆れ顔のエステラが、どちらにともなく言葉をかける。

 四十一区の広場に、俺たちは立っている。

 俺の両隣にエステラとリカルドが立ち、少し離れた場所に簡易的なテントが設けられている。今回の催しのためにウーマロに作らせた控え室だ。


 そして、俺たちの前には二十名ちょっとの女性が並んでいる。


「とりあえず、参加者はこんなもんか?」

「あぁ。貴様に言われた条件に合致した女ども……ごほん……女性たちで、興味があると申し出た領民たちに集まってもらった」


 四十一区の領民で、オシャレに疎く、そもそも着飾るような金銭的余裕がさほどない、極々普通な『一般人』に分類される成人以上の女性たちだ。

 年齢は十代から四十代と様々で、恋人の有無もそれぞれ。

 日々の暮らしに不満を感じていたり、不満はなくとも満足とまでは言えなかったりで、何かを変えたいと漠然とは考えていつつも何をどうやればいいのか皆目見当が付いていない、そんなメンバーだ。


『なんだかパッとしない今の暮らしをオシャレに変えたい、変わりたい。そんな成人以上の女性大募集!』


 的な広告を四十一区の掲示板に貼り出してもらって、参加希望者を募ったのだ。

 ちなみに、午後からはこの広場でちょっとしたお祭りを開催することになっている。

 その場で、路地裏改革の話を領民に伝える予定だ。なので、今ここにいる女性たちを含め、ほぼすべての領民が集まることになる。


 現在の時刻は朝の八時。あと四時間くらいか……急ぐかな。


「え~、集まってくれてありがとう。後ろに控える領主二人よりも偉いオオバヤシロだ」

「おいコラ」

「さらっと何言ってるのさ……」


 うるさいなぁ。

 時間がないんだからいちいち突っかかってくるなよ。小さいことで。


「本日は『劇的なビフォー・アフターで四十一区をびっくりリフォーム~女性が綺麗な街って、素敵やん~』計画に参加してくれてありがとう。実行委員を代表して礼を述べておく」

「……そんなタイトルだったんだ」

「なんで四十二区の薬剤師みたいな口調なんだよ、最後……」


 ぶつぶつうるさいなぁ。

 器が小さいから細かいところで引っかかるんだぞ?

 もっとどっしり構えてろよ。


「今回、ここにいるみんなには、他の領民たちに『変わるってすごい!』『是非変わりたい!』と思わせるために一肌脱いでもらいたい」


 ――と、言ったら、女性たちが全員胸元をぎゅっと押さえた。

 ……俺のあらぬ噂が蔓延しているようだな…………リカルドめ。監督不行き届きにもほどがあるぞ。責任問題だ、これは。


「脱ぐんじゃなくて、着飾ってもらう予定だから安心しろ」


 アホの領主が治める街のアホの領民に必要以上に分かりやすく説明してやる。まったく、領主がアホなせいで……


 それから少しの間、オシャレをするのが如何に楽しいか、ほんの些細なことでどれほど人は変われるのか、そして、その先にある世界がどれほど色鮮やかに見えるかという演説をしてみせた。


 女性たちは少しの興味を示しつつ、それでもにわかには信じられないという猜疑心にまみれた視線で俺を見つめていた。

 ……まだ大食い大会での悪印象が深く根付いているっぽいな、これは。


「言葉だけでは伝わらないことが多いとは思う。だから、今日は実際に体験し、経験して、実感してもらいたい。そして、その結果に満足がいけば、それを知人や親しい者たちに広めてほしい」


 オシャレは口コミで広がる。

 それが正しいあり方だ。――もっとも、何を流行らせるかは仕掛け人のさじ加減だったりするんだけどな。オシャレって、そういうものじゃん?



パリ「今年の流行色は淡いラベンダーにシルブプレ」

ミラノ「流行の柄はポルカドットにペルファボーレ」

代官山「だってさ」



 みたいな感じで、どこぞの誰かが決めちまうのがオシャレというものだ。

『BU』の流行が情報紙から発信されるならば、外周区の流行は四十一区の、この新しいオシャレスポットから発信してやればいい!

 ――俺の、言うとおりに。…………にやり。


「難しく考えることはない。今日は存分に楽しんで、ついでに綺麗になってくれればそれでいい」


 ざわざわと、女性たちが周りの者と内緒話をし始める。

 戸惑いが声に乗って漏れ出している。


「折角だから、綺麗になった姿を大勢のヤツらに見せつけてやろうぜ」


 ざわめきが大きくなる。

 戸惑いはやがて不安となり、集まった女性は落ち着きをなくす。

 人前に出るという話は聞いていなかったようだ。

 あれぇ? そーだったかなぁ~? リカルドめ、言い忘れたんだな、うっかりさんだなぁ~。……まぁ、リカルドにそのことは話してないけど、俺の思考くらいちょちょっと読んで説明するくらいの容量のよさは欲しいところだよなぁ、領主なんだからさ☆


「あ、あのっ!」


 一人の女性が、泣きそうな顔で声を上げる。

 が、俺と目が合うと視線を逸らし、黙ってしまった。

 そんな怖がらなくても……


「思っていることを言ってくれていい。聞かせてくれ」


 怯える女性を安心させるため、爽やかなイケメンスマイルで優しい声を出す。……と、その女性の顔が一瞬強張った。

 なんだ? ん? 俺の笑顔が邪悪だとでも言いたいのか? あ? ウサギさんリンゴ貪り食うぞ? お?


「ヤシロ。邪悪な顔をしないの。……すまなかったね。気にせず、意見を聞かせてくれるかい?」


 エステラが間に入ったことでその女性は安心したのか、不安げな気持ちを吐露し始めた。


「あの……私たちが何かをしたところで、綺麗になれるなんて……」


 そんな発言を聞き、ぼそぼそと、ざわざわと、なんとなく賛同するような声があちらこちらから漏れる。

 私たちが綺麗になれるはずがない……自信のなさがそんなことを思わせるのだろう。

 でも本心では思っているんじゃないのか?



 もしもなれるなら、綺麗になってみたい――と。



「大丈夫だよ。みんな、それぞれに魅力的な部分があるじゃないか」


 フランクな口調でエステラが語りかけるが、反応はいまいちだ。


「おい、エステラ」


 食いついてこない女子たちを見かねて、リカルドが動き出す。……余計なことをするんだろうな、きっと。


「お前、ちょっとメイクしてドレスでも着てこい」

「はぁ? なんでボクが」

「メイクすりゃ綺麗になれるってのを実際見せてやった方が分かりやすいだろう。なんだったか、オオバも言ってたろ? 見た方が分かりやすいとかなんとかいう――」

「『百聞は一見にしかず』のことかい?」

「――そう、それだ!」


 今回、このようなプレゼンテーション的なお披露目会を企画する意図を、領主二人には話してある。

 その席で『百聞は一見にしかず』という言葉を教えてやったのだが……そんな聞きかじった一部分だけをマネっこされてもな……


「メイクアップしたお前は、まぁ、あれだ、なかなか見れる顔になるからな。あいつらも納得するんじゃねぇかと思ってよ。…………って!? なんっつぅしかめっ面してやがんだ、テメェは!?」


 エステラが、これまでに見せたこともないようなしかめっ面をしている。

「えっ!? そんなとこにもシワ出来るの!?」ってくらいに顔中をしわっしわにして、リカルドからススス……と距離を取る。

 ヘラクレス大苦虫でも噛み潰したような顔だな。いるかどうかは知らないけど、ヘラクレス大苦虫。


「ボ……ボクのこと、そーゆー目で見ないでくれるかな?」

「バッ!? み、見てねぇよ! 今のはそーゆーんじゃなくて、客観的に見て、一面的な事実を述べたまでで……テメェはレモンを百個ほど一気食いでもしたのか!? その酸っぱそうな顔をやめろ!」


 エステラの毛という毛が逆立っている。

 物っ凄く嫌だったようだ。

 褒めたのにあからさまに拒否反応を見せられたリカルドは、ただただ赤っ恥だな。滅多に女性を褒めないくせに、変なことろで張り切るからそういうことになるんだ。


「キモルド、諦めろ」

「リカルドだ!」


 俺の目の前に、こんなにもキモがっている女子がいるもんでな。つい。


「今ここでエステラにメイクをさせても状況は変わらねぇよ」

「なんでだよ? 貴様が言ったんだろうが、見た方が分かりやすいって!」


『百聞は一見にしかず』くらいさっさと覚えろや!


「確かに、見りゃ分かるだろうよ。だが、エステラがメイクをしてそれで美人になったとしても、今は意味がないんだ」


 なぜなら。


「『メイクをすれば綺麗になれる』なんてのは、ここにいる全員がすでに知っていることだからな」


 知ってることを今さらドヤ顔で見せられても、「だからなんだ」という感想しか生まれない。

 それに、美しさを扱う時ってのは繊細な気配りが必要になるんだよ。

 顧客の状況にあわせ、顧客が望むものを、顧客が望むとおりに提供しなければ、顧客は食いついてくれない。

 食べ続けると美人になれる薬があったとして、それが一錠百万円もしたら誰も買わない。

 自分に合った美容法でなければ、「始めてみよう」とは思わせられないのだ。


「そういうわけで、エステラじゃダメなんだ。こいつは元から美人だからな」


 美人がメイクをしてすっごい美人になりました! と、広報した時、一般人の反応は「ふーん……で?」ってなもんだ。鼻とかほじっちゃう勢いだ。

 すっごいお洒落な洋服を、素晴らしいプロポーションの美人モデルが着こなしていたとしても、それを自分も着てみようと思う女子は割と少ない。ハードルが高過ぎるのだ。


 エステラが綺麗になる様を見て、『じゃあ私も!』となれるヤツは、たぶんここには来ていない。

 そういうタイプは、綺麗になれる方法をすでに自分で見つけているに違いないからだ。


「顔のつくりが元からよくて、おまけに領主で金も知識も技術もあるエステラじゃお手本にならねぇんだよ。な?」

「ひゃふっ……い、今、こっち見にゃいでくれるかにゅ!?」


 なんかめっちゃ変な噛み方してる!?

 っていうか、「お前どうした!?」ってくらいに顔真っ赤じゃねぇか!?

 違うぞ? お前を褒めたんじゃなくて、アホのリカルドに分かりやすく説明をだな…………ぇぇえええい! チラチラこっちに視線を寄越すな! リカルドの時との対比で余計、なんか、こう……アレみたいだろうが!


 エステラがポンコツ化したので、俺は参加者の女性たちへと向き直る。

 ――と、なんかめっちゃ「やっぱり美人には弱いのよねぇ、男って。あ~ぁ、美人が羨ましいわぁー」みたいな目で見られていた。

 ……いや、まぁ、そんな冷たい視線で見ないでくれ。


 でもまぁ折角なので、今彼女たちに芽生えた不快感を利用させてもらおう。

 その不快感の正体は「ねたみ」。もっとまろやかに言えば「羨ましさ」だ。

 美人を美しいと思うならば、自分もそうなればいい。なる努力を始めればいい。


「まぁ、確かにエステラは美人ではあるが、だからといってエステラと比べて自分を卑下することは一切ない。いわばこいつはプロだ。他人に自分を美しく見せるのはこいつの仕事の一環だからな」


 まぁ、モデルのように「こんな風に綺麗になりたい!」と、憧れを持たれるという役割は担ってくれそうだが。

 というか、いつぞやロレッタが言ってたっけな。「領主の娘が綺麗で憧れている」って。


「ここにいるのは、綺麗になってみたいけれど、どうすればいいのか分からない。おまけに自信もない。そういう『一般的な』女性たちだろう?」


 ここで『一般的』を強調しておくと、「綺麗になれない自分は劣っているんじゃないか?」という不安が払拭される。「あ、これで普通なんだ」と思えると、チャレンジ精神に火をつけやすい。

『ダメな自分』を『綺麗に』はハードルが高く感じるだろうが、『普通な自分』を『ちょっと素敵に』くらいなら、「やってみてもいいかな」と思わせられる。

 今回、ここにいる女性たちに求めるのはまさにその『ちょっとやってみようかな』なのだ。


「けれど、諸君は自らの意思で一歩を踏み出した。綺麗になってみようと、今、この場所に集まった。その一歩は、行動しなかった他の者たちを大きく引き離したと言ってもいい。行動を起こした勇気。それをここにいるみんなが、全員、しっかりと持っているんだ。そのことを、もっと誇るといい」


 なんとなく起こした行動が称賛される。

 そのことに戸惑いの色が現れるが、それでも、ここへ来ようと思った時にはある種の迷いがあり、そして決断があったはずだ。

 それが間違いでなかったとはっきり言ってもらえたことは、彼女たちの中できっと大きな安心感に繋がったことだろう。


 人は、認められることで強くなれる。勇気を持てる。


 ここから一気に畳みかける。

 今ここにいる女子たちは、「自分なんかが」という『自信のなさ』がぐらつき始めている。

 そのぐらつきをさらに刺激して、俺が彼女たちの『自信のなさ』を一気に吹き飛ばしてやる。


「プロじゃなくても綺麗になれる。その方法を、俺たちは知っている。しかもそれは、とても簡単で――少しの知識と、ちょっとしたコツを掴めば――誰にだって実践可能な技術だ」


 続けることも簡単だし、他人に教えることもたやすい。


「殺風景な部屋に花を一輪挿すだけで、その風景はぐっと鮮やかに生まれ変わる。プロの技術が必要な大改装は無理でも、好きな花を部屋に飾るくらいは誰にだって出来るだろう。しかもその簡単な行為は、『自分の好きな花を選ぶ』というちょっとしたこだわりを持つだけで、他の誰でもない『自分だけの美しさ』を実現してくれる」


 大切なのは、やってみようという意気込みと、最初の一歩を踏み出す勇気だ。


「不器用だって、下手くそだって構わない。やり続けることが大切なんだ。人は絶えず変化する。最初は誰かの真似だったとしても、やがてそれは自分の色に染まる。世界に一つだけの、『自分』という名の芸術。それを生み出せるのは、自分自身だけだ」


 俺の話に聞き入っている女性たち。

 その心の中には、小さいながらも芽生えているはずだ。

「もしかしたら、私も綺麗になれる……かも」そんな微かな希望が。


 その希望をもっと大きく、明確なものにするために、俺は彼女たちに向かって断言する。


「綺麗になる権利は誰にでもある。それは決して浅ましいことではない! なぜなら――大切な誰かのために綺麗になりたいって努力する女の人って…………素敵やん?」

「「「はふぅ~……」」」


 観衆から吐息がもれた。

 無事、心に根付いたようだ、綺麗の素が。

 あとはそれを大切に育んでいける環境を整えてやれば、この街の女性たちは…………綺麗になるためにお金をじゃんじゃん使ってくれるYO・NE☆


「おい、オオバ……テメェ、四十一区で結婚詐欺なんかすんじゃねぇぞ」


 アホのリカルドは本当にアホだなぁ……

 やるわけないだろう、そんなリスクの高いB級詐欺なんか。……復讐率が高いんだから、結婚詐欺は。


「俺は、すべての女性に、今よりちょっと素敵になってほしいだけSA☆」

「くぁあ! 今すぐテメェに『精霊の審判』をかけてぇ!」


 リカルドが震える右腕を押さえてもがいている。

「鎮まれ、俺の右手よっ!」状態だ。……ぷぷっ、中二病め。


「まぁ、そんなわけで。美女予備軍のみなさんにあるものを見てもらいたい」


『美女予備軍』なんて、ともすれば胡散臭くなり過ぎそうな褒め言葉も、同じ立ち位置の同類が複数いる場所ではあざとい冗談となってくれる。

「やだ、もう! お上手ね」くらいの軽口を叩いて聞き流せる、それなりに気分のいいお世辞になってくれる。

 来日したハリウッドスターが『日本の女性はみんな綺麗です。何人か連れて帰りたいよ』なんて、セクハラまがいの発言をしてもお茶目なリップサービスととられるようなものだ。


 俺の言葉に、目の前の女性たちはくすくすと笑いを漏らしている。「な~に言ってんだか」ってなもんだ。だが、これくらいの空気感が程よい。


「ナタリア、頼む」

「かしこまりました」


 俺の合図に、広場の中に作られた控え室からナタリアたちが姿を現す。

 出てきたのは、ナタリアとウクリネス。

 そして、『美容』に興味津々な四十二区の有志たちだ。……つまり、いつものメンバーだ。ジネットにマグダにロレッタにデリアにノーマにイメルダ。


 ベルティーナとレジーナとミリィは今回は不参加だ。

 ベルティーナはみだりに四十二区を離れられないし、レジーナは言わずもがな。ミリィは、カンタルチカの手伝いのために生花ギルドの仕事を休んでくれていたのだが、その穴埋めがあるようだった。今度ちゃんと埋め合わせをしないとな。


「これから、みなさんと同じ四十一区の一般的な女子に、ちょっと変身してもらおうと思う」


 そう言って合図を出すと、控え室からバルバラが現れた。……ウクリネスに連行されてきた、と言った方が的確かもしれない。

 バルバラについて来ていたテレサは、ジネットがしっかりと面倒を見てくれている。


「さて、みなさん。この女性……正直、どうだろう? 美人だと思うか?」


 問いかけるも、女性たちはうんともすんとも言わず、ただ近場の人間と視線を交わすだけだった。


「う、うっせーな! いちいち聞かなくても、アーシなんか美人なわけねぇだろう!?」


 俺に牙を剥くバルバラ。

 なんだよ。お前が自分で言い出したことなんだぞ? ポップコーンを食いに来る約束をすっぽかしちまって心苦しいから「なんだって言うことを聞く」って。

 だから、お前は大人しく見世物になっていろ。


「まぁ、このように。いまいちパッとしないどこにでもいそうな彼女なわけだが……」

「うっせぇつってんだろ!?」


 バルバラも、やっぱ一応は女子なんだな。容姿をいじられるとムカつくくらいには。

 だったら前髪くらい切れよ……ったく。


 バルバラは、目が隠れるくらいに前髪が長く、その髪も一切手入れされていないせいでぼさぼさのもはもはだ。

 当然スキンケアもしてないし、唇も荒れ放題、小鼻には――何を触った手で鼻を触ったのか――黒ずんだ汚れがついている。

 服もまぁ、かろうじて着ていられる程度のボロだ。到底お洒落とはいえない。


 そんなバルバラを見た女性たちはみな思うだろう。「私の方が勝ってる」と。

 そりゃそうだ。バルバラは生きることに精一杯の極貧生活を余儀なくされていたのだから。普通の生活を送っていた女子よりもお洒落度は低い。


 だからこそ、活きてくる!


「じゃあ、今のこいつの顔、姿、服装、纏う雰囲気をよぉ~っく、覚えておいてくれ」


 そうもったいぶって、ウクリネスたちに合図を送る。

 ニコニコ顔のウクリネスを筆頭に、ナタリアやネフェリー、パウラ、ノーマ、イメルダが控え室へと入っていく。――バルバラを拉致して。


 少し待ち時間が出来るので、その間にベッコにバルバラ(ビフォー)の絵を描いてもらう。バルバラ(アフター)と比較するためだ。

 まるで生き写しのようなその絵に、観衆やリカルドが感嘆の声を漏らす。

 ふふん。すごいだろう。やらねーぞ。



 そんなこんなで二十分ほど待ち、いよいよ変身したバルバラが姿を現す。




 ウクリネスに背を押され、控え室からおそるおそる出てきたバルバラは、ふわふわと風に揺れるスカートを押さえて、どこに力を入れていいのか分からないといった様子で、俯いてゆっくりとこちらへ歩いてくる。


「な、なぁ……アーシ、なんか変じゃないか? こんな、ぴらぴらした服……」


 と、羞恥に頬を染め再登場したバルバラは、俺の睨んだとおり息を呑むような美人に変貌していた。

 こいつがいまいちパッとしないように見えていたのは、あの鬱陶しい前髪と汚れ、それとしかめっ面のせいだった。

 それらを整えて、ほんのりとメイクを施し、素材を引き立たせるファッションで全身をコーディネートしてやると、見違えるような美人になった。

 まぁ、想像を超えてくることはなかったが、今後オシャレに慣れてもっとナチュラルな笑顔でも作れるようになれば、もっと輝きを増すだろう。

 とはいえ、まずまずの出来だ。十分合格点を与えられる。その証拠に、バルバラのビフォーを微妙な顔つきで見ていた観衆が、思わず「綺麗……」なんて呟きを漏らしてしまっているからな。


「おねーしゃん、どうしたの?」

「バルバラさん、綺麗に変身されたんですよ」

「おねーしゃん、きれぃ?」

「はい。とっても」


 ジネットに説明してもらい、テレサが嬉しそうに頬を緩める。

 早く見せてやりたいもんだ。綺麗になった姉の顔を。


 それで、ベッコの描いた絵の隣に立ってもらったりして、「こんな短時間で綺麗は作れる!」ということをこれでもかと見せつける。

 観衆の目が、女性たちの瞳が、俄然意欲に燃え始める。


「それじゃあ、そろそろ体験してみるか? 『綺麗への第一歩』を」

「「「はい!」」」


 黄色くはないが、希望を見据えた活きのいい声が発せられる。

 少し先の未来を想像してきゃっきゃとはしゃぐ女性たち。

 年齢によって反応は若干異なるものの、誰もが一様に期待感を表情ににじませていた。






 二十数名に及ぶ女性たちを引き連れ、大通りを後にする。

 偶然空いていた店舗をひとつ借りて、そこでデリアによるシェイプアップ体操を実践してもらうのだ。

 目指すは、程よい疲れと気持ちのいい汗。

 プログラムは俺が考えてデリアに伝授した。

 いや、さすがというか、デリアの飲み込みの早いこと。体を動かすことに関してはすごいの一言に尽きるな。……ウェイトレスの心得はどんなに説明しても理解してくれないのにな。


「というわけで、このデリアが綺麗なプロポーションを作るためのエクササイズを教えてくれる。無理はしなくていいから、出来る範囲でマネをしてみてくれ」


 なんて説明をしている間も、女性たちはデリアの出るとこ「バイン!」の引っ込むところ「きゅっ!」なパーフェクトボディに釘付けだった。

 デリアを講師にすることで――デリアがプロポーションをよくするエクササイズを教えてくれる……ということは、あのプロポーションになれる! ――という勘違いを引き起こしてくれる。

 デリアのスタイルがいいのは元からで、エクササイズは一切関係ないのだが、そんなこと四十一区の女性たちは知る由もない。

 勝手に、「エクササイズで綺麗になれる!」と思い込んでくれるのだ。


 その思い込みこそが、『持続する力』になる。

 みんな、信じる心って大切DA・ZE☆




 二十分ほどでエクササイズは終了した。

 参加者はみんな床の上にへたり込んでいる。平然と立っているのはデリアだけだ。

 後ろの方でこっそり参加していた四十二区の面々もへとへとになって床に転がっている。

 かくいう俺は、……見ているだけで疲れた。


 普段の仕事では使わない筋肉を使い、疲労困憊の参加者たち。

 けれど、その疲労感が「私、頑張った!」という満足感を生み、その満足感が「これで綺麗になれるかも!」という希望を呼んでくれる。

 人間の心は実に単純だ。

 誰かに肯定してもらえるだけで満たされる。そしてこの次もまた頑張れる。


「よぉし、みんなよく頑張ったな! なんかちょっと綺麗になったんじゃないか?」


 そんなデリアの言葉に、お互いの顔を見合わせる参加者たち。

 周りにいるのは、初めての経験でほどよく疲れ、相応の満足感を味わった仲間たち。

 誰の表情にも不安感はなく、認めてもらえた安心感と、これからもっと綺麗になれるかもしれないという期待感に満ち溢れた表情をしている。

 その顔はきっと、ただ漫然と繰り返される毎日を過ごしていただけの時とは比べ物にならないくらいに明るくなっていることだろう。


 だから、きっとこう見えるはずだ。

「あ、この人、さっきより綺麗になった」と。


 そして、続けてこう思うわけだ。

「それじゃあ、きっと私も……」と。


 ただの期待が自信に変わる。

 その分岐点に立っている女性たち。

 そんな彼女たちに、とても甘美な言葉を送る。


「じゃあ、この後はお待ちかねの、ランチタイムだ」


 頑張った自分にご褒美。

 程よく疲れた体は、きっと料理を一層美味しくしてくれることだろう。






 そうして訪れたのが、ご存じ『サワーブ』。オシナの店だ。

 運動したり、おしゃべりしたりして、時間は頃合いの正午前。太陽は間もなく真上へと到達する。


 久しぶりに訪れたオシナの店は、以前と変わらず路地の奥にひっそりとたたずみ、店先に飾られた樹木がいい意味で独特な雰囲気を醸し出している。

 紹介されたのでなければまず入らない、そんな店構えだが、これが裏を返せば『知る人ぞ知る』に変貌するわけだ。


 ドアを開けると、自然のままの姿をうまく加工した天然木のカウンターやインテリアが目を引く。

 バナナに似た植物の葉が天井付近を彩り、店の奥からは涼しい風が吹き抜けていく。

 ドアを開けると風が通るんだろうな。それを狙って設計してあるなら、その設計士はなかなか大したものだ。微風が出迎えてくれる店ってのは、こういうテイストの店であれば十分に『アリ』だ。


「わぁ……」


 と、参加者の女性たちがアジアンテイストの店内を物珍しそうに眺めている。

 こういう雰囲気の建物はちょっと他では見たことがないから、さぞ珍しかろう。

 そして、女性たちを店内へ誘導すると、店の奥、大きく開け放たれた開口の向こうに設けられた木漏れ日降り注ぐテラス席に、オシャレに変身したバルバラがエステラと一緒にお茶を嗜んでいる様が目に飛び込んでくる。

 一枚の、大きな絵画を思わせるようなその光景は、光と風の調和が目と肌に心地よく女性たちの心をくすぐってくれたようだ。

 すなわち――


 やだっ、なんかすっごいオシャレ!


 そんなときめきの視線がテラスの席へと集まっていく。


「なかなか、趣味はよろしいですわね」


 三百六十度、どこからどう見ても貴族のお嬢様であるイメルダが店内の雰囲気を褒めてみせると、それだけで箔が付く。この参加者たちにとっては。

 自分たちが知らなかった世界。それが素晴らしいものだと、自分たちよりも目上の者が認める。それはある種の保証になり得る。

 うっすい味付けの汁物を、料理人が「これが美味い」と言うだけで、「お上品なお味」に早変わりする、あの心理だ。


「アラアラ、いらっしゃいなのネェ」


 そして、この店のオーナー、オシナが客たちの前に姿を現す。

 実は、俺が言ってわざわざ最初隠れていてもらったのだ。視線があちらこちらに飛ばないように。

 まずは店内を見てもらう。そして、オシナだ。


「キレーな人……」


 誰かがぽつりと漏らす。

 今日、ここまで散々美意識に触れてきた女性たちは、これまでよりもずっと『綺麗』を身近に感じているようだ。

 他者を綺麗と認めることで、そこから何かを学ぼうという心がそっと、確実に芽生えた。そういうことだろう。


「こんな団体さんは初めてなのネェ」


 店を埋め尽くすほどの団体客に、オシナがむにゅんと唇を緩める。嬉しそうだ。


「今日は、ミ~ンナにスッペシャ~ルなお料理を用意してあるのネェ。楽しんでいってネェ」


 今回の企画に先立ち、オシナとは事前に打ち合わせておいた。

 これから出てくる料理も、俺とオシナとジネットとエステラで入念な打ち合わせをして決めてある。

 ジネットが料理人としての意見を、エステラが貴族の視点からの意見を言い、オシナが自分の店に合うようにアレンジして、俺が『いかにも女子が食いついてくれそうな一工夫』を提唱する。


「オシナのお店では、美味し~ぃ野菜をた~くさん食べてほしいのネェ」


 オシナの店には肉料理はほとんどない。

 メニューのほとんどが野菜と果物で構成されている。

 オシナがあまり肉を好んでいないというのがその最たる理由だ。


 実は、カンタルチカでバイトしている時、ソーセージの肉々しい匂いにちょっと胸が焼けていたのだとか。

 この店に戻ってほしいという旨を説明した時に「よかったネェ。あのお店、とっても楽しいけど騒音と匂いがちょっとつらかったのネェ」と苦笑をこぼしていた。肉の香りと騒がしさがダメなら、カンタルチカでは働けないだろうに。


 やはり、オシナにはこの店が一番似合っている。


「ハ~ィ、お待たせ様なのネェ~」


 ジネットとマグダとロレッタが手伝って、各テーブルに色とりどりの野菜が運ばれてくる。


 まずは、ルッコラをメインとしたサラダ。梅と柚子を使った爽やかな酸味が美味しいドレッシングを使用してある。

 四角くカットしたトマトと、塩気の強いチーズを混ぜることで色味と風味を味わい深いものにしている。


 厨房傍のカウンターにもたれ店内の様子を観察する俺の元へ、オシナがふら~りとやって来る。

 女性客の顔を眺め、十分な手応えを感じている様子だ。


「生ハムとか入れると美味いんだぞ」

「お肉好きな人には、そういうのも必要かもネェ」


 オシナ的にも、このサラダは気に入ったようで、今後いろいろ弄ってみたいと言っていた。

 ドレッシングなんかを試行錯誤してみたいそうだ。


「陽だまり亭の店長さんから、い~っぱいアイデアもらったのネェ。あの娘、お料理の天才ネェ」


 オシナはジネットをとても高く評価している。

 その高評価の原因が、今運ばれてきたポタージュスープだ。

 マグダたちの手によって、ジネット自慢のカボチャのポタージュが運ばれてくる。

 甘くて温かいスープに、女性たちが思わず頬を緩めている。


 その様を見て、満足そうにオシナは厨房へと戻っていった。

 メイン料理の準備へと向かったのだ。


「上々の感触だね」


 テラスでお茶飲みモデルをしていたエステラだったが、食事が始まると同時にお役御免となり、俺たち裏方のところへと戻ってきていた。

 さすがというか、見られることに関して抵抗はないようだ。

 一方のバルバラはというと……


「……は…………はずかしいっ!」


 いちいち注目されるのが耐えられないようで、OKが出るや否や厨房へと逃げ込んでいた。

 現在もカウンターの陰に身を隠して丸まっている。


「綺麗だぞ、バルバラ」

「うゅっ、うっさい! なんでアーシがこんなこと…………うぅぅう、約束を破ったのはアーシだから……悪いのはアーシか…………くそぉぉおお!」


 なんだか身悶えていた。

 こいつ、面白いな。


「いじめないの」


 ぽかりと、エステラの裏拳が俺のこめかみを叩く。

 だって、面白いんだぞ。なんか「うにゅうにゅ」言ってるし。


「ヤシロさん。そろそろメインのお料理を出しますね」

「おう。頼む」


 ジネットが活き活きとした顔で厨房へ入っていく。

 どこにいても厨房が好きなヤツだ。


 野菜のフルコース、なんて言うと野菜ばかりでは飽きてしまうと思われがちだが、料理の仕方によって野菜はきちんとメインを張れる存在感を発揮してくれる。

 見た目に美しく、味も申し分なく、何より食べることに喜びを見出せるもの。

 食事の時間が幸福となり満足感を十二分に与えてくれるもの。


 そんなものを目指して俺が提案した料理が、これだ。


「お待たせしました。野菜のオイルフォンデュです」


 小さな陶器の器に軽やかな香りを放つオリーブオイルが入り、五徳のような台座の上で熱を放っている。

 陶器の下には以前ベッコに教えてやった『火力の強いろうそく』が置いてあり、オリーブオイルを熱している。


 鉄の串に一口サイズにカットした野菜を刺して、数秒オリーブオイルの中へとくぐらせる。

 それだけで、野菜の色が一層鮮やかになり、食卓が華やいで見えるようになる。

 さらに、熱を通すことで野菜は甘みを増す。

 素揚げなので気になるカロリーも抑えられる。


 そして、数種類用意したディップソースが飽きの来ない食事を満喫させてくれる。


 用意したのは豆板醤を使用したピリ辛の味噌ダレ、ネフェリーのとこの新鮮な卵とオリーブオイルで作ったなんちゃってマヨネーズに刻みわさびを混ぜ込んだわさびマヨ、カレー風味のソースに、柚子胡椒、そしてゴマダレを用意した。


 バーニャカウダーにしようかとも思ったのだが、「一度にいろいろ味わえる」という楽しみを追加することで女性たちが食いついてくれるのではないかとオイルフォンデュにしてみたのだ。どうやら目論見はまんまと成功したようだな。


「ジネット。そろそろ、野菜の情報を教えてやってくれ」

「はい」


 ジネットは料理の話をする時は本当に楽しそうな顔をする。

 だから、料理の説明を頼んでおいた。

 オシナはそういうのが苦手らしいので……まぁ、ジネットとは違った意味でぽや~んとしたヤツだからな……一番知識のあるジネットにやってもらおうというわけだ。


 別の目論見も、あるんだけどな……にやり。


「お野菜はとても体によく、バランスよく、たくさん食べることで健康にもなれるんです。そればかりか、たくさん食べてもお肉を食べるよりもカロリーが低く、太りにくいんです」


 ジネットの説明を、「ほぉ~」とか「へぇ~」なんて感心しながら聞き入る女性たち。

 目の前には大量の野菜が置かれているが、それを全部食べたところで大したカロリーになりはしない。

 食べたという満足感は存分に味わいながらも、翌日の「食べ過ぎた……」という後悔は少ない。そんな夢のような料理なのだ、今ここに並んでいるのは。


「もっとも、どんなお料理も食べ過ぎはダメですけどね」


 そんな冗談を言って、参加者と一緒に笑うジネット。

 参加者の女性たちも随分と表情が柔らかくなっている。


「トマトに含まれるリコピンには、強い抗酸化作用があり血液をさらさらにしてくれるんです。そればかりか、乾燥肌やシワといったお肌のトラブルから守ってくれるんです。さらに、お肌の肌理も細かくなるんです」


 俺が教えてやった蘊蓄を参加者の前で披露するジネット。

 リコピンは老化の原因となる活性酸素を除去する力が、ビタミンEの百倍あると言われている。また真皮層を傷付ける紫外線から肌を守り、コラーゲンの減少を抑えてくれることから、シワの出来にくいぷるぷる肌理細やかお肌を維持してくれるのだ。


 そういう知識を身に付けることで「野菜を食べると綺麗になれる」という漠然とした認識が広がってくれる。

 漠然とした知識でいい。

 その「なんとなくいいかも」くらいの感情が、知的好奇心をくすぐり、「知る」という快感と共に頑張ろうとする意欲を女性たちに与えてくれる。


「それから、お味噌や醤油の原料でもある大豆なのですが」


 ここで、俺が「これだけは絶対に言ってくれ」と強くお願いしておいた蘊蓄の披露が始まる。

「そういう需要は多いから」と納得させるのに苦労したが――


「その大豆に含まれるイソフラボンという成分は……あの……胸を大きくすると言われているんです」

「「「ごくり……」」」


 ――やっぱり、効果絶大!


 デリアのプロポーションと同じく、ジネットの爆乳とイソフラボンの間には因果関係は存在しない。

 だが、ここにいる女性たちにはその事実は知られていない。

 だから、単純に信じてしまうのだ。


「イソフラボンで……あんな爆乳に!?」と――


 女性たちの視線がとある一点に釘付けになっている。

 うんうん。分かるぞ、その気持ち。俺もしょっちゅう釘付けになってるもんな。


 さて、こうしてちょっとした知識と、チョットした希望を参加者に与えたところで、とっておきのサプライズを提供する。

 この企画の成功を大きく左右する……いや、成功を決定づけるサプライズを。


「お~い、入ってきてくれ」


 俺の呼びかけに、厨房からオシナ、そしてメドラとハビエルが出てくる。

 突然現れたデカい二人に、女性たちは言葉をなくす。……まぁ、そう怖がるな。


「ご存じ、狩猟ギルドのギルド長メドラと、もう一つの大ギルド木こりギルドのギルド長ハビエルだ。特別ゲストとして忙しい中来てもらったんだ」


 四十一区なので、メドラの知名度は言うまでもない。が、ハビエルの方はやはりメドラより落ちるだろうと気を利かせてのこの紹介だ。

 女性たちが戸惑いながらも拍手を送る。


「実は、メドラはこの店の常連なんだ」


 という俺の情報に、女性客から驚きの声が上がる。

 こんな肉っ気のない料理を出す店に、筋肉の代名詞とも言えるメドラが足しげく通っている。それは驚愕の事実だろう。


「アタシはここの料理が好きでね。外食はここ以外ではほとんどとらない。アタシの体には、この店の料理が一番合うのさ」


 四十一区を支えている大黒柱の知られざる一面に、女性たちは息を漏らすばかりだった。


「オールブルーム最強と誉れ高いハビエルとメドラだが、そのメドラは野菜のパワーでその強さを保っているんだ。ハビエルと比べても、まるで遜色ないだろう?」


 言って、二人の体を指し示す。

 ハビエルには悪いが、比較対象になってもらう。肉を食わなくてもこれだけの体が維持出来る――もっと言えば、野菜は肉にも負けない栄養素の塊なんだ、ということを知ってもらうためのサンプルだ。

 もっとも、筋肉をつけたいなら肉を食うことをお勧めするが、ここの女子たちはハビエルのようなムキムキになりたいわけではないので「野菜はすごい!」ということだけ伝わればそれでいい。


「それに、二人は近しい年齢なんだが……メドラの方が若々しくて肌も綺麗だろう?」


 ハビエルには事前に企画内容を伝えてある。

 比較して少し下げることになるが、そこは「イメルダがめっちゃ好きそうなオシャレな店を教える」というエサで了承を得てある。

 それに、ハビエルはあれでなかなか紳士だから、女性を立てることに関して不平を言ったりはしない。……その相手がたとえメドラでもだ。

 そう、それはジェントルマンの証。

 ……だから、メドラが「きゃっ! ダーリンに綺麗って言われちゃった☆ これってプロポーズ!?」とか宣っているのは見ない聞かない感知しない。


「さらに驚くことに――」


 と、ここで比較対象になってもらう『二人』に、「悪いな」と視線を送っておく。

 ハビエルはもちろん、メドラも「気にするな」という視線をくれた。なので、本日一番の仰天的事実を投下する。



「この店のオーナー、オシナはメドラと同じ歳だ」

「「「「えぇぇええええええええええええええええええ!?」」」」


 そうだろそうだろ、びっくりするだろう。

 どう見ても二十歳くらい若いんだもんな、オシナ。


 そして、イソフラボンと同様、今この場にいる女性たちはこう思うわけだ。



「この店に通えば、何年経ってもあの若さを保てるかもしれない!」と――



 デザートのニンジンパンケーキを食べる頃には、参加者の目は輝かしい未来をぎらついた目で見据えていた。

「私も、絶対きれいになってやる!」ってな。







あとがき




動き出すヤシロ!

さくっと時間は過ぎて、四十一区です!

あれとかこれとか、微妙に気になる事柄が残りつつの街改革スタートです!


問題は山積みですが、なにはなくとも女性を綺麗にしたい。

だって、


綺麗な女性って、素敵やん?



というわけで、綺麗なお姉さんが大好きな、宮地です!


ヤシロがオシナに言っていたご褒美サワーブって、こういうことだったんですね。

きっと、オシナのお店は今後、綺麗になりたい女子たちで賑わうことでしょう。


というか、こんなお店が近所にあったら私通いますのに!

はんなり大人女子の手料理が食べられるお店……いいっ!


いやぁ、私、お酒が飲めませんので美人女将の小料理屋とか行きにくいんですよねぇ。

日本酒が似合う男になりたいっ!


でも、オシナのお店ではお酒はありますが主流ではなく、

あくまでお野菜をたくさん食べられるお店なので……私でも通えます!

美人オシナの無防備な(実は計算ずく)谷間チラを堪能出来ます! いや、します!


あ~ぁ。

オシナにエプロンをプレゼントしたら、うっかり下に服着るの忘れて身に着けてくれないかなぁ~。


もしくは、

お家にご招待する時に「手ぶらで来ていいよ~」って言ったら、『手ブラ』で来てくれたりしないかなぁ~!


実年齢なんか気にしないのです!

大切なのはおっp……心ですもの!


というわけで、綺麗な人が増えると幸せな気分になりますよねぇ。

綺麗って、顔だけの話じゃないんですよ。

お洒落だったり、心遣いだったり、言葉遣いだったり、

綺麗って、いろんなところから感じられるんですよね。

雰囲気イケメンみたいなもんですかね。なんとなくカッコよく見えちゃう的な。


女性の美しさって、顔とかメイクとかそーゆーのだけじゃないんですよ!

分かってるの、リカルド!?

筋肉ばっかり鍛えてる場合じゃないんだよ!

もっとよく考えて!

女性の美しさって、つまりはおっp……「綺麗になりたい」ってピュアな心の輝きなんだよ!


ふぅ、言ってやりました。(これで高感度もうなぎ上り、いや、谷間挟まりでしょう!)(いや、だって、うなぎが上っても何も楽しくないですし。でも谷間に挟まったら物凄く楽しいですし!!)


美を磨く秋


男性も女性も、謳歌してみてはいかがでしょうか!



私も自分磨きしております。


ここ最近もジムに通うようになり、

ジムの前で「いつかは入会して体鍛えてやる!」と意気込んで帰ってくる日々。

週三くらいでジムに行っています、前まで。


まずは心意気が大切と言いますからね。


とある筋から入手した、

モテる男の条件というものによれば、


1、イケメン

2、爽やか

3、聞き上手


がトップに来ていました。

もちろん、そこが知らべたもので、もっと他の条件が~という意見はあるでしょうが、

この三つは大きく外れることはないんじゃないでしょうか。


他にも、

・謙虚(威張らない)

・気遣いが出来る(話しかけやすいオーラ)

・下心がない(微エロトークは可)

・礼儀正しい(誰に対しても)

・無理のないオシャレ(ある程度の金銭的余裕は必要)

などがあったそうです。


トップ3は、一朝一夕で身に付けられるものではありませんが、

その他の条件なら、努力次第でなんとかなりそうな気がしませんか?


例えば……


宮地「はじめまして、宮地です! 私は、おっぱいがあればそれで幸せです!(←謙虚)

それにしても、おっぱい重そうですね、持ちましょうか?(←気遣い)

わぁ、やわらかぁ~い。この柔らかさは、芸術の域に達していますね!(←芸術としてのおっぱいはエロスではなく美、すなわち下心に非ず)

大切に、両手でしっかり支えますからね。(←礼儀正しい)

でも、左手は添えるだけ☆(←どことなくオシャレ感)」


これくらいの努力はして然るべきなのですよ、男子諸君!

ん?

おっぱい発言についてですか?


大丈夫です!

重そうなので持ってあげたい! それは、まさしくレディーファーストの精神!

優しさなので下心ではない、決してない!

あとたぶん、おっぱいくらいは微エロの範疇! いや、ウォンチュウ!


m9っ≧▽゜)ウォンチュ☆


さぁ、皆様も明日からこれを実践してモテ男になってみ・ちゃ・い・な・YO☆

(ただし、すべて自己責任でお願いします)




というわけで、

本編ではオシナをはじめとした四十一区の女性たちをもっともっと幸せにして

裸エプロンを流行らせようという計画が進み…………もとい、

女性たちにもっと美しくなってもらおうという計画が動き出しました。


と、同時に、

裸エプロンのことばかり考えていたせいか風邪を引きました。

感想返し短くてごめんなさい。

あと、あとがきが勢い任せで申し訳ありませんでした。

この場をお借りしまして、裸エプロンで謝罪させていただきます。


次回もよろしくお願いいたします。

宮地拓海

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あかん、オシナが某丸ピンクのマホ口アにしか見えなくなってきた...
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