外伝 北大陸の姫 その2
自由とはなんであろうか?一般的に自由は正義か悪かと聞かれれば多くのものが正義と答えるであろう。
しかし、自由とはある側面として自分勝手という面を持っている。単純なものではないのだ。
アナスタシアという姫バチがいた。王族種としての特徴が薄いこの王国では珍しく
彼女は王族の兄弟姉妹の中でも一際強く王族種としての特徴を受けており、
そのためか彼女は一般種に優しかった家族とは違い一匹だけ気高く孤高だった。
成虫になったその美しさはこの国随一と謳われあらゆる蜂を魅了した。
彼女はその美しさに群がる家族以外の全てのものを相手にすらしなかった。
彼女の住まう王国は北にある吹雪舞う大陸に存在する。長い年月の中彼女たちの種族は寒さと氷に適応していた。
長い年月をかけて巣は巨大化していった。巣がわかれて増えていくのではなく巨大化していたのには理由があったのだろう。
寒さに耐えるためであったり、非友好的な他の蜂に攻め込まれても勝てるようになど。
その巣の大きさは他の蜂と比べるには使う単位を計算しなおす必要があるくらいだ。
大きすぎた巣に住まう彼女は巣の外に出たことは無かった。
他の蜂に対しては非友好的な種族である国に生まれた彼女は外の世界を知らなかった。知る必要が無かった。
そうこの時までは。
行き過ぎた自由は暴走を起こす。クーデターが発生したのだ。通常、女王の強力な支配下にある蜂族にクーデターは起こらない。
しかし、この王国は下々に自由を与えすぎた。その結果制御が取れなくなっていたのだ。
暴走が暴走を生み、強制的な平等精神が間もなく中央部の王族種が住まう王宮まで陥落しようとしていた。
今迄支配していたものの復讐にアナスタシアは絶望していた。
「どうしてよっ、お父様、お母様、私たちが何をしたっていうのっ!?
散々奴らによくしてやってきたじゃない。あの恩知らず共がっ!!」
「幸せはそれ以上の幸せを望む麻薬のようなもの。我らが愚かだったのかもしれん。他の蜂族が正しかったのか…」
「その怒りを振りかざして事態を収束できるのならそうしなさい。しかしそうではないでしょう。」
「そんなことやってみないと―――――
「やるまでもない、というよりもやるにはもう遅すぎる。……我らは一般種との敷居が低すぎた。
それは血縁的な意味でも、個体戦力的な意味でもだ。
…お前は特別だが一匹で立ち向かうにはこの王国は大きくなりすぎた。もはや遅い。我らはここで果てる。」
そんな……っお姉様も説得してくださいっ!!」
「お前は逃げろアンナ。普段の尊大な態度とお前の美しさだ……。どうなるかは言う必要はないであろう。」
「ではお姉様は………?」
「お前が逃げる為には足止めが必要だろう。お父様とお母様だけでは些か心許ない。」
「嫌っ、お姉様も一緒にっ」
「くどいっ!!もう時間が無いのだ。行けと言った。二度も言わせるなっ!!
………周囲に冷たいといわれようが
私はお前が優しい子だというのはわかっている。だからお前はこの王国の狂気には巻き込みたくないんだ。
早く行くんだ。アンナ、愛してるぞ。」
家族に見送られ憎悪の欠片は国を離脱する。
辛くもアナスタシアは国を離脱できたが、その後他の王国の反乱を鎮圧するという名目で他種族の蜂が攻め入り、
この国の蜂は完全に全滅する。
一方離脱したアナスタシアは略称であるアンナと名を替え極東の地に逃げ延びその国の王族種の蜂と仔を為すこととなり、
その為か、その一族は代々、氷属性に目覚めることは無かったものの潜在的に強い氷耐性を持ち、
後のそのために家出をして北に向かった他国産のメス好きな王子蜂が極寒を耐え抜き、
氷結地獄の一角の戦力となることになるが、それはまた別の話。




