第32話 第2幕の終わり 血の誓い
「わたくし、また死ぬのですね。お母様御免なさい。仇、討てませんでしたわ。」
走馬灯の中でベルの脳裏にメリッサの姿が淡く浮かび、そして消える。
次に入れ替わるように何故か自分を涙目で探す妹の姿が浮かぶ。
残された頭部さえも風に吹かれる灰のように飛んでいく中ベルは小さくつぶやく
最後にスセリには伝えておきたかったですわ。きっとパーティーすっぽかして怒っていますわね。
だから―――――――――。
ごめんなさいね
遥か遠い土地へ優しい風が残酷な現実を乗せて言霊を運ぶ。
「お姉…ちゃん?」
スセリの前に花びらが一枚散った。
あれから………
あれから何十年も待った。一向に姉が帰ってくる気配はない。
あの日の姉妹の血のつながりが生んだであろう直感はきっと間違いではないのだろう。
妹たちも成虫になり仔を産んで育てているものもいる。
最近北の国からやってきた御嬢さんの蜂が妹の娘の所の一人息子と仲が良い。
大叔母様と呼ばれる日も近いのかもしれない。それはそれで憂鬱だ。
一年ほどたったころから妹たちは皆お姉の事には触れなくなった。
彼女たちも理解している。もう、お姉が帰ってこないって。
だけど私は決してあきらめない。
帰ってきたときには思いっきり怒ってやるから覚悟してなさい。
私のパーティーにいつまで遅刻するつもりっっ!!って。
……だから、だから戻ってきなさいよ。戻って、お願いだから戻ってきてください。お姉ちゃん…。