第12話 箱入り娘あるいはお荷物
むーんらいとでんせつ
サンコウチョウ、漢字で三光鳥と書く天からの3種の光を願う鳥は月の光を乞う。三光とはすなわち星、月、日。
偽りの昼月からは偽りの月光が黒き巨鳥に降り注ぐ。
月の光を浴びたサンコウチョウの躰からは先程まであった傷が消えていく。
まるで時間が巻き戻されていくかのように。そして光を注ぎ終わった月は空に溶け込むように消えていった。
「死ィィィッ!!!」
だがメリッサのすることは何も変わらない。ただ怨敵を殺すだけだ。殺しつくすだけだ。
己の気が済むまで、目の前の凶鳥の息の根を完膚なきまでに止めるまで。
刺殺、裂殺、削殺、潰殺、毒殺、締殺、圧殺、自身に可能であるありとあらゆる殺害手段で幾度となくサンコウチョウを瀕死にまで追い込む。
しかしそのたびに凶鳥は月に鳴き偽りの月光がその身を癒す。
その繰り返しのたびに兵隊蜂の数は減り、メリッサの傷は増えていく。
恐らく後一手、デュカリスの攻撃が加わればサンコウチョウを殺しつくせたかもしれない。
しかしその状況下の中でやはりデュカリスは動けず何もできなかった。
デュカリスが幾度その繰り返しを見た時であろう、サンコウチョウは今までと明らかに違う様子でメリッサたちを睨みつけていた。
…嫌な予感がしますわ。
デュカリスは何かよくわからないがサンコウチョウがその程度でくたばる相手ではないと思っていた。
かつてのオス蜂であった自分を殺したことによるトラウマでの過大評価であるとは思うのだがそれだけでない何かを感じていた。
そしてその杞憂は現実のものとなる。
鳥は懇願する
「ヒィィィィッッ!!!!!」
昼だからと言って回復量は落ちません。