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最弱な革命は満月の晩に

僕の本気と彼女の本気


と合体しました。



『一体どうなっているんだ!?』


 とどまることを知らない彼女の魔力は、既に僕の周りを囲む程に巨大化していた。

 蛇に睨まれた蛙とは、まさにこの状況を言うのだろう。僕は身をもって体験していた。


「もしかして、ビビってます?」


 先程の悪魔の様なものではなく、まるで僕をからかうような笑みをうかべながら、彼女がそう言う。


「……」


 僕はそれに対し、無言を返す。

 相手を心理的に煽るのも立派な戦略だが、今の僕にそんな余裕はない。


「いいじゃないですかー! 

 少し位お喋りしましょうよ!」

「……」

「つれない先輩だなぁ」


『ごめん! 僕も君とは話してみたいけど、今はそんな余裕はないんだ』


 僕は心の中で謝る。

 今の会話だけを見たら、僕がただの柄悪い先輩だし。


「まぁいいです。それじゃあそろそろいきますよ」


 その言葉で、少し緩んでいた気持ちを再び締める。


『僕の魔力属性を出現するには、まだ〔条件〕が揃っていない。まずはそれを集めないと』

 

 そう考え、東雲さんの方を一瞥する。

 が、既に彼女はそこに居なかった。


「こっちですっ!」

「なっ…… 後ろ!?」


 そのまま僕の背中に向けて蹴りを放ってくる。

 僕は慌ててそれを回避し、渾身の突きを繰り出した。

 まるで舞うように軽やかな動きで、彼女はそれを回転しながら避け、その反動を利用して、今度は回し蹴りが放たれる。

 

『クソッ! この速さだと回避は無理だ』


 咄嗟に両腕をクロスさせ、衝撃に備える。

 恐ろしい程のスピードで繰り出された回し蹴りは、僕の体をまるで紙切れの様に吹き飛ばした。

 その勢いは衰えず、会場の壁に僕は打ち付けられた。


『ぐはっ……!』


 防御体勢に入っていたのに、衝撃が全く緩和されていない様に感じる。

 今ので思いきり打ち付けた背中が、悲鳴を上げていた。


「あれ? もう終わりですか?」


 痛みに疼く僕に近づきながら、彼女がそう言う。

 僕は痛みに耐え、ゆっくりと立ち上がり、彼女をまっすぐに見た。

 僕が既に満身創痍であるのに対し、彼女にはかすり傷は愚か、

疲れすらみせれていない。

 だが、これまでの過程で、1つ分かったことがある。


『こいつ…… わざとバッチを破壊しないように攻撃してるな』


 先程の攻防で分かるように、僕と彼女には天地の差がある。

 もし彼女が本気になれば、勝負は一瞬で終わっている事だろう。

 しかも、腰に帯びている刀を一度も使ってこないのも不自然だ。


『いいさ。やってやる! 

 今の攻防で、僕の〔条件〕が少し集める事が出来たからね!』


 どっちにしろ、彼女が本当に僕の魔力属性をみたいなら、この試合が終わることもないだろう。

 僕は遂に覚悟を決めると、彼女に向かって


「東雲さん。僕は今から本気で頑張るよ」


 僕がそう言うと、


『やっと本気になった』


 と、少し嬉しそうな顔をした。


「いくよ! 東雲さんっ!」


 僕は全力で彼女のもとへとダッシュする。

 拳を握り、全力の突きを繰り出す。


「また突きですか? そんなの返り討ちにしてやりますよ!」


 東雲さんが回避行動に出る。

 その動きで彼女の着物の袖が浮いた。

 

『ここだっ!』


 着物の袖が作り出す一瞬の死角に潜り込み、そのまま無防備の背後へ、後ろ蹴りを放つ。

 ヒットするのを確信した僕に


「あまいですよ!」


 なんとそれすらも読んでいたかの様に、彼女はそれを避け、カウンターを仕掛けていたのだ。


『ちょっ!? 幾らなんでも強すぎるだろっ!?』


 僕のがら空きの腹部を目掛けて、彼女の突きが命中する。

 そのあまりの正確さとスピードに、今度は悲鳴すら出なかった。

 圧倒的な力の差を前にして、僕は為す術もなく吹き飛ばされた。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

『一体この先輩は何者なんだろう……』


 私は先輩をカウンターで吹き飛ばし、再び先輩の元へ近づきながら、そう思っていた。

 さっきの私の意表をつく攻撃。あれは1度目の攻撃よりも素早く、正確に動かなくてはならない筈だ。

 だが、これまでの戦いで、先輩がもはや満身創痍なのは見てとれる。それなのに何故今の攻撃が出来たのだろうか?


「今のが先輩の本気ですか?」


 私のカウンターの威力でヒビが入った壁。

 それに寄りかかる先輩へそう言う。


「ま、まだまだ…… これからだよ」

「もうボロボロじゃないですか」


自分でやっておいて何だが、今の先輩は見ていてとても戦える状況ではない。


「もう先輩の魔力属性はいいので、とりあえずケガを治しましょうよ」


 嘘だ。私は今までのを通して、余計に先輩に興味が湧いていた。

 だが、これ以上やると、先輩が死んでしまうかもしれない。私もそんな状況の相手に対して戦うほど鬼ではない。(全て私がやったんだけどね)


「ははは…… 後輩に心配してもらうなんて、先輩失格だね」


 どこか優しい笑顔で先輩がそう言う。


「でも大丈夫。僕はまだ戦えるよ」

「えっ!? でもそのケガでは……」

「いいからいいから」


 よっこいしょ と立ち上がる。

 

「わかりました。すぐに終わらせます」


 私はバッチに狙いを定める。


『とりあえずは先輩のバッチを早々に破壊して、

 先輩を病院に送り、それからまた改めて試合をしてもらおう』


 先輩が構えをとる前に、私は走りだす。

 今の私の全力のスピードで先輩に向かい、そのまま手刀でバッチを破壊する…… はずだった。


 しかし、それは失敗に終わった。


 それは何故か?

 私の手刀を先輩が止めていたからである。


 その事実を認識すると同時に、私は驚愕する。

 

『どう考えても有り得ない。

 何故この状況で私の攻撃を受け止められるんだ!?』


 あまりに衝撃的な事で、私は混乱すらしていた。


 ふと先輩を見ると、その体が淡く光っている。


『まさか…… この状況で魔力属性を!?』


 私は先輩の手を振りほどき、一瞬で距離を取る。


『面白いですっ! 

 まさかここで本気を出すなんて、ちょっと惚れちゃいますよ』


 先程までの慈愛の心はどこへ行ったのやら、私は戦いの続きに備え始めた。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


『やっとかよ……』


 僕は自分に悪態をついた。

 今、僕の全身は淡く光っている。言わずと知れた、魔力属性が発動している証拠だ。

 

「先輩! 何でこのタイミングなんですか!」


 東雲さんが離れた所からそう言う。

 多分、先程の攻撃を受け止めた僕を警戒しているのだろう。


「ごめんごめん。こっちにも色々と事情があるんだ」

 

 なかなかコントロールが難しいので、手間をとらせてしまったようだ。

 

 

 僕の魔力属性は《革命》と呼ばれている。

 

 その能力とは

〔自分が身体的、または精神的なダメージを受けるほど、自身の身体能力、直感、魔力が上がる〕というもの。

 

 要するに、

 〔相手からの攻撃を受けないと発動が不可能〕

 という、かなり癖のある魔力属性なのだ。

 だが、本来の革命とは、何かがあって、それから起こるもの。

 この発動条件は当たり前といえばそうなのだが


『だとしても、

 ここまで再現することないと思うんだが……』

 

 何せ、使い勝手が悪い。

 発動までに相当痛い思いしなきゃならないし、

さらに《革命》を強くしたいなら、もっとダメージを受けなくてはいけない。

 かといって、今まで受けたダメージがいきなり回復する事もない。

 (むしろ回復すると魔力属性が弱くなる)

 

『事実、今の攻撃を受けても、

 発動した《革命》のレベルは3~4ほどだし……』


『……まぁ、欠点だらけの魔力属性だけど、

 それでも今の僕の状況には必要なものだな』


 僕は、体をそれに馴染ませるよう動かす。


「さて、試合再開といこうか!」

「先輩が大丈夫なら良いですけど」

「全然大丈夫!」


 うん。ちょっと強がった。

 だが、ここで僕がリタイアすると、彼女のランクが計測出来なくなってしまう。

 今までさんざん待たせているし、これ以上迷惑を掛けることはできない。


「それじゃあ改めて。いきますよ! 先輩!」

「もちろん! 全力で来なよ!」


 ジリジリと距離を詰めながら、互いに隙を伺う。

 僕が《革命》を発動させたことにより、

僕と東雲さんの身体能力はほぼ互角になったと言えるだろう。

 だが、体力や魔力的に考えると、依然として東雲さんの方が有利だ。

 それに、《革命》の効果で向上した僕の直感が「長期戦に持ち込むな」と警告してくる。

 

 

『ならば、ここで僕のありったけの力を、この瞬間にこめる!』


 僕は先に仕掛けた。

 

 最速で、かつ正面になるように彼女へと近づく。

 

 軸足をしっかりと固定し、更に遠心力もたっぷりと加えた蹴りを放つ。

 東雲さんは、それをスレスレで避け、先の戦いでケガを負っている僕の背中を目掛けて突きを繰り出してくる、


『よしっ! ここまでは予想通りだ! あとは、ここで……っ!』 


 僕は1撃目の技で使った足とは逆側の、つまり軸足でジャンプし、そのまま彼女の拳を蹴り上げた。


「な……っ!」


 東雲さんが驚きの声をだす。


 それもそのはず。

 普通、蹴りをするときはどちらかの足が地面に着いているもの。

 その方が安定し、より力を入れられるものだからだ。

 

 彼女は今、腕を思い切り蹴り上げられ、バランスを崩している。


 一方の僕はというと、両足が浮いた状態から腕を地面に着け、バク転の要領で、体制を立て直した。

 

 ここまでの動作で、僅か2秒。

 

 『これで終わりだっ!!』

 

 僕はそのまま、彼女の胸元に輝くバッチを毟り取った。



「そこまでっ!」

 

 強く、それでいてハッキリした口調で島村先生が言う。


「この試合、両者引き分けとする!」


「いやなんでだよ!?」


 僕は驚き、すぐさま抗議する。


「自分の胸元を見てみろ」


 僕は先生に言われた通りにする。


「あれっ!? バッチが無い!?」


 思わず声に出してしまった。

 そして、東雲さんの方を見ると


「ふぅ。危ない危ない」


 と言いながら、腰に帯びていた刀を揺らしている。


「ま、まさか……」


 僕はジッとその刀に目を凝らす。

 そして、見えてしまった。

 刀の先の部分に引っ掛かっている僕のバッチを……。


『僕が東雲さんのバッチを取る時に、

 近づいたところを狙ったのか!?』


「あー! きたねぇぞ! ズルいことすんな!」

「誰も刀を使わないなんて言ってませんよ?」

「ぐっ……」


 ド正論を言われ、もはや黙ることしか出来ない。


「まだまだあまいですね~! 先輩っ!」


 そう言った彼女は、最初に会った時の悪魔の笑顔とは違い、

 まるでいたずらっ子の様な、可愛い笑顔をしていた。

 

 その笑顔を見ながら、僕はガックリと膝を落とす。


『ここまで頑張って、そりゃ無ぇだろ~っ!!』


 こうして、僕の試合が無事? に終わったのだった。

今回は少し長くなってしまいましたが、いかがだったでしょうか?


おい赤羽レグ!

お前さんざん待たせておいて、主人公の能力があれとか

頭イッテんのか!?


とか、


おい!そこのニワトリ!

相変わらず文章下手くそだな!唐揚げにして食っちまうぞ!


など、何でも構いません。

感想を頂きたいです。(自分でもこれが良いのかが分からない)



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