ポテトサラダ消失事件
先に昇降口に向かった星歌を慌てて追ったが、彼女との距離はもう見えないぐらい離れていた。歩くの速いな!
僕は急いで昇降口に向かう。
「お待たせいたしました」
「……」
星歌が無言で僕を見つめる。どうやら僕の努力は意味がなかったようだ。
「あと3秒遅かったら、先に帰ってた」
「お前って本当にせっかちだよなー」
そのまま2人で並んで帰る。星歌とは入学当時からそうしている。
別に、何か約束をした訳でもないし、男女の付き合いをしているわけでもない。
ただ家が隣で、お互い一緒に帰る人がいないから、こうしているだけなのだ。
「そう言えば、今日特待生に会ったよ」
「へぇ」
「凄い魔力だったぜ」
「そう」
星歌は基本静かでおとなしい子だが、首につけている大きなヘッドフォンと、小柄な体格に不釣り合いなライフルがトレードマークという目立つ格好をしている。
「今日の晩御飯は何かリクエストある?」
実は、僕と星歌は両親が共に不在なので、毎日ご飯を一緒に食べている。
今日の夕飯は僕が担当だったので、参考程度に聞いた。
すると星歌は、その整った顔をこちらに向け、美しい緑青色の瞳で真っ直ぐに僕を見ながら、
「ポテトサラダがいい!」
「お前いっつもそれなんだな」
「好きだから」
「確か作りおきがあったような……」
「それじゃ足りない!」
「へいへいそーでしたね」
こいつは小柄な体つきをしているのに僕の5倍は食べる。
最初は驚きはしたが、自分の背丈と同じぐらい大きいライフルを持つためのエネルギーと考えれば不思議ではない。
「んじゃ、いつもの商店街で買い物してくか」
「意義なし」
ここまで決まると迅速に行動を開始した。
まず星歌が買い物をし、僕が作る。
幼なじみだからこそとれる連係プレーの賜物だ。
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それからまもなくして……
「ご飯できたよー!」
「テーブル片付けておいた」
「おっ! サンキュ」
今日のメニューは、五目炊き込みご飯と小松菜のおひたし、牛肉の甘辛炒めとポテトサラダの4品だ。
「どう? おいしい?」
「特に牛肉の甘辛炒めはタレにこだわった自信作なんだ!」
星歌は僕の質問に答えず、ポテトサラダ『だけ』にガッツいている。
「おい! ポテトサラダばっか食うな!」
この短時間に山ほどあったポテトサラダがもう無くなりつつあった。
『こいつがXクラスなのは、魔力うんぬんじゃなくて単純に変人だからではないだろうか……』
僕が本気でそう思っていると、
「安心して。すぐにみんな無くなるから」
「そういうことじゃないんですけど!?」
『こいつの食欲の前には何を言っても無駄だな』
僕は早々に諦めて、自分の食事を再開した。




