職員室の空/これまでのあらすじ!
「と、僕の記憶はここまでです」
僕は正直に答えた。
時刻は午後4時を過ぎたあたり。大半の生徒は部活動か、帰宅に精を出していることだろう。職員室から見える夕日が眩しかった。
「えらいなぁ。入学式の開始30分まではしっかりと話を聞いていたようだな!」
「そうです!僕としても寝たくて寝たわけでは……
「なぁんて言うとでも思ったか?」
「ですよねー」
僕はクラス担任である島村先生の冷たい視線からにげるように空を見た。
なぜ僕が職員室にいるのかというと、新1年生を歓迎する入学式において爆睡した所を先生に見られてしまったからだ。
先生はもともとつり気味の目を更にキュッとあげ
「坂本ぉ! お前はなぜ毎度毎度そうなんだ? 生徒指導の担当としての私の苦労を少しは軽減しようとは思わないのか?」
先生が肩を揉みながらうーっと唸る。この先生は学園内でも美人として知られていて、親父臭い仕草をしても絵になる。
確かに入学式で寝るのは自分でもよろしくないとは思っているが、いかんせん生徒会長の話が長すぎるのだ。
後で聞いたところ約40分は話していたらしい。
「まぁ私も学生時代はよく寝ていたから、お前のことは言えないんだけどな」
なんだよ! 先生も寝てたんじゃん! と思わずつっこみたくなる。
「とにかく、今後気を付けるようにな!」
僕は先生におじきをし、職員室を出ようとドアに手を伸ばそうとしたところでそれを止めた。
まぁ正確にはドアが勝手に開いたので、その動作が出来なかっただけなのだが。
「失礼します。学級日誌を提出しにきました」
「おぉご苦労だね。そこの棚に入れておいてくれ」
彼女は僕を一瞥し、早々に職員室を出ていった。
「学級日誌をわざわざ提出しに来るなんて真面目な子ですね」
「いや、それは普通だろ」
「そうですか? 僕が1年生の頃は学級日誌なんて1回も提出したことないですよ?」
「あー…… うん。まぁいいや」
先生が何か言いかけたが途中でやめる。
「実は彼女は新入生で唯一の特待生でもある。魔力もかなり凄いぞ」
先生が椅子でグルグルしながらそう答える。
確かに、あの一瞬だけだが、巨大な魔力を感じた。
「特待生っことは何かしら彼女に特別なことがあるんですか?」
「魔力的なことはまだわからん。クラス分け試験はまだしていないからな」
「となると……」
「そう。彼女は入学試験の筆記を全て満点で入学してる」
「ま、満点!?」
すげぇ! と素直に感心してしまう。我が校始まって以来の快挙ではなかろうか
「っと、話がそれたな。今後気を付けるように! 以上!」
それさっきも言ってましたよ。と内心で思いながらも
「失礼しましたー」
僕は職員室をあとにした。
─────────────────────────────
ここから完全版(https://ncode.syosetu.com/n3270el/)
↓
突然だが、いま僕は絶体絶命の状況にいる。
都心部から離れた自然溢れるこの村には、古来より人を襲う化け物が住み着いているらしく、討伐要請を引き受けた僕は2人の仲間と満を持して森へ入っていったのだが……
「ま、待て! 1回落ち着こう!」
目の前には体長5メートルはある亀型の魔獣が鋭い目でこちらを睨んでいる。
硬く分厚い甲羅には魔獣の見た目とは反して美しいエメラルドグリーンの水晶が天高く貫き、大きく開かれた口には刃の様に鋭い歯がびっしりと並んでいて、今にも食い殺されそうだ。
この魔獣は人間の言葉を理解しない種なので、何を言っても無駄なのだが、人間というものは日常的に会話をする種族だ。どんなに危機的状況に陥っても会話で乗り切ろうとしてしまう。
「ってそんなこと考えてる場合じゃない!」
僕の腕を噛み千切ろうとしてきた攻撃を何とか避けて、人生最大のダッシュでこの場の離脱を図る。
『キョースケ生きてる?』
「生きてる? じゃないよバカ星歌!」
連絡用にと耳につけてあるインカムから仲間の声が聞こえてくる。
言葉の内容こそ心配をしているが、その声色は全くの無関心って感じだ。
『そのまま西へ走って。後ろから援護するから』
「了解! しっかり狙えよ!」
次の瞬間、ドン! という重々しい音が響く。狙撃銃型の魔導兵器特有の音色だ。
ややあってから魔獣に着弾したのだろう。背後が激しく光った。
「流石だなっ!」
滑り込みを決めながら、彼女の腕前に心の中で拍手を贈る。おかげで何とか眼のつかない所まで逃げられたようだ。
「星歌、この魔獣は僕達だけではどうしようもできない。1度離脱するぞ!」
再びインカムを起動させ、木陰に隠れながら連絡を取る。
『分かった。移動装置の場所までは私が案内するから、インカムはつけておいて!』
「了解した!」
狙撃役の彼女は移動装置から近い高台に身をおいている。要するに僕が移動装置まで行けばいつでも離脱は可能なのだ。
だが安心はできない。あの魔獣はオスとメスの2体で常に行動している。
僕が今まいた個体はメス。つまりまだオスとは遭遇していないので、見つからずに移動しなければならない。しかもオスはメスより狂暴なのでなおさらのことだ。
『そこから東に走ったらすぐに岩山が見えるはず。そこまで来ればもう安心だよ!』
「東だな! すぐに行く!」
辺りを再度見回し、一気に走り出す。
「えーっと、岩山……岩山……」
周囲を警戒しつつ、星歌の言っていた岩山を探す。
しばらくそうしていると、巨大な岩がそびえ立つのが見えてきた。
「なんだ、案外近かったんだな」
勢いよく森を抜けると、
何故か先ほどの魔獣が目の前にコンニチハしていた。
「……」
「……」
やっぱりこの魔獣は言葉が通じないって話は撤回する。もはや魔獣ですら無防備に突っ込んできた僕に呆れかえっているのか、何も反応してこない。
「あー、ははは。すみませんお邪魔しました~!」
「グルウアァァァァァ!!!」
僕は素早く回れ右。魔獣の怒りの咆哮を背に全速力で逃げ出した。
「おい星歌! どういうことだよ!?」
『あれー? 確かに東には魔獣はいなかったのに、なんでだろ?』
この能天気バカ娘め!
なぜ僕だけこんな目に合わなければならないのか……
『て言うか、なんでキョースケは南に走ったの!?』
「なに言ってんだ! 僕はお前に言われた通りに東へ向かったよ!」
『……あっ、ごめん。私から見て東だった!』
「お前ぇぇぇ!!」
地鳴りの様な足音をならしながら、魔獣は僕を追いかけてくる。
必死に逃げながらも、どうにかして移動装置までの道に戻ろうと試みる。
「しかもあれよく見たらオスだし!」
『わはは』
「ぶっ殺す!!」
これが仲間にする仕打ちなのか。自分で言うのも何だがほとほと統率がなっていない。
『じゃ、私先に帰るわ』
「えっ!? ちょっ!?」
『こっちにも魔獣が近づいてるからさ、ごめんね!』
ブツッと回線が切られる。今の僕にはその音が鎮魂歌に聞こえた。
星歌に怒りを覚えるのもつかの間、同じ方向に逃げすぎたためか、目の前に崖が広がっていた。
追いかけてくる足音も徐々に大きくなってくる。
「あ、これ詰んだわ」
だいぶ下手くそですが、よろしければアドバイスなどよろしくお願いいたします。