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紅碧の勇者  作者: マムマーム
1章 〜サヤナーバ王国〜
2/3

2眼 旅、開始

オッス、俺の名前は遠山裕也。

一カ月前に気付けば大草原、今は荒地となっているこの場所で神様とやらに勇者として召喚された…らしい。

俺は今でこそ夢でもなく現実なんだと受け入れているが、ここが異世界だという唯一の手掛かりである神様からの手紙…の内容。

実際に俺の身体能力や魔力量は化物染みていた。

そして、まずは自分の体をコントロール出来るようにと修業を始めて…一カ月経った今日、遂に旅に出ることを決意したんだ。


「ふぅ……」


一カ月間のことを思い出すとつい溜息が漏れる。

魔力の使い方や魔法は、片っ端から思い付いた能力を試した。

身体能力のコントロールは、成功した魔法の一つである‟合わせ鏡”を使った。

魔法のネーミングは適当で…まぁ、この効果はある種の分身だな。

そう、もう一人の自分を相手に毎日毎日組み手をして、力の強弱や体の動きなどを試した。

分身の俺も、同じオーバースペックだったのは幸か不幸か…結果的には自分の力を制御出来るようになった。

勿論、神様からの贈り物?の黒い刀も素人なりに素振りをしたりしてある程度は扱えるようになった。


「っし、そろそろ行くかな…」


俺は、鞄に入れてあるもう殆どない飲食料と金貨がたんまり詰められている布袋確認してチャックを閉じる。

鞄を背負うのは止めて、魔力で異空間を創りそこに放り投げた。

そして最後に刀を左腰に身に着けて…準備完了。

が、俺は万が一誰にも見られないようにと、ドーム型の空間を創った。

大きさは100メートルと、十分すぎる広さ。


(…今にでもこのドームを消したいんだが)


ドームの外から人の気配と魔力を感じる…それも1人や2人なんてもんじゃない。

うん、余裕で100人は居るな…。

しかしなんでこんなに人が…?と、(とぼ)けるのも阿保らしい。

理由は明白、つい最近までは大草原だった地が突如荒地に変われば……そりゃあねえ?


(ドームを消すのは別にいい。けど、問題は俺か…)


早速魔法を創造する。

…よし、俺の体や刀にドームと同じ効果の魔法を掛ける事ができた。

うん、‟スモールドーム”と命名するか。

これでドームを解いたとしても、突然怪しい人間が?!なぁ~んてことは起きまい。

パチンっと、指を鳴らしてドームを解いた。


(うわぁー…これ全員どこかの国の兵隊じゃねーか)


アニメやゲームでよく出てくる兵士にそっくりだ。

多分あれだな、ここを領地としてるお偉いさんが現地に送った兵士だと思う。

しかし、魔力探知が誰でも出来るのか知らないが(俺のドームが気づかれてはないから誰でも出来る訳ではなさそうだ…)兎に角ばれずに済んだな。

ならば、早速ここから移動するとするか。

誰にも気づかれてないとはいえ、ずっとここに留まってるのも居心地が悪いし…。


(体に魔力を集めてっと…よし!)


スモールドームとは別に、魔法じゃないただの魔力を体に覆う…すると。

ふわふわふわふわ、俺の体が宙に浮いていく。

これで移動もグッと楽になる!

兵士たちが見えなくなる位まで上に飛ぶ。

グルグルっと一回転して行く先を決める。


(おっ…あれは城?そして城の手前に森があるな…)


城の国旗を見るに、下にぞろぞろ居る兵士たちはあの城から来たのだろう。

そして城があるということは…あそこは国か?


(…取り敢えず目的地は決まったな。……すぐに行ってもいいんだけど)


まだ日が沈むには時間がある。

それに急ぐ旅でもないし…寄り道できる内にした方がいいかな?

森…やっぱりモンスターってのが居るのか?


(ま、情報収集も兼ねて行ってみようか)


そうと決まれば、森がある方向に一直線に飛ぶ。

グングンスピードを上げて!……着いた。

スタっと地面に着地して、生き物の気配や魔力探知でモンスターを探す。

…しっかし生き物の気配を探るのはいいけど…小さな反応が多すぎる。

殆どが虫や小動物なんだろうけど…ちょっと鬱陶しいな。

第六感と言えばいいのか?頭、強いて言えば、脳…の一部がムズムズする感覚だ。

が、これは慣れだと自分に言い聞かせて……居た!!


(あれは…ゴブリン……?)


ゲームなどでよく目にするモンスター。

身長は低くて醜い容姿をしている…俺のイメージにピッタリの姿だった。

俺から5メートル程離れた先に、3匹のゴブリンが尖った長い石を片手に和気藹々(わきあいあい)と談笑しているように…見える。

ゴブリン達は、俺の姿は愚か無防備に座って、時折耳障りな笑い声をあげている。


(さて、どうする?)


そう自分に問いかける。

あくまで観察だけで済ますか、それとも___。

今の俺の心境だが、仮に‟殺す”としても…一切動じないと思う、いや、断言できると言ってもいい。

この世界に来て一カ月、まだ一度も生き物を殺していないのに何故断言できるか?

それは…現時点で当り前のように冷静で、見逃すか殺すか、という今までの俺からしたらあり得ない思考回路が回っているからだ。

それか、俺がオーバースペックと呼べる力を手に入れたからと言われればそれでおしまいなんだが…。

それだけは、ない。

…どうでもいい考えを悶々と繰り返してもしょうがないな。


(前に…出てみるか)


観察か殺すかの間をとって、ゴブリン達の反応が知りたい。

サッとスモールドームを解いて、ゴブリン達に近づいてみる。

4メートル…3メートル…と、ゴブリン達が俺に気付いたようだ。

グギャグギャ!と、叫んだゴブリン達は一斉に立ち上がり、武器であろう尖った長い石を俺に向けて威嚇、臨戦態勢に入ったのが分かった。


(結局こうなるのね)


俺も腰を低くして……両拳を握る。

魔法は使わないし、刀も抜かない。

決して油断してる訳じゃあない。

一カ月修業して、嫌という程自身の力の恐ろしさを目の当たりにしたんだ。

俺の本能、第六感が現在対峙しているゴブリン達を‟認識”していないレベルで…弱い。

そして、ゴブリン達は俺を脅威の対象かどうかすら理解していない様子だ。

『自分たちの前に、のこのこと獲物が気やがった!』くらいにしか思っていないだろう。

が、それならそれでいい。

ゴブリンは俺にとって危険ではないということが分かったんだから。


「グギャグギャ!グギャ!!」


そう叫びながらゴブリン達は、一斉にこちらに走ってきた。

初めての実戦。

殺し合い。

…が、俺の紅と碧の眼には……まるで時間が止まったと錯覚する程にスローに見える。

これは魔力は関係なくて、ただ目に意識を込めれば…ご覧の通りになる相手の動きが遅く見える特技?スキル??…兎に角、俺は‟スロー”と命名した。


(1ッ、2ッ、3ッ!)


パチンッと、(でこ)ピンで一回ずつ額に叩く。

そして今も尚、ゆっくりゆっくり動いているゴブリン達から離れる…何故か?

それは……


バジュッ! ビジュッ! ゴジャッ!


目から意識を外すと同時に、生々しい破裂音が鳴る。

…首から上が飛び散ったゴブリン達は、断末魔も出すことなく。

地面に、紫がかった血の上に倒れた。


(鉄臭い…。そしてやっぱり)


弱い。

力を最小限に抑えて放った凸ピン。

ゴブリンの体が柔いというのも理由の一つだろうが…改めて自身の力がデタラメであると認識する。

そして、初めて生き物…モンスターをこの手で殺めた訳だが。


(精神的ダメージが一切ないこと喜ぶべきか…悲しむべきか…)


なんて考えるのはやめだやめ。

…それよりも死骸は放置した方がいいのか?燃やした方がいいのか?

…………数秒悩んだが、結論は放置に決定。


(もう少し探索してみるか…)


と、魔力探知と生物気配を発動して、森の奥に行ってみることに__________。




__続く__

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