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紅碧の勇者  作者: マムマーム
1章 〜サヤナーバ王国〜
3/3

3眼 眼の理由

森探索を始めて1時間は経っただろう。

見たこともない植物や動物、そしてゴブリンやファンタジーの定番とも言えるコボルトと対峙した。

他にも蜂(はち)や猪(いのしし)に似た姿をしたモンスター?とも戦った。

まぁ、特に問題なく探索を終えれたことにひとまず安堵だな……と、森から出ようとした矢先だった。


(あれは…女の子が2人………?!あ、あれってオークって奴か…?)


華やかな白色のドレスを着て、桜色の長い髪をポニーテールに束ねた、容姿共々…美少女という言葉がピッタリの女の子。

そして、銀色の鎧で身を包んでいる…何故か兜は被っていない、金色の長い髪が木々の隙間から漏れる太陽の光に照らされて眩しい。

この人の容姿も、世の女性が羨ましがるだろうスタイルで、美少女…と言うよりは美人の方がしっくりくる整った顔だ。

そんな只者ではないオーラを放つ女の子2人は、目の前に俺よりも一回り二回りを優に超える人間の姿とはかけ離れた化物と対峙しているというのに、逃げ出そうとはしていなかった。

それどころか、冷静にオークを見上げて余裕の笑みを浮かべている。


(…あの様子を見る限り、2人は強いんだろうな。オークなんて威圧・殺気・オーラに充(あ)てられてスゲー汗をかいてるし…)


最初こそ加勢に行こうとしたんだが…あの様子じゃ大丈夫か。

よっこいせっと、俺はその場に座って万が一を考慮して見学することにした。


「姫様、ここは私がいきます」


「もう…サーナ?2人だけの時は、名前で呼んでっていつも言ってるじゃないっ」


「も、申し訳ございません…アリス」


「だ・か・ら!敬語もなし!私たち幼馴染でしょ?」


「……はぁ、分かったよ。それで、あのオーガは私が殺っていいの?」


「うん、もっちろん良いわよ!」


「はいはい、なら遠慮なく……」


……ふむ、まさかお姫様と従者だったとは。

あの豪華なドレスや容姿を見る限り…姫さんと言われても納得してしまうかもな。


「あらあら~、オークですか?この森に出るなんて珍しいですね~」


と、従者が左腰に装備している業物なんだろう、白い剣をスルスルっと抜いた時だった。

姫様の後ろの木々から、メイドさんが現れた。

ショートカットと呼べる紫の髪、短いミニスカートについ目が吸い込まれるが何とかそらす。

このメイドさんも姫様や従者に引けを取らないおっとりした美少女だ。


「え?カナ??今日は仕事が山積みで来れないんじゃなかったの?」


姫様はメイドさんを知っている素振りで親しげに、しかし、登場は予想外のようで驚いている。

従者も…オーガと睨み合ってはいるものの、表情は驚きとともになにか納得しているようす。


「お仕事は終わらせてましたよ~」


のほほ~んと、右手に持っている厚い布で縫われたバックを掲げて、


「もうすぐ3時ですから~、サンドイッチを持って来ましたよ~」


メイドさんはそう言うと、魔法で大きなシートを作って地面に敷いた。

そこに、メイドさんと姫様は座り、黙って従者を見る。


(…空気が変わった)


重々しいオーラが、従者から感じる。

戦闘開始…か。

サッと、静かに剣を構える従者。

対してオーガは、どんどんオーラが上がっていく従者に完全にビビっていた。

______ジャシュッ!!!!!!

生々しい肉が斬れた音がその場に響く。

そう、ビビった時点でオーガは既に負けて…死んでいた。

ドスッと従者が斬り捨てたオーガの首が、地面に鈍く落ちる。

と、同時にオーガの体も地に沈む。

従者はもう剣を鞘にしまっていて、右手から火を灯しオーガを燃やす。

そして、重々しいオーラを解き、姫様達と和気藹々にサンドイッチを食べ始めた。


(この世界の女の子は逞(たくま)しいな?!)


それとも、それがこの世界にとって当たり前なんだろうな。

…さて、いつまでもここに居る訳にはいかないな。

それと、実験も成功したしな。

…実験と言ったら聞こえはいいが、まぁ、スモールドームを掛けて彼女達を見ていたんだが。

結果はご覧の通り、ずっと近くに居た俺に気付いていない。

あれだけの戦闘力がある相手が気付かないとは…中々使い勝手が良いよな。

なぁーんて、油断したのが駄目だった。

グゥゥゥウウーと、サンドイッチの匂いのせいで俺の腹の虫が鳴ってしまった。


「誰だ!!」


音に気付いた姫一行は、従者を筆頭に臨戦態勢をとっている。


(はぁ……久々にちゃんとした食べ物を目にしちゃったらなー…)


「あー、ごめんよ…決して怪しい者じゃないんだ」


まるで小悪党の台詞だが仕方ない。

相手を刺激しないように、両手を頭の後ろに持っていき、敵意がないことを伝える。


(……ん?)


あれだけオーラを放っていた従者、そして姫様とメイドさんは、俺の目を見て固まってしまった。

…いや、石になったとかじゃなく、あり得ないモノを見たような表情で驚いている。

それから何分が経っただろうか?

暫くして、最初に意識が戻ったのは姫様だった。

恐る恐るといった様子で口を開いて…


「あの、えっと、その……貴方は何者なの?」


「……え?」


姫様の質問に理解が出来ず、つい声が漏れてしまった。

が、姫様も自分が問いかけた質問が突拍子もないことに気付いたんだろう。

1回、2回、深呼吸をして…


「突然変なこと聞いちゃってごめんなさい…。けど、どうしても聞きたいことがあるの」


姫様はまっすぐな瞳で俺を見る。

…別に断るあれでもないし、な。


「あぁ、いいぜ?」


「ホント?!……貴方の眼って右眼が紅、左眼が碧…よね?…王家に昔からの言い伝えがあって、『魔王復活が近付きし時、異界から紅碧(こうへき)の勇者が降臨す』って、言葉があるの…。勘違いだったらごめんなさいっ、貴方は…貴方は紅碧の勇者様なんですか??」


…なるほどね、だから俺が召喚された時に両眼の色が変わったのか。

紅碧の勇者…か。

まぁ、神様公認みたいだし、ここで嘘ついてもなぁー……。


「………そうだよ、俺は神様に召喚された勇者、らしい。魔王を倒せって言われて旅をしてるんだ」


うん、嘘は言ってないよ?

俺の今の状況を超簡潔にまとめただけだし。


「やっぱり!!」


姫様は嬉しそうにガッツポーズ。

そして、


「私は相手が嘘をついてるかどうかが分かるの!魔法じゃなくて…特技としてね!……っていうことで!サーナ!カナ!勇者様を城に招待するわよ!!」


「か、畏まりました」


「はいは~い」


俺の意見は無視なのか、トントン拍子に城に招かれることになった。


(はぁ…どうしてこうなった?)






__続く__





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