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Lovers High  作者: ショコラ*
第八章 追憶の紅
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初恋

 

 Side:ユウ



 人並みに、楽しく話せるような恋がしたい。カッコイイ彼氏がほしい……

 キッカケは単純で、浅はかなものだった。


「ユウ、今日一緒に帰ろ」

「うん! 教室で待ってるね」


 高校に入学して間もなく、元々仲の良かった従兄が彼氏になった。

 優しくてカッコ良くて、頭が良くて……女の子に人気のあった彼から告白されたときは、びっくりしたけれど。


「大切にするよ、ユウ」


 その優しい笑みに、思わず首を縦に振った。

 それが――ルイと私の関係が、“特別”になった始まり。


「ユウ……好きだよ」

「うん、私も……」


 年頃だった私たちは自然の流れで手を繋ぐようになり、キスをして、幸せな時間を分かち合った。親には友達の家へ泊まると言って、ルイと一緒に朝を迎えることも何度かあったし。

 ルイはいつも優しくて……他のみんなにはあまり見せない笑顔も、私の前ではたくさん見せてくれた。

 幸せ、だったと思う。


 だから最初は、すごく動揺した。

 何が原因で、歯車が狂ったんだろう?

 初めての恋で陥った混乱に、どうしたらいいのかなんてわからなくて……

 あの頃私は、一生分と言っていいほど泣いてばかりいた。



 その日は何の変哲もない、平凡な1日で終わるはずだった。

 いつもと違ったのは海外赴任していたルイの両親が帰国し、国内で開催される会社のパーティへ出席していたことくらい。パーティーにはヨーロッパ圏出身の社員が多く出席するとかで、社会勉強がてらルイも同行させられていた。ルイは英語の他にイタリア語やフランス語も少しできるから、両親もいい勉強になると思ったんだろう。

 なおルイの親友である准くんという男の子も、一緒に参加すると聞いていた。私たちと違う高校に通っている彼も、ルイに負けず劣らず英語が堪能だとか。近い将来留学したいと言っているらしく、彼を気に入っているルイの両親が、一緒にどうかと誘ったらしい。


 パーティーが始まる直前、ルイから日本とは思えないイギリス庭園のような写真が送られてきた。きっと海外の血も混じっているような顔立ちのルイは、向こうの人たちに囲まれても違和感が無いのだろう。


(すごいなあ……)


 休日なのに特に予定がなかった私は、自室のベッドに寝転んでパーティーの様子を想像する。

 物心ついた時からヨーロッパが大好きだった私には、憧れるような話だった。ルイが練習で話している言葉も、どうしてだか英語より、イタリア語やフランス語の方が心地良く感じられるのだ。

 いつだったかそう伝えたら、ルイ自身も同じだと言っていたっけ。



 キラキラした世界を思い描いているうちに、いつの間にかうとうとしていたらしい。ふと目覚めると部屋が薄暗くなっていて、私は携帯に手を伸ばした。

 

(なんだ、まだ2時か)


 一瞬夜が近いのかと思ったけど、単に天気が悪いだけらしい。最後にルイとメールしたのは正午頃だったから、そこまで時間は経っていなかった。


「……」


 なんだか、長い夢を見ていた気がする。

 内容は全然、思い出せないけれど……胸がざわざわして、うっすらと冷や汗をかいている。


(怖い夢だったのかな)


 妙に嫌な感じがして、私は首を振った。

 その瞬間、着信音が鳴る。ルイ専用に設定していた音に、慌てて起き上がった。



**/07/14 13:41

from:桐谷 留衣

sub:無題

------------------------------

ユウ、会いたい。

19時過ぎ頃、時間作れないかな?


------------------------------



 今日はパーティで疲れるだろうから、会えないと言っていたのに。首を傾げながらも、特に不都合のない私は「いいよ」と返信を打つ。何を着て行こうか迷った結果、最近ひと目惚れして買ったロイヤルブルーのワンピースに着替えた。そしてお母さんから借りたカールアイロンを使い、毛先の方からふわふわと巻いていく。


「なに、どこ行くワケ」

「わっ、嵐!」

「すげえ気合……」

「別に普通だよ」

「普通に遊び行くカッコじゃねーだろ……あ、ルイと出掛けるんなら普通か」

「えへへ」

「うっざ」

「ひどーい!」

「お熱いことで。あ~、鬱陶しい」


 ルイと私と同じ高校に通う、ひとつ年下の弟。中学あたりからちょっと不良になり始めて、いつの間にかかなり明るい茶髪になっていた。両耳には計5つのピアスがついているし、左肩がペロンと出るカットソーを着こなしている。何故か姉の私より色気があるのは、悔しいけど……

 そんな嵐はなぜか、昔からルイと折り合いが悪い。付き合ってるとカミングアウトした際には、「ユウだけ玉の輿かよーうぜー」と悪態をつく始末だった。

 それでも元々親戚同士仲は良かったし、私たちの交際は両家公認のものだったと思う。階段をトントンと降りて行くと、リビングからお母さんの声が掛かった。


「ユウー? 出掛けるの?」

「うん、7時からルイと会ってくる」

「ご飯は?」

「多分いらないかな」

「そう。ユウったらルイちゃんと付き合うようになってから、すっかりお嬢様っぽくなったわねぇ」

「えー、そう?」

「顔はどう見ても庶民なのにね!」

「……お母さんによく似てね」


 どことなくほんわかしてて、平凡ながら可愛らしさを持ち合わせた母親。そのノーテンキさも雰囲気も、私はお母さん似だとよく言われる。ちなみに180センチ以上のすらりとした長身と、40代とは思えない若々しさを持つ父親の遺伝子は、すべて嵐に注がれてしまったようだ……ちょっと不公平。

 私はため息をつきながらパンプスを履き、行ってきますと声を張り上げた。


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