第1話 『追放と出会い』
「えぇっ⁉ わたしをこのパーティーから追放っ⁉」
「そうだ! テメーみてーな役立たずなんかいらねーんだよ!」
「で、でも、わたしは……っ」
「女だてらに賢者だっていうからパーティーに入れたが、いっつも魔法を失敗してばっかじゃねーか! こちとら迷惑してんだよ!」
「そーよそーよこのグズ!」
「テメーみてーなノロマのグズは出ていきやがれ!」
「まさか手切れ金が欲しいってのか? グズで役立たずのくせに金にがめついクソ女が!」
「そんな……わたしは……」
「誰がテメーなんかにびた1ゴールドも渡すかよ! これ以上ゴネルんならブッ飛ばすぞ!」
「……っ」
少女賢者はがっくりとうなだれて、とぼとぼと部屋を出ていく。
「ガハハ、やっと出ていってくれたぜ!」
「本当に役立たずだったからなアイツ!」
「パーティーから追放出来て清々したわ!」
落ち込む少女賢者の足取りは重かった。
○
街を歩くその男の名前はシュンといった。
「あー、どっかに大金落ちてねーかなー。それか降ってこねーかなー」
頭の後ろに手を当てて空を見上げる。よそ見をしていたせいか、道を歩いている者とぶつかった。
相手が地面に尻餅をつく。黒いローブを着た年ごろの少女だった。
「あ、わり」
「い、いえ、わたしも前を見ていなかったので……」
お、可愛い。シュンは彼女に手を差し出す。
「可愛いね、きみ。名前はなんていうの?」
「え、ふぁ、可愛い……っ⁉」
「怪我はしてない? 立てる?」
「あ、はい、怪我は大丈夫です。ありがとうございます」
シュンの手を取って彼女は立ち上がる。
「俺はシュンっていうんだ。ダンジョン探索とかしてる、いわゆる冒険者ってやつなんだけど、きみは?」
「あ、わたしはネカっていいます。賢者、やってます」
「お、すごいね、賢者ってなるのすっごい大変なんでしょ? その若さで賢者とか、もしかして天才?」
「あ、あはは、そんなんじゃないですよ……昨日もドジしちゃって、パーティーのみんなに迷惑かけて怒らせちゃって……。さっきパーティーから追放されちゃって、これからどうしようかなって……」
「ふーん、大変なんだね」
こんなに可愛いのに。
ぴこん。シュンはあることを閃いた。ネカに言おうとしたとき、道の向こうで女性の悲鳴が響いた。
「きゃあー、私のバッグー! 返してよー!」
見ると、手を伸ばす女性と、遠くに逃げていく男の姿が見えた。男の手にはハンドバッグがあった。
「おやおや、ひったくりか?」
手びさしを作りながらシュンがつぶやく。すると、そばにいたネカが手元の空間に白い穴を作った。収納魔法の異空間だ。
そこから装飾のついた立派な杖を取り出して、ネカが構える。
「『わ、わたしはねねか、ああのひひったくりの人をととめてっ、『ああいしゅふぉふぉーりゅど』』っ!」
杖の先に小さな水色の魔法陣が出現する。しかしそこから飛び出た氷はひったくりの男ではなく、なにもない上空に向かっていった。
「「あ……」」
氷ははるか高い場所で粉々に砕けていった。ぱらぱらとかき氷のような破片が雪のように舞い降ってくる。
「まただ……なんで……? 先生のところではちゃんとできたのに……?」
噛みまくってたからじゃないか?
そう思ったシュンが、ぴかっと閃く。ひったくり犯の姿はまだぎりぎり視界の先にある。
シュンはネカの肩に手を置いて、彼女の耳にそっと優しくささやいた。
「落ち着いて」
「ふぇ……?」
「緊張して呪文を噛みまくってるから。落ち着いて。大丈夫、俺がついてるから」
「…………っ」
俺がついてるからなんだって話だけどな。さっき会ったばかりのくせに。
しかしネカは彼の言葉に勇気づけられたように、もう一度杖を構える。一度深呼吸をしてから。
「『わたしはネカ。あのひったくりの人を止めて。『アイスホールド』!』」
杖の先に再び小さな水色の魔法陣が出現し、今度はひったくり犯のほうにまっすぐ氷が飛んでいく。
氷はひったくり犯の足と頭に命中し、地面に転倒させた。足元は凍りつき、かつ目を回して気絶した。
ネカがうれしそうな顔をシュンに向ける。
「や、やりましたっ!」
「おう、よくやったな」
「はいっ、ありがとうございますっ!」
とてもうれしそうな彼女に、シュンも笑顔になるのだった。
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