表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
11/11

エピローグ 帰還/データセンター・スーパーコンピュータ・AI

 悠真は、しばらく都市を離れていた。


 特に理由はない。


 ただ、少し遠くまで行ってみたかった。


 戻ってきたのは、それから数か月後だった。


 丘の上に立つ。


「……」


 悠真は街を見下ろした。


 そして、固まった。


「……何だ、これ」


 以前見た都市とは、規模が違う。


 巨大な建物が並んでいる。


 窓は少ない。


 壁は分厚い。


 周囲には大量の水路が走っている。


 建物の間には、警備を担当する人々。


 記録を運ぶ人々。


 電源を維持する人々。


 冷却を担当する人々。


 そして、建物の中には無数の書庫がある。


「……」


 悠真はゆっくり坂を下りた。


 入口には大きな看板があった。


『中央記録集積所』


「記録集積所……」


 中へ入る。


 そこには、見たこともないほど大量の記録が保管されていた。


 書記がひたすら記録を書いている。


 別の人間が分類する。


 さらに別の人間が複製する。


 検索係が索引を管理する。


 保管係が棚へ運ぶ。


 そして、同じ記録を複数の都市へ分散して保存している。


「これ……」


 悠真は周囲を見渡す。


「データセンターか」


 誰も意味を理解していない。


 ただ、膨大な情報を保存し、いつでも取り出せるように維持している。


 さらに奥へ進む。


 今度は異様なほど大きな計算所があった。


 中には、何百人もの算術士がいる。


 いや。


 何千人だ。


 同じ計算を分割している。


 結果を別の担当へ渡す。


 別の担当が計算する。


 さらに別の担当が確認する。


 複数の都市から計算結果が集まり、それを中央で統合している。


「……これ、普通の計算所じゃないな」


 管理者が答える。


「はい」


「何をしてる?」


「非常に大きな計算です」


「どれくらい?」


「一人では終わりません」


 悠真は中を見渡す。


「スーパーコンピュータ……」


 また誰にも伝わらない言葉だった。


 しかし、悠真は理解した。


 大量の人間を一つの計算機として扱う。


 計算を分割する。


 同時に処理する。


 結果を集める。


 確認する。


 もう一度計算する。


 必要なら別の都市へ処理を移す。


 これまで作られてきた仕組みが、さらに巨大化している。


 そして、その奥。


 一つの部屋だけ、人が異様に少なかった。


 中央に一人の人物が座っている。


 その前には大量の記録。


 左右には専門家が並んでいる。


「ここは?」


 悠真が尋ねる。


「推論所です」


「推論?」


「はい」


 一人の専門家が説明する。


「過去の記録を読みます」


 別の人間が資料を渡す。


「情報を整理します」


 さらに別の人間が整理する。


「複数の可能性を比較します」


 専門家たちが議論する。


「結果をまとめます」


 中央の人物が口を開く。


「最も可能性が高いのは、こちらです」


 悠真は黙った。


「……」


「これ、AIじゃん」


 中央の人物が悠真を見る。


「AI?」


「いや」


 悠真は訂正した。


「人間によるAIか」


 記録を読む。


 整理する。


 学習する。


 推論する。


 回答を作る。


 そして、その回答を人間が確認する。


 完全に自動ではない。


 しかし、やっていることは明らかに人工知能だった。


 その日の夕方。


 悠真は丘へ戻った。


 見渡す。


 データセンターがある。


 スーパコンピュータがある。


 AIがある。


 通信網がある。


 巨大な記憶装置がある。


 複数都市による並列処理。


 冗長化された通信経路。


 冷却。


 電源。


 保守。


 すべて人間が担当している。


 悠真は笑った。


「……すごいな」


 最初は門番一人だった。


 それが今では。


 世界そのものがコンピュータになっている。


 そのとき。


 総督府から、一人の伝令が走ってきた。


「悠真さん!」


「何?」


「神託です」


 悠真は空を見る。


「また?」


「はい」


「今度は何?」


 伝令は紙を開く。


「新しい知識を生み出せ」


「……」


 悠真はしばらく黙っていた。


 丘の下では、無数の人間が動いている。


 記録する。


 計算する。


 通信する。


 考える。


 判断する。


 そして、それぞれの結果がまた新しい記録になる。


 悠真は都市を見下ろした。


「神様も、だいぶ欲張りになったな」


 誰も答えない。


 ただ、遠くの通信塔が光る。


 一つ。


 二つ。


 三つ。


 その光が都市から都市へ渡っていく。


 そして。


 また新しい計算が始まった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ