表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君は何度も僕を忘れる  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
72/72

11

人の流れに紛れるように、ふたりは並んで歩いている。


 駅前のざわめき。


 行き交う足音。


 誰も、立ち止まらない世界の中で。


 それでも。


 隣にいる存在だけが、やけにくっきりと感じられた。


 神代は、何気なく前を見たまま歩いている。


 特別なことは何も言わない。


 でも、その距離が、妙に心地いい。


 肩が触れそうで、触れないくらいの間。


 ――昔と同じで。


 ――でも、何も知らないままの距離。


 夕焼けが、ビルの隙間から差し込んでくる。


 オレンジ色の光が、ふたりの影を長く伸ばした。


 その影が、少しだけ重なる。


 理由なんて、どこにもないのに。


 神代が、ふと足を緩める。


 それに合わせるように、私も歩幅を落とす。


 自然に。


 本当に、自然に。


 まるで最初から、こうすることが決まっていたみたいに。


(――ああ)


 胸の奥で、静かに何かがほどける。


 思い出は、もうどこにも残っていない。


 名前も、約束も、全部消えてしまったはずなのに。


 それでも。


 こうして、また隣にいる。


 ゼロからじゃない。


 きっと、どこかで続いている。


 目に見えない形で。


 言葉にならないまま。


(今度は)


 一歩、踏み出す。


 隣を歩くその人を、そっと横目で見る。


(ちゃんと、はじめから)


 小さく息を吸って。


 何も言わずに、また前を向く。


 人混みの中で、ふたりの歩幅は揃っていく。


 偶然みたいに。


 でも、確かに。


 同じリズムで。


(今度こそ)


 願うように、心の中で呟く。


(“終わらない関係”になりますように)


 その想いだけが、静かに残った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ