表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君は何度も僕を忘れる  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
43/72

6

 「……じゃあ」


 気づけば、声が出ていた。


 さっきまで、あんなに何も言えなかったのに。


 喉の奥に引っかかっていたものが、無理やり押し出されるみたいに。


 「……じゃあ、どうすればいいの?」


 自分でも驚くくらい、かすれた声だった。


 それでも、止まらない。


 「どうしたら、残れるの?」


 問いというより、ほとんど願いに近い。


 答えなんて、もう分かっているはずなのに。


 それでも、聞かずにはいられなかった。


 少しでもいい。


 ほんの少しでも。


 可能性があるなら――


 「何か、あるんでしょ」


 縋るみたいに、言葉を重ねる。


 「こうすればいい、とか」


 「これをすれば、消えないとか」


 「……あるんでしょ」


 視線が、自然と雨宮先生に向かう。


 答えを持っている人を見る目で。


 最後の拠り所を見るみたいに。


 でも。


 雨宮先生は、すぐには答えなかった。


 ただ、静かにこちらを見ている。


 その表情は、変わらない。


 優しくも、冷たくもない。


 ただ――現実だけを知っている人の顔。


 その沈黙が、何より雄弁だった。


 「……っ」


 胸の奥が、きしむ。


 分かってしまう。


 その間の意味が。


 それでも。


 それでも、引き下がれなかった。


 「だって、おかしいじゃん……」


 小さく、言葉がこぼれる。


 「何もしてないのに、勝手に消えていくなんて」


 「そんなの……」


 息が詰まる。


 うまく言葉にならない。


 それでも、無理やり繋ぐ。


 「そんなの、納得できるわけないじゃん」


 拳が、知らないうちに強く握られていた。


 震えているのが、自分でも分かる。


 怖いのか、悔しいのか、それとも――


 全部か。


 「……残りたいんだよ」


 ぽつりと、本音が落ちる。


 「ちゃんと、ここにいたい」


 「消えたくない」


 言ってしまった瞬間、少しだけ息が楽になる。


 隠しても意味がないから。


 もう、全部分かっている状況で。


 取り繕う余裕なんて、どこにもない。


 「……だから」


 もう一度、顔を上げる。


 まっすぐに、雨宮先生を見る。


 「教えてよ」


 声は弱いまま。


 でも、視線だけは逸らさない。


 「どうしたらいいのか」


 それが、最後の足掻きだと分かっていても。


 それでも――


 聞かずにはいられなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ