74話
数日後。昼。
チャイムが鳴る。
玄関を開けると――
「邪魔する」
「こんにちはー!」
レイカとユイだった。
「来たか」
「今日は少し話と……確認だ」
レイカがいつもの調子で言う。
ユイは軽く手を振る。
「お邪魔します!」
そのまま中へ。
リビングに入る。
――そして。
「『いやだからそれだと効率悪いって言ってんだろ』」
「『うるさい。安定性の方が大事』」
「『でもあれ、出力足りなくなる』」
「『なら二重で組めばいい』」
完全に異世界の言葉。
自然に、当たり前のように。
ユイが止まる。
「……え」
視線の先。ソファ。
俺、相棒、シエル――そして、見知らぬ一人。
ボーイッシュな雰囲気の女。
足を組んで、だらっと座っている。
「……誰ですか」
ユイがぽつりと言う。
レイカは一瞬で空気を読む。そして、その女を見る。
女がこちらに気づく。
「あ、来た」
軽く手を上げる。
そして。
「『初めまして』」
異世界の言葉。
レイカの目が細くなる。
「……増えたな」
「そうだな」
俺が短く答える。
ユイが混乱している。
「え、ちょっと待ってください」
「またですか!?」
「まただ」
「軽く言わないでください!」
その横で、女――葵が立ち上がる。
「どうも」
「早川 葵」
普通に日本語だが。
「『よろしく』」
すぐに戻る。
ユイが頭を押さえる。
「増えてる……」
レイカが葵を見る。
じっと観察するように。
「……お前もか」
「何が」
「向こうの人間か」
葵が肩をすくめる。
「半分当たり」
「元はこっち」
「でも向こうに飛ばされた」
あっさり言う。
レイカが頷く。
「なるほどな」
驚きは少ない。もう前例がある。
ユイがまだ混乱している。
「え、えっと……」
「じゃあこの人も……?」
「そういうことだ」
「マジですか……」
現実感が追いつかない。
その横で。
「『で、さっきの続きなんだけど』」
葵が普通に話を戻す。
「『あの回路、三層にした方がいい』」
「『過剰だ』」
相棒が即返す。
シエルも続く。
「『でも安定する』」
完全に会話が成立している。
レイカがそれを見る。
「……言葉が増えたな」
「ああ」
「そりゃそうだ」
葵が笑う。
「使うやつ増えたし」
「そっちの方が楽だろ?」
レイカが小さく頷く。
「理解はできる」
「だが分からん」
「それでいい」
俺が言う。
ユイがぽつりと言う。
「……なんか」
「完全に置いてかれてる感じします」
「慣れろ」
「無理です」
即答。シエルがユイを見る。
「……ゴメン」
「……今、日本語、少シ」
片言だがちゃんと気遣っている。
ユイが少し笑う。
「いえ、大丈夫です」
「なんとなく雰囲気で分かりますし」
「それで十分だ」
葵が軽く言う。
そのままレイカを見る。
「で?」
「何しに来たの」
遠慮なし。レイカも気にしない。
「実力確認だ」
「ちょうどいい」
葵が笑う。
「私も体動かしたかったし」
相棒が小さく言う。
「『決まりじゃな』」
「『行くか』」
シエルが頷く。
「『うん』」
完全に流れが決まる。
ユイが慌てる。
「え、ちょっと待ってください」
「話が早いんですよ!」
だがもう止まらない。
人数が増えた分――このパーティの密度も、さらに上がっていた。
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