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異世界から帰ってきただけだが?  作者: Саша


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57話

相模原ダンジョン、やや深層。

空気が変わる。静かすぎる。


「……来る」


シエルが低く言う。

同時に、気配が一つ。だが――重い。


これまでとは明らかに違う。

影が揺れる。そして、現れた。


四足。だが体は異様に大きい。

黒い外皮に覆われた獣型。


目だけが赤く光っている。


「……何ですか、あれ」


ユイが小さく呟く。


「……強イ」


シエルが短く断言する。


「『上位個体じゃな』」


「『ああ、かなりだ』」


思わず異世界の言葉が出る。

ユイが一瞬だけこちらを見る。


「今の……」


「後だ」


短く返す。獣が低く唸る。


次の瞬間。消える。


「速――」


言い切る前にユイの横。


「ユイ、下がれ!」


「はい!」


ギリギリで避ける。床が抉れる。


「『速すぎる』」


「『だが読める』」


シエルがすでに弓を引いている。


「……次、右」


ヒュンッ。空間を裂くような一射。

だが――避けられる。


「……速イ」


「でも位置は分かる!」


ユイが声を上げる。シエルが頷く。


「……イイ」


獣が再び突っ込む。今度は正面。


「来るぞ」


俺が手を上げる。


「『止める』」


重力を落とす。


ドンッ。


一瞬、動きが鈍る。


「今!」


「はい!」


ユイが踏み込む。


「ウィンドカッター!」


風が走る。外皮に当たる。

浅いが――軌道がズレる。


その瞬間。


「『そこじゃ』」


相棒が消える。踏み込み。


ザンッ。


横から深く斬る。だが、まだ足りない。

獣が咆哮する。


衝撃。


全員の体勢がわずかに崩れる。


「くっ……!」


ユイが後ろに下がる。


「『連携崩すな』」


「『分かってる』」


シエルが再び弓を引く。


「……目」


ヒュンッ。


正確に狙う。だが直前で頭を振る。

わずかに逸れる。


「……惜シイ」


俺が前に出る。


「『削る』」


空間を歪める。


「『位相ずらし』」


足元が狂う。踏み込みがズレる。


「『今だ』」


相棒が再び踏み込む。

今度は深く。


ザンッ!!


大きく裂ける。


「通った!」


ユイが叫ぶ。シエルが即座に動く。


「……今」


ヒュンッ。裂けた部分へ。

矢が突き刺さる。


内部に届く。

だが――まだ倒れない。


「しぶとい……!」


ユイが息を飲む。獣が再び構える。

次で来る。


「ユイ」


「はい!」


「合わせろ」


「……はい!」


短く息を吸う。シエルが言う。


「……三、二、一」


「今!」


「ファイア!」


炎が走る。裂けた部分に直撃。

一瞬、動きが止まる。


その瞬間。


「『終わりじゃ』」


相棒が踏み込む。全力の一閃。


ザンッ!!


深く、完全に断つ。


同時に。


「……終ワリ」


シエルの矢。中心を貫く。


静寂。


獣が崩れ落ちる。

完全に停止。


「……はぁ……」


ユイがその場に座り込む。


「強かった……」


「だな」


俺が短く言う。シエルが軽く息を吐く。


「……良イ戦イ」


「『連携も問題ない』」


相棒が頷く。


「『完成に近いの』」


ユイが顔を上げる。


「今の、ちょっと分かりました」


「ほんとか」


「なんとなくですけど……」


少し笑う。


「でも、ちゃんと戦えてましたよね?」


「ああ」


「問題ない」


シエルも頷く。


「……強イ」


「ユイ、強イ」


「え、ほんとですか……」


少し照れる。だが嬉しそうだ。

俺は周囲を確認する。


もう気配はない。


「戻るか」


「はい」


「……ウン」


四人で歩き出す。

さっきまでの戦いが嘘みたいに、静かなダンジョン。

だが確実に強くなっている。


それだけは、はっきりしていた。


もし「面白かった」「続き読みたい」と思ってもらえたら、ブックマークや評価(☆☆☆☆☆→★★★★★)してもらえるとめちゃくちゃ嬉しいです!次の更新のやる気になります。

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