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異世界から帰ってきただけだが?  作者: Саша


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50話

翌日。


特にやることも決めていなかったが――


「『情報が足りないな』」


シエルがぽつりと言った。


「『ああ』」


俺も同意する。


「『こっちの世界のこと、ほとんど知らん』」


相棒が腕を組む。


「『敵の種類も偏っておるしの』」


「『魔法体系も違う』」


シエルが続ける。

少し考える。


「レイカのとこ行くか」


「資料くらいはあるだろ」


相棒が頷く。


「『妥当じゃな』」


シエルも短く返す。


「『案内しろ』」


「『分かってる』」



――ギルド本部。


中に入ると、何人かの視線が向く。だが今はもう慣れたものだ。


「来たか」


 からレイカが出てくる。


「どうした」


「資料見たい」


「何のだ」


「ダンジョンの敵と魔法」


レイカが一瞬だけ眉を動かす。


「……今さらか?」


「今だからだ」


短く答える。

レイカは数秒考えたあと、頷く。


「いいだろう」


「こっちだ」


歩き出す。

ユイも後ろからついてくる。


「私もいいですか?」


「好きにしろ」


「やった」


そのまま奥へ。扉の前で止まる。


「ここだ」


レイカが扉を開ける。中は、静かな部屋だった。


本棚が並んでいる。

資料室のような空間。


「……すご」


ユイが小さく呟く。


「こんなのあるんですね」


「ある」


「普通は使わんがな」


レイカが言う。


「経験の方が早い」


「だろうな」


俺は中に入る。シエルも静かについてくる。

棚の一つに近づく。

本を一冊取る。


モンスター図鑑。

ページをめくる。


「『……雑だな』」


「『基準が違うからの』」


相棒が横から覗く。


「『分類が粗い』」


シエルが言う。


「『個体差の記述が薄い』」


「『まあ、平和な世界だからな』」


俺が答える。

ユイがその様子を見て首を傾げる。


「今なんて言ってるんですか?」


「雑だってよ」


「えぇ……」


ユイが苦笑する。シエルは別の棚へ移動する。


今度は魔法の資料。手に取る。

開く。しばらく無言で読むそして。


「『……なるほど』」


「『どうだ』」


「『体系が単純だ』」


「『単純?』」


相棒が聞き返す。


「『属性ごとに分けすぎている』」


「『融合が少ない』」


「『応用の幅が狭い』」


淡々と分析する。

俺もページをめくる。


「確かに」


「基礎寄りだな」


レイカがその会話を見ている。

意味は分からないだが。


「……何が分かった」


俺は短く答える。


「弱いわけじゃない」


「でも、広がりが少ない」


「……なるほどな」


完全には理解していないだが、納得はしている。

ユイが少し前に出る。


「魔法ってそんな違うんですか?」


「違う」


「どう違うんですか?」


少し考える。


「こっちは形が決まってる」


「向こうは自由だ」


「……難しそうですね」


「実際難しい」


シエルがこちらを見る。


「『だが、お前はできる』」


「誰に言ってるんですか?」


「お前だ」


「え?」


「できるってよ」


ユイが一瞬止まる。


「……ほんとですか?」


「多分な」


「また適当!」


だが、少しだけ嬉しそうだ。

シエルは本を閉じる。


「『使える』」


「『何が』」


「『この知識』」


相棒が頷く。


「『合わせれば広がる』」


俺も同意する。


「そうだな」


レイカが腕を組む。


「……随分と真面目だな」


「珍しい」


「必要だからだ」


短く答える。

レイカが小さく笑う。


「いいだろう」


「好きに使え」


「助かる」


そのまま、また本を手に取る。

静かな時間。

戦いではないが、確実に積み重なっていく。


知識。理解。

そして――次に繋がる準備。

シエルがぽつりと呟く。


「『悪くない』」


俺は小さく頷いた。


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