22話
異世界に転移してものんびり生きたい
数日後。
俺と相棒は、いつものように東京ダンジョンの入口に来ていた。
入口付近には、今日もそれなりに冒険者がいる。
装備を整えている者や、仲間と話している者。
そんな中で、聞き慣れた声がした。
「おーい!」
ユイだった。
こちらに気づいて手を振っている。
「おはようございます!」
「おはよう」
ユイは少し急ぎ足で近づいてきた。
「今日も潜るんですよね?」
「そのつもり」
「よかった」
ユイはほっとしたように笑う。それから、少しだけ真面目な顔になった。
「実は、今日はお願いがあって」
「お願い?」
ユイは少し迷ってから言う。
「……ギルドに入りませんか?」
いきなりだった。相棒が隣で小さく笑う。
「直球じゃの」
ユイは慌てて言う。
「あ、いや、無理にじゃないんです!でも……」
少しだけ視線を落とす。
「この前のスタンピードの時とか、私すごく助けてもらって」
「別に気にするな」
「でも気にします」
ユイは小さく息を吐いた。
「それに」
こちらを見る。
「二人がフリーって、やっぱりもったいないです」
「そうか?」
「そうですよ」
ユイは頷く。
「二人くらい強い人なら、どこのギルドでも歓迎されます」
その時だった。
「その通りだ」
後ろから声がした。振り向く。女性が立っていた。
槍を背負っている。背は高く、落ち着いた雰囲気。
そして、妙に空気が重い。
ユイが慌てて姿勢を正した。
「レイカさん!」
女性は軽く頷く。
「久しぶり」
そしてこちらを見る。
「覚えている」
少し笑った。
「コンビニで会った二人だ」
あの時の人か。槍の女。
ユイが言う。
「私のギルドの……」
「知ってる」
女性が言う。
「鷹宮レイカ」
「Sランク冒険者」
そう名乗った。
周りの冒険者がちらっとこちらを見る。
Sランクはこのダンジョンでもかなり有名だ。
レイカは俺たちを少し観察するように見た。
視線が鋭い。だが敵意はない。
「礼を言いに来た」
静かな声で言う。
「ユイを見捨てず、無事に帰してくれて感謝している」
「大げさだ」
「大げさじゃない」
レイカは首を横に振る。
「スタンピードの現場だ」
「普通の冒険者なら逃げる」
少しだけ間。
「ユイの話を聞く限り、逃げなかったのは君たちだ」
相棒が肩をすくめる。
「出来ることをやったまでじゃ、」
レイカは少し笑った。
「謙遜か」
それからユイを見る。
「それで」
「誘ったのか」
「はい」
ユイが少し緊張した様子で頷く。
レイカは俺たちに視線を戻した。
「結論から言う」
「うちのギルドに来ないか」
静かな言い方だった。だが圧はある。
「無登録でも構わない」
「実力があるなら歓迎する」
相棒が聞く。
「理由は?」
レイカは少し笑った。
「単純だ」
「強いから」
あっさり言った。
「それだけ?」
「それだけ」
少し間を置く。
「あと」
「このダンジョン、最近おかしい」
俺は少しだけ目を細める。
「……そうか」
「気づいているか」
レイカは楽しそうに笑った。
「やっぱり普通じゃない」
腕を組む。
「管理局は色々言ってるが、現場にいると分かる」
「嫌な流れだ」
ユイが少し不安そうに言う。
「そんなにですか?」
「まだ小さい」
「でも、そのうち大きくなる」
レイカは俺たちを見る。
「だから戦力は多い方がいい」
「それに」
少しだけ視線を柔らかくする。
「ユイが君たちを気に入っている」
ユイが慌てる。
「ちょ、ちょっとレイカさん!」
レイカは気にせず続けた。
「私も悪くないと思っている」
そして言う。
「どうだ」
「うちに来る気はないか」
少しだけ沈黙が流れる。
相棒が俺を見る。
「主」
「どうする」
俺は少し考えてから言った。
「今すぐは決めない」
レイカは頷く。
「それでいい」
「急ぐ話でもない」
そして少し笑った。
「だが」
「気が変わったら声をかけろ」
「歓迎する」
ユイがほっとした顔をする。
「とりあえず今日は潜ります?」
レイカが槍を軽く持ち直す。
「もちろん」
そしてこちらを見る。
「せっかくだ」
「少し一緒に戦ってみよう」
その言い方は、どこか楽しそうだった。
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