14話
そこまで文字数行かんかったわ
翌日。
東京ダンジョンは、いつも通りの雰囲気であった。
入口付近では軽い雑談が飛び交い、装備の最終確認をする冒険者たちが並ぶ。昨日と変わらない光景だ。空気も穏やかで、特別な緊張感はない。
「今日は少し奥まで行くますか?」
ユイが小さく問いかける。
「様子を見ながらだな」
「無理はせん」
相方は短く言う。
三人で入り口を抜け、階層を下る。
十階層までは問題ない。スライムやゴブリンが散発的に出る程度。ユイは安定した《ファイア》で焼き、《ウィンドカッター》で牽制し、剣で仕留める。
二十階層。
魔物の密度がやや高い。だが、まだ想定内だ。
三十階層。
周囲には他のパーティもいる。五人編成、三人編成、ソロらしき者も見える。
誰も異変に気づいていない。だが。
「……やっぱり濃い」
俺は呟いた。魔力の流れが、昨日よりも明らかに重い。
相方が視線を奥へ向ける。
「溜め込んでおるな」
ユイは眉を寄せる。
「昨日言ってたやつ、ですか?」
「まだ断言はできない」
だが、世界でも何回も感じたこの嫌な感じは消えない。
三十五階層を越えたあたりで、それは起きた。
最初は、小さな揺れだった。足元が、わずかに震える。
周囲の冒険者が顔を上げる。
「……地震か?」
誰かが言った、その直後。
奥の通路から、低い咆哮が重なった。
一つではない。二つでもない。数十。
次の瞬間、魔物が流れ込んできた。
狼型、オーク、爬虫類型、混在。
本来なら階層ごとに分かれているはずの種が、まとめて押し寄せる。
「な、なんだこれ!?」
「数が――!」
悲鳴が上がる。前列のパーティが一瞬で崩された。魔物は止まらない。
後ろからさらに押し寄せる。
「……始まったな」
俺は息を吐いた。
「主、来るぞ」
「分かってる」
ユイの顔が青ざめる。
「これって……」
「スタンピードだ」
言葉にした瞬間、現実になる。前方の通路が、黒い波で埋まる。
冒険者たちが散り散りに逃げる。指揮系統はない。混乱だけが広がる。
「ユイ、下がるな」
「は、はい!」
俺は刀を抜く。同時に魔力を練る。
最前列の狼型が跳びかかる。
一閃。
横薙ぎで三体まとめて斬り飛ばす。
間髪入れず、魔法を重ねる。炎の壁を展開し、進行を一瞬だけ止める。その隙に、相方が前に出た。
静かな踏み込み。次の瞬間、空間が歪んだように見えた。
視界に入った魔物が、まとめて崩れ落ちる。
斬撃が見えない。ただ結果だけが残る。
「数が多いのう」
「奥が本体だ」
押し寄せてくる波は止まらない。
ユイが震える手を上げる。
「《ファイア》!」
火球が炸裂し、前列を焼く。続けて、
「《ウィンドカッター》!」
風の刃が横一線に走り、群れを切り裂く。だが、後ろから、さらに来る。
通常湧きではない。これは明確に放出だ。
ダンジョンの奥が、溜め込んだ魔物を吐き出している。
遠くで爆発音が上がる。別のパーティが必死に抵抗しているのだろう。
悲鳴。撤退指示。混乱。
「どうするんですか!?」
ユイが叫ぶ。
逃げれば助かる可能性はある。だが、今の勢いでは地上まで押し上げられる。
地上に出れば、被害は桁違いになる。
相方が、静かに言う。
「止めるか?」
俺は奥を見る。波のさらに向こう。
魔力の渦がある。源だ。
「……やるしかないな」
刀を握り直す。
「ユイ」
「は、はい!」
「離れるな。俺たちの後ろを維持しろ。無理はするな」
「分かりました!」
相方が、わずかに口角を上げる。
「久しぶりに、派手にやるかのう」
次の瞬間。俺は前へ踏み込んだ。
炎を纏った斬撃が走り、通路を焼き払う。
相方の刀が閃き、左右の壁際を一掃する。
強引に道を作る。押し寄せる群れの中を、逆流するように進む。
スタンピードは、まだ始まったばかりだった。だが、
その中心へ向かう者は、俺たちしかいなかった。
こういうので長引かせるのも違う気がするんですよね
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