「孤独が続くと……」
私は田舎の中学校に転校してきました。
なんでかは……触れないでください。
転校初日に出会ったのは、不思議な雰囲気の女の子。
名前は、瀬長素美ちゃん。
登校初日に友達ができたので、妹のカズミには負けてないと思います。
終礼が終わり放課後、私は大量に配られたプリントでパンパンになったクリアファイルをカバンに入れ、背負い、1人で教室を出る。
「帰りは1人かなぁ……、カズミはバレー部見学か……そういえば待っててって言われてたな……」
そう寂しく呟き、トボトボと廊下を歩く。
「風海ちゃん、1人で帰るの?」
「え、すーちゃん。いつの間に?」
「えへへ、ずっとだよ!」
すーちゃんはそう言って笑顔で私の手を握る。
「一緒に帰ろうね?」
「え、でも……」
「ん?……でもなに?」
私はすーちゃんの圧に負け、一緒に帰ることになりました。
「夢だったんだよねぇ〜」
「な、なにが?……」
「転校生と帰るのが……30年前くらいから」
「いや、すーちゃん、まだ産まれてないじゃん」
「え、産まれてるけど?」
すーちゃんは私を見て「なに言ってるの?」と目で訴えているようだった。
「あ、私の家こっちだからまたね」
「うん……また明日……」
私は小さく手を振り、1人になってしまう。
(すーちゃんってやっぱ、不思議な子だなぁ)
そう思っていると、私の後頭部にヘアゴムが飛んできた。
「いてっ……なにこれ、ヘアゴム?」
地面に落ちたヘアゴムを持ち振り返ると、バレー部の見学中のはずのカズミがいた。
「カズミ?、バレー部の見学はどうしたの?」
「途中で抜けてきた。お姉ちゃんを待たせるの良くないなぁって、でも私を置いて他の人と帰るなんてひどいよ!」
「ごめん……、すーちゃんの圧に負けちゃって……」
「すーちゃん?、あの隣にいた女の子?」
「うん……友達…かな……」
私がそう言うと、カズミは足を止めた。
「どうしたの?」
「嘘でしょ、お姉ちゃんに友達!?。明日は槍が降るわ……」
「降るわけないじゃん。槍なんて……」
私は笑いながら空を見上げる。
雲ひとつない綺麗な快晴だった。
「帰ろっか……」
「うん、帰ろ」
そして私たちは家に帰る。
「ただいま……」
「おばあちゃん、ただいまぁ」
「2人ともお帰り、学校はどうだった?」
おばあちゃんがキッチンの方から歩いてくる。
「それがね!。お姉ちゃんに友達ができたんだよ!?」
「あらあら、よかったわねカザミん」
「うん……嬉しかった」
「明日は私も混ぜて3人で帰ろうね」
「え、でも明日もバレー部の見学あるんじゃ……」
「あ、ほんとだ!。じゃあ見学終わるまで絶対待っててね」
カズミが頬を膨らませ、そう言った。
「わかったよ、すーちゃんと待ってる」
「約束だからね!?」
「うん、約束」
私はそう言って靴を脱ぎ、リビングに向かう。
カズミも私に続いて靴を脱ぎ捨て、リビングに走って行く。
「おばあちゃん、夜ご飯何?」
「今日はしゃけの塩焼きだよ」
「やった!、おばあちゃんのしゃけの塩焼き好きなんだぁ」
そう言ってリビングの椅子に座る。
「カザミ、カバン置いてからだよ」
「えぇ〜、別にいいじゃ〜ん」
「もう、じゃあカズミのカバンも置いてきてあげる」
「え、ほんとに!?。じゃあよろしくね!」
そう言ってカズミは私にカバンを渡す。
私はリビングから出て階段を上がり、私とカズミの部屋に向かう。
実は私たち、相部屋なんです。
部屋に入り、私はカバンを置き部屋を出ようとした。
(待てよ……カズミにありがとうって言われてないじゃん!)
私はそう心で呟き、こっそりカズミのカバンを蹴った。
リビングに戻ると、しゃけのいい匂いがしてお腹がなった。
「お姉ちゃん、お腹の音聞こえたよぉ〜?」
「もう!、そういうこといちいち言わないでよ!」
「顔、真っ赤になってるよ?」
カズミがくすくすと笑いながらそう言った。
「もう、恥ずかしいからやめてよ……」
「仕方ないなぁー」
「2人とも冷めちゃうから早く食べなさい」
おばあちゃんの言葉に私たちは口を揃えて、
「はーい」
そう言って箸を持ち、手を動かす。
私はご飯を食べながら今日のことを振り返る。
(すーちゃん……なんであんな冗談言ったんだろ?……30年前から生きてるって……)
「お姉ちゃん、お箸止まってるけどお腹いっぱいなの?」
「え、ううん。まだ食べるよ」
私はすーちゃんのことが気になりすぎて、お箸が止まっていたようだ。
「ごちそうさま!」
「え、もう食べたの?」
「うん、美味しかったからね!」
カズミはそう言ってリビングから出て、階段を駆け上がっていった。
私も食べ終わり、部屋に着替えを取りに行く。
「カズミ……私先にお風呂入るね……」
「うん!、私は自己紹介カード書いてるからね」
「自己紹介カード?」
「うん、私が考えたのクラスのみんなに配るんだ!」
カズミは自己紹介カードを書きながら楽しそうにそう言った。
「すごいね……私はそんなこと思い付かなかったよ」
「ふっ。まぁ、頭のできが違うからね」
カズミは少し煽るようにそう言った。
その言葉に少しムカっときて、少し強くドアを閉める。
私は少し早歩きで浴室に向かう。
「なによ……同じ人から産まれてきたんだからそんなに変わらないのに……」
そう不満を言いながら服を脱ぐ。
するとスカートのポケットから、朝拾った錆びている髪飾りが床に落ちた。
「え、これは朝拾った……」
私は震える手で拾い上げる。
(うわぁ、やっぱり錆びすご……って…あれ……意識が……)
そのまま私は意識を失った。
朝日に照らされ、私は目を覚ます。
「うぅ、眩しい……」
瞬きをしながら起き上がる。
目を擦り、隣を見るとカズミは気持ちよさそうに寝ていた。
「あれ……確か私は……浴室で……」
私は起こさないようにそっと立ち上がり、制服に着替える。
(おばあちゃんが運んでくれたのかな……)
そう心で呟き、私は階段を降りリビングに向かう。
「おはようおばあちゃん……あと、昨日はありがとう……」
「ん?、昨日ってなんのこと?」
「え……ううん、なんでもない……」
私は食パンを一切れ取り、そのまま一口食べる。
そして食べ終わり、家を出る。
通学路には誰も歩いていなくて静かだった。
(カズミが運んでくれたのかな……)
そう思っていると、誰かに肩を叩かれ、私は震えながら恐る恐る振り向くと、ジャージ姿の校長先生がいた。
「校長先生、なんでここにいるんですか!?」
「朝のジョギングだよ」
「すごいですね……学校の仕事もあるのに……」
私がそう言うと、校長先生が腰に手をついて自慢げに、
「でしょ?、もっと褒めなさい!」
「す、すごいです……」
「ふふっ、ありがとう。ところで鈴藤さんはなんでこんな時間に?」
「あ、えっと……友達を作るため……です……」
私は思いつきでそう言った。
「いいじゃんそれ!、めっちゃいい!」
「そ、そうですか?……」
「うん!、そんな頑張る鈴藤さんには私が特別にいい子ちゃんリストを作ってあげましょう」
「お、お願いします……」
「りょーかい!。あ、もうついたね」
校長先生との話が楽しくて、いつの間にか学校についていた。
「じゃあ私はもう少しジョギングしてくるね」
そう言って校長先生は、カズミに負けないくらいの速さで走っていった。
私は生徒玄関から校舎に入り、教室に向かう。
教室に入ると、1人の女子生徒がいた。
しかも私の隣の席。
私はそっと自分の席に座る。
「やぁ、転校生」
「あ、おはようございます……」
「そんなガチガチすんなよ、クラスメイトじゃん」
「あ、はい……」
「ん、あぁ、ごめん。私、三輪琴音。よろしく」
琴音さんは前髪をいじりながら挨拶する。
「よろしくお願いします……えっと私のn」
「知ってるよ、鈴藤風海。まだ親しくないから転校生って呼ぶね」
「あ、はい……」
「私のことは琴音とでも呼んでくれ」
「わかりました……琴音……」
「呼び捨てなのに敬語はおかしくない?」
琴音は笑いながらそう言った。
「あ、すみ……ごめん……」
「いやぁ、転校生は面白いね。仲良くできそうだよ」
「そうかな……でも私まだ友達1人しかいなくて……」
私がおどおどしながらそう言うと、教室に誰か入ってきた。
「眠いわぁ〜、って琴音ともう1人……誰?」
「おぉ〜これはこれは停学していた斤上姫瑠さんじゃないか」
「うるさいわね、それより質問に答えなさいよ、そこの女は誰?」
「あぁ、転校生だよ」
「転校生ですって?……」
そう言って斤上さんは私に近づき、睨みつける。
「姫瑠、そんな睨みつけんなって。転校生も怖がってるでしょ?」
「ちっ、わかったわよ……転校生ちょっと来て話あるから」
「あ、はい……」
私は恐る恐るついて行く。
斤上さんが向かった場所はトイレだった。
「ど、どうしたんですか?……」
「あんたどこから来たの?、それに名前は?」
「えっと……東京から来ました……鈴藤風海です……」
その瞬間、「ゴッ」という鈍い音とともに腹に激痛が走った。
私は痛さのあまりその場でうずくまる。
「あんた、どうせ私たちのこと田舎者だって思ってるんでしょ!?」
斤上さんは私の髪を引っ張り上げる。
「ち、違います。そんなつもりじゃ……」
「嘘ついてんじゃねぇよ!」
そう言って私のお腹を何度も蹴る。
私を蹴っている時の斤上さんの目は、獲物を見下ろす猫のように残酷で冷たかった。
そしてまた誰か、トイレに入ってくる。
「きるるん、また転校生いじめてんの?。また停学くらっても知らないからね?」
「そうだな、やっぱつばさは頭が回るな」
そう言って斤上さんたちは私を置いて、トイレから出て行った。
私はその場で膝を抱えて座る。
(なんで私が……なにもやってないのに……)
すると琴音がトイレに入ってきた。
「やっぱり……こうなった……」
琴音は悔しそうな顔をして私に駆け寄り、手を差し伸べる。
「ごめんね……守れなくて……」
「だ、大丈夫……、あと…琴音は悪くないよ……」
「……じゃあ今度、飯奢るよ……」
「え、そこまでしなくても大丈夫だよ」
私は慌てて両手を振り、断る。
「じゃあこれあげる」
琴音は私に写真を渡す。
写真には変な着ぐるみを着た琴音が映っていた。
私は思わず吹き出してしまう。
「なにこれ!?」
「人を元気にするコスプレだよ。今度一緒にどう?」
「え、あ、うん今度ね……」
そして私たちは教室に戻り、自分の席で私は授業の準備をしていた。
(朝から酷い目にあったよ……まだお腹痛いし……)
「誰にやられたの?」
「え?……」
心の声が漏れてたのか、隣の席のすーちゃんに聞こえてたらしい。
「声漏れてた?……」
「うん、ダダ漏れだよ。っで誰にやられたの?」
「えっと……斤上さんに……」
私は少し泣きそうになり、涙を拭いながらそう言うと、すーちゃんは少し怒気のこもった声で静かに「そうなんだ……」と言い、机に俯き寝てしまった。
「え?、寝るの?」と私はツッコミたかったけど、なんとなくやめておくことにした。
午前の授業が終わり、転校2日目の昼休み。
すーちゃんはあれからまだ寝ている。
(お、起こした方がいいかな……)
私はそうオドオドしていると、
「転校生……一緒に屋上いこ?」
猫の被り物をした、琴音が話しかけてくる。
「あ、うん……いいよ……」
「よーし、じゃあ行こっか」
「う、うん……」
「突然だけど質問ね。転校生は兄妹はいるの?」
「うん…いるよ……妹が1人……」
「いいね。私も妹、欲しいなぁ。転校生を義妹にするのもありかも」
琴音は揶揄うようにそう言った。
「え、それは……」
「ふふっ、冗談だよ」
琴音は猫耳の被り物を直しながら、屋上の風に髪を揺らして笑った。
私はそれにつられて、少しだけ笑った。




