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異世界で奴隷生活始めました:Retake  作者: 海峡 流
第零章 奴隷が主人を得るまで
9/43

《黒刃団》壊滅

 結論から言うと。


「…うん。《ハイセンス》があるとはいえ三十分はかかると思ったんだけどなぁ…十分程度でここまでできちゃうかー…」


 ものの十分程度、数十回の反復で四つ同時にぐらいは操れるようになってしまった。

 やってみるとわかるのだが『何をどうしたら一番いいのか』っていうのが勝手にわかってくる。

 あとは魔力の扱い方だが、これもだいぶ慣れた。魔法の維持の仕方とかもね。


「カナタが魔法を知って一日ぐらいだけど、これは三流魔術師ぐらいの実力は優に超えちゃったね。やっぱ僕の目に狂いはなかったみたいだ」


 ほおそりゃすごいな。


「ありがとうございます」

「……実際、すごい……というか…確実に…目立つと思うけど……?」


 ああ、ベルフェは案外常識を持ち合わせてるみたいだ。俺もこれが異常だということを認識せねば…


「あぁ。別に目立ったっていいんだよ。ただカナタも行き過ぎは注意してね?自制はきっちりするように。…間違っても崇められたりしないでよ?いっても英雄までだからね」


 と、釘をさされてしまった。というか英雄て…いいのかよ…

 まったく想像できないが…


「よし。じゃあもたもたしててもしょうがないし盗賊たちのアジトに行こうか」


 そういうとエリス様はまたこちらに手を差し出してきた。

 ベルフェも僕の肩へと止まる。


「――――!」


 なんだかよくわからない言葉でエリス様が呪文を唱えると、また周りの風景が変わっていった。


 そして盗賊のアジトの入り口までたどり着く。


「んー…見張りは二人か―…だけどめっちゃサボってるね…あ、ここからはあんまり何も言わないからカナタの自由にやってね。僕は後ろから見守っておくよ」


 そういってエリス様は俺の後ろに回った。たしかに盗賊たちは洞窟の入り口を挟むようにして座り込み、酒を片手にでかい声で話していた。やる気ちょっとは出せよ…

 深いため息をつきながら、俺は見張りたちに向かって手の平を差し向ける。


「…【シェイド】」


 一度の詠唱で四つの影を作り、盗賊二人の両脇の地面へと移動させる。

 もちろん男たちは気づかない。

 そして…


「【ジャベリン】」


 そう唱えただけで影から飛び出た槍は盗賊たちの体を貫き、二つの悪趣味なオブジェを作り上げた。

 うまく喉を潰したらしく、断末魔の叫びすら上げることができなかったようだ。

 魔力を止めると、それまで地面から微妙に持ち上げられていた男たちの体がどさ、と地面に落ちる。


「どう?初めて命を奪った感覚は」

「…いや、随分呆気ないなーと…」


 そう答えるとエリス様はクスクスと笑って、先へ進もうと催促してきた。

 こうして俺は無残な死体に成り果てた男たちの横を堂々と通り、アジト内への侵入を果たしたのだ。


 洞窟内の様子は俺が連れてこられた時とほぼ変わっていなかった。

 洞窟を少し下ると鉄格子が両脇に現れる。確か突き当りに鉄のドアがあったはずなのでその奥に奴らはいるはず…


 まぁ酒でも飲んでるのか寝てるのかは知らないけど。

 ちなみに魔族という種族は総じて夜目が効くらしい。洞窟内には光も何もなかったが、はっきりと様子を見れるので大丈夫そうだ。

 そう思って進んでいくと…

 ギィィィと音がして奥の扉が開いた。


「っ!」


 慌てて身を隠す。とはいっても壁に張り付くのが限度なんだが…

 エリス様はこっそり自分に魔法をかけて隠れもせずに堂々と俺を見守っている。どんな魔法を使ったかわからなかったので真似は出来なかったが。


 扉の奥からは男たちが三、四人出てきた。かなり酔っているらしく、陽気な声で騒ぎながら一番手前の牢屋に入っていった。

 しかしあそこにはたしか…


 その時、女性の悲鳴が聞こえてきた。

 舌打ちをして、奥の鉄の扉を確かめる。どうやら閉まっているみたいだ。

 ならば遠慮する必要もないと思って洞窟内を駆け出す。できるだけ静かに。


 洞窟内なので普通に影はあるが、一応【シェイド】を作っておいた。

 そして牢屋までたどり着いてみると…案の定、女性が男たちに襲われていた。


「いやっ!やめてください!」

「へへへ…嬢ちゃん。いつかはこうなるって覚悟してたんだろ?諦めろって…へへ…」

「そうだそうだ。おっと助けなんか期待するなよ?なぁに。大人しくししとけばすぐに終わるさ!うぇへへへ!」


 などと下種な会話が聞こえてくる。

 だが幸いまだ取り返しがつく状況のようだ。

 

 男たちは彼女に夢中なようで後ろには露ほども注意を払っていない。なのでこちらも遠慮なく…


「【ジャベリン】」


 一人ひとりを串刺しにしてあげた。

 だが二人ほどは喉をきれいに貫けなったらしく、「うげえええええ!」「あああああああ!ぐげぇぇぇぇ!」などと騒がれてしまった。

 クソッ…奥に何人いるかわからないがすぐに増援が来るな…だがその前に…


「…大丈夫ですか?」


 と、牢屋にいた少女に話しかけた。


「ヒゥっ!」


 声にならない悲鳴を上げられて後ずさられてしまったが。


「あー…申し訳ないです。俺が怖いでしょうがちょっと聞いてください。今から俺はこの盗賊団を壊滅させます。幸い捕まっている人はあなた一人みたいです。勝手に逃げるなりなんなりしてください。あ…でも森を抜けるのは危険すぎるか…」


「あぁ。その点は大丈夫。僕が彼女の安全を保障してあげよう」


 と、エリス様がいきなり姿を現して言った。少女は目をまん丸にしてびっくりしていた。いや俺もびっくりしたんだけどさ…


「えーと…この人は神様で、なんだか道中を保証してくれるみたいです。だからもう行って…」

 

 そこまで行ったところで奥の部屋が騒がしくなってきた。野太い声と金属のこすれる音がここまで聞こえてくる。もう時間がないか…

 そう思って少女を引っ張り起こし、洞窟の外へ向かって突き出した。


「走って!」


 そういうと少女は少し迷いを見せたが俺の意図を理解してくれたみたいだ。少女の口がかすかに「ありがとう」と動いた気がした。


 ちなみに少女の格好は薄手のシャツに外套だけだった。できれば靴を貸してあげたかったが今はそんな時間もない。


 少女が行ったのを確認すると、ちょうど奥から山賊たちがおいでなすった。

 少女を襲おうとしていた男たちの足元に発生させていた【シェイド】を扉の前に集めておく。

 そして盗賊たちが扉を開けた瞬間…


「【ジャベリン】」


 漆黒の槍を扉に向かって突き出した。それは山賊刀マチェーテ片手に飛び出そうとしてきていた男二人ほどを串刺しにする。


「ひっ!」


 後続の盗賊たちはその光景にビビったらしく、奥の部屋へと帰って行った。

 俺は【ジャベリン】の魔法を解除し、奥の部屋へと踏み入れる。

 奥の部屋には松明がつけられており、その松明の炎が総勢九人の盗賊を浮かび上がらせていた。

 ほとんどのやつは俺のことをみて震えあがるだけだったが、頭領をはじめとする数人が驚きに目を見張っている。


「な、なんでおめぇがここにいやがる!だ、脱走してきやがったのか!」

「正確には違うが…お前たちにはもう関係がないことだ。…死ね。【ジャベリン】」


 わざわざおしゃべりをする必要もないだろうと思い、俺に近かった奴ら四人を新たに死体に変えた。


 だが俺はいまいち理解していなかった。追い詰められた人間がどういう行動に出るのか…


「くっそ…がぁぁぁ!」

「っつ!」


 突然死体になった仲間の影から頭領が飛び出してきたのだ。その手には山賊刀マチェーテ

 大振りだったため、幸いによけられたが冷静に剣を振るわれると…


「よけるなぁぁぁぁ!」

「ぐぅっ!」


 頭領は振り下ろした剣をそのまま横なぎに振るってきた。即座に対応できず、わき腹をざっくりと切られてしまう。

 しかも突然与えられた痛みに驚き、【シェイド】との繋がりを切ってしまった。

 チッ!かくなるうえは…


「うぐぁ!」


 とりあえず距離を取りたかったので頭領を蹴り飛ばした。身体強化された蹴りは思いのほか重かったらしく、腹を蹴られた頭領はその場にうずくまる。


「う、うわぁぁぁ!」


 だがしかし、その後ろから取り巻きが飛び出してきた。

 くそっ!間に合うか!?


「はぁはぁ…ベルフェ!形象崩壊を頼む!」


 と、ずっと肩に止まっていたフクロウに頼む。


「【形象崩壊】」


 効果は覿面で、俺を切り裂こうとしていた山賊刀マチェーテはぼろぼろと砂のように崩れ去った。


「そのまま全員の武器に頼む!はぁ…【シェイド】!」

「…ん。【形象崩壊】」


 俺が【シェイド】を四個同時に発生させると同時にベルフェの魔法によって盗賊たちの武器は消え去った。


「ひ、ひぃぃぃ!やめてくれ!俺はまだ…!」

「はぁ…はぁ…黙れ。【ジャベリン】」

「ひぐぁっ!ぁ…ぁ……」


 盗賊たちのか細い断末魔が部屋に響いた。だがそれもすぐに静まる。

 

 終わった…

 わかったことは、人を殺すのはあんまり気分のいいことじゃないってことだな…

 あと刃物で切られるとめっちゃ痛い。


「おめでとうカナタ!これで僕に仕事をこなせるっていう資質が示せたね。女の子も助けられたし…あぁそうだ。外にお母様たちも来てるんだよ。まだカナタは強くなれる。じゃあ行こうか」


 いままで気配を消していたエリス様はそう話しかけてきた。もし、さっき俺が本当に死にそうになったらエリス様は助けてくれただろうか…なんて考えが刹那、頭をよぎる。

 しかしもう終わったことだ。気にしないのがいいだろう。


 外へと向かっていくエリス様の背を追いかける。こうして、俺はざっくりとやられた腹をおさえつつ、盗賊たちのアジトから外へ生還した。

 ということでもうそろそろ零章も終わりです!

 詰め込みすぎた感がありますが…あとの祭りですね笑


 ちなみに助けた女の子ですがだいぶ後に登場する予定です。


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