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異世界で奴隷生活始めました:Retake  作者: 海峡 流
第零章 奴隷が主人を得るまで
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夜の神の系譜

 洞窟の外は当然誰もいなかった。

 あの女の子は無事に逃げれたんだろうか…

 おもむろにベルフェが俺の肩を離れ、空中で人の姿へと変わり地面に降り立った。

 そしてエリス様、ベルフェともに何もないところへ片膝をついてしゃがみこむ。


「…え?」

「ほら。カナタも僕たちの真似をして。ちょっと傷は痛いだろうけど僕やベルフェよりもお母様の方が治癒魔法はうまいから…」


 そういわれたのでとりあえずポーズまではまねる。こんな感じかな…いてて…

 その姿勢で待つこと数十秒。ふと目の前の空間が揺らいでいることに気づいた。

 驚きは口に出さず、その姿勢を続ける。

 

 やがて、夜闇は三人の人影を作り上げた。その影もすぐに薄れ、月明かりに照らされてその姿が浮かび上がる。


 真ん中に立っている人は黒目黒髪、痩身の女性で、ドレスのようなものを着ていた。ドレスは見た者を吸い込んでしまうような不思議な黒色をしていて、とても綺麗だ。現れた三人の中では一番威厳があるような気がする。


 俺から見て右に立っている人はフードのようなものをかぶっていて顔はあまり見えない。背は小さいが、その背丈を優に超す大鎌を手にしていた。いかにも死神という感じだ。


 左に立っている人はベルフェと同じような露出度の高い服を着ていた。眼と髪はプラチナブロンドで、その眼は眠たげに伏せられている。特徴的なのは背中から生えている青みがかった極彩の翼だ。さらにベルフェと同じように角が生えていた。二本ではなく一本で、巻いていない、小さな角という違いはあるが。


 そのうち、真ん中の女性が声を発する。


「エリス。まずはご苦労だった。それにカナタよ、歓迎しよう。ようこそ、我々の世界へ。私はこの世界の夜を統べるもの、ニュクスだ。今宵はお前に力を授けにやってきた。…ん?怪我をしているではないか…こちらへ来い。治してやる」

「えと…はい。ありがとうございます」


 とりあえずそう返して立ち上がる。そしてニュクス様の前まで行くとまた跪いた。


「うむ。【夜闇よ、我が願いを聞き届けたまえ。この者に癒しを】」


 そうニュクス様は唱えた。

 へー…俺とは全く詠唱の種類が異なるようだ。というか今度の呪文は聞き取れたな。何か違いがあるんだろうか…

 するとニュクス様の手から蛇のような細長い影が飛び出し、俺の腹まで飛んでくると傷口をすっぽりと覆う。

 数秒経ってその影が離れると痛みはきれいさっぱり消え去った。傷口をさすってみるが、それもなくなっているみたいだ。

 本当に魔法って便利だなぁ…

 それとも目の前の神様がすごいのか。


「ありがとうございます、ニュクス様」

「よいのだ。今からエリスの手足になって動くのだろう?がんばるのだぞ。それではまず私からの贈り物だ。【夜闇よ、我が願いを聞き届けたまえ。この者の親愛なる友となるのだ】」


 …しばらく経っても何も起きない。だがニュクス様は満足げに頷くと言った。


「うむ。これで《夜》はカナタの味方じゃ。これから先の助けになるだろう。特に第一位階魔法【ニュクス】は自分が認識できる範囲を夜に変えることができるという壊れ性能じゃからな。役立てるといい」

「ありがとうございます」


 ニュクス様はどうやら夜をつかさどる女神様らしい。というか神様が個人にこんなに力とかあげていいのかね…


「じゃあ次は私ですねぇ…私はヒュプノスという眠りの神ですぅ…私からは【至上の眠り】とこの《ナイトメア》という魔物から作った靴を差し上げますわぁ…あちらの世界の人がこちらで結構困るのが履物だということですからぁ…大切に使ってくださいねぇ…?【至上の眠り】はぁ…その名の通り最高の休養を自分や相手に与える魔法ですわぁ…こちらもうまく使ってくださいねぇ…?」

「ぜ、善処します…ありがとうございます」


 次に出てきたのは左にあっていた女性だ。随分とゆっくりとしたしゃべり方をする人だなぁ…

 俺への贈り物はそこそこに、ベルフェの前にヒュプノス様は立った。


「あぁ…ベルフェ?」

「……なんだい?ヒュプノ…」

「またこっちに戻ってきたらぁ…一緒にぐうたらしましょう…?タルタロスの屋敷に招待しますからぁ…」

「…そうだねぇ……まぁ今回のことが…終わったらねー……」

「ええ…もちろんよぉ…あ、カナタさんも頑張ってねぇ…」

「あ、はい。」


 どうやら二人は知り合いだったらしい。まぁ眠りと怠惰だもんなぁ…気があったとしても不思議じゃないか。


「そ、それじゃあ最後は僕ですね…僕は死の神のタナトスといいます…僕からはこの【メメントモリ】というデスサイズを差し上げます…この武器は《死》の概念が材料ですので扱いには気を付けてください…あ、でも魔法と同じでカナタさんの魔力を流し込まないと本来の力は出せませんから…そこは注意してくださいね」

「は、はい。ありがとうございます…え?軽い?」


 タナトス様の背丈どころか俺の背丈すら超えるデスサイズは見た目に反してものすごく軽かった。まぁ不安にならない程度の重さはあるが。


「はい。そのデスサイズは持ち主には軽く、敵には重く感じられます…さらに魔力を流し込んだ状態で戦えば癒えない傷をつけることが可能です…さらに習熟すれば生命を操ることも可能です…あ、あとは使っていくうちにわかっていくと思います…よ?」 

「あ、あぁはい。わかりました」


 なんだずいぶん丁寧な神様だな…一番物騒なものくれたけど。ついでに肩書も一番物騒だ。


「あ、あともうひとつあるんですけど…この【武器支配アルマ・コントロル】です。この魔法は…うーん…せ、説明が難しいです…でも一回使えばわかると思うので…」


 使えばわかるってことね。てかこの神様口下手だなぁ…


「ありがとうございます」

「い、いえいえ!少しでも役に立つことを祈ってます…」


 そういうと神様は元のポジションに下がって行ってしまった。そういえば性別わかんなかったな…


「よし。これで我ら三人からの加護は授けた。我が夫とアレスの贈り物も授けたな?」

「はいお母様。《ハイフィジカル》と《魔術目録》は既に渡しています」


 その二つはエリス様以外が俺にくれたものてことか…?

 大人気だな…


「うむ…あぁ。言い忘れておった。我が授けた【ニュクス】だが、月に一度しか使えん。満月の夜が来れば使用回数は一回ずつ上がっていく。そのことにも十分注意するのじゃぞ?後は月の各名称も覚えておくとよいだろう。夜にもいろいろあるからな。そうだな…最初に使うときは【ニュクス満月パンセリノス】と唱えるのがいいだろう。あと言い忘れたことはないな…それではがんばるのじゃぞ。さらばじゃ」


 そういうとニュクス様たち三人は現れた時と同じように闇の中へと消えた。


 カナタは神々に愛されているようです。


 

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