第1話「自己紹介。」
はじめまして。
こういう書き出しに、あまり慣れていない。
小説は書いているけど、自分のことを書く機会はほとんどないからだと思う。
何を書けばいいのか、少し迷う。
自己紹介、というものはもっと簡単に書けるものだと思っていた。
名前や年齢、仕事や趣味を書いて、少しだけ人となりを添えれば、それで終わるはずだった。
でも、いざ書こうとすると、何をどこまで書くべきなのか分からなくなる。
どこまでが「自分」で、どこからが「書いていいこと」なのか、その線引きが曖昧になる。
そんなことを考えている時点で、向いていないのかもしれない。
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普段は営業の仕事をしている。
特別な業界でもなければ、特別な成果を出しているわけでもない。
いわゆる、どこにでもある仕事だと思う。
朝起きて、時間に追われるように準備をして、出勤する。
電車に乗ることもあれば、車で移動することもある。
取引先に連絡を入れて、アポイントを調整して、資料を作って、説明して、数字を確認して、また連絡をして。
気づけば一日が終わっている。
その繰り返しだ。
やりがいがないわけではない。
ただ、それを強く感じる瞬間も、あまりない。
達成感のようなものは、確かにある。
でも、それは長くは続かない。
次の日にはまた同じことをしているからだと思う。
良くも悪くも、慣れてしまっている。
なんとなく続けている、というのが一番近い。
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家には家族がいる。
詳しく書くほどのことでもないけど、帰れば誰かはいるし、いなければいないで静かなだけだ。
テレビの音が聞こえることもあれば、何も聞こえない日もある。
食事の時間が合う日もあれば、それぞれ別に済ませる日もある。
特別仲がいいわけでも、悪いわけでもない。
たぶん、どこにでもある普通の距離感だと思う。
それが当たり前だと思っているし、疑問に思ったこともあまりない。
少なくとも、自分ではそう思っている。
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趣味で、小説を書いている。
といっても、本当に趣味の範囲だ。
空いた時間に、思いついたものを書いているだけで、特別な技術があるわけでもない。
文章が上手いわけでもないし、構成に自信があるわけでもない。
ただ、書くこと自体は嫌いではない。
むしろ、何も考えずに書いている時間は、少しだけ楽だと感じる。
誰かに読まれたい気持ちはある。
それは間違いない。
せっかく書いたものだから、誰にも見られないまま終わるよりは、誰か一人でもいいから読んでほしいと思っている。
でも、それを強く意識しすぎると書けなくなる気がして、あまり考えないようにしている。
読まれることを前提にすると、急に手が止まる。
何を書いていいのか分からなくなる。
だから、できるだけ「誰にも読まれないもの」として書くようにしている。
その方が、楽だからだ。
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これまでにいくつか投稿してきた。
「君が物語を奏でるなら」とか、
「調査記録:長内直人」とか、
「彼は嘘をつかない」とか、
「この人、知りませんか?」とか。
ジャンルもバラバラで、統一感はない。
そのとき思いついたものを、そのまま形にしているだけだ。
長く続いた作品もあれば、途中で止まってしまったものもある。
理由は特にない。
なんとなく書かなくなって、そのまま、というものがほとんどだ。
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正直に言うと、あまり読まれてはいない。
特に「君が物語を奏でるなら」は、ほとんど伸びなかった。
自分では、それなりに気に入っていた作品だった。
書いていて楽しかったし、続きを考えるのも苦ではなかった。
それでも、数字は伸びなかった。
更新しても、ほとんど変わらない。
時間が経っても、変わらない。
まるで、最初から誰もいなかったみたいに。
誰かに読まれたいと思って書いたはずなのに、
誰にも読まれないまま、止まっている。
……まあ、いいと思っていた。
最初から、そういうものだと思えばいい。
読まれないことに慣れてしまえば、それで済む話だ。
読まれない方が、楽だからだ。
変に期待しなくていいし、裏切られることもない。
誰にも見つからないまま、
終わるはずだった。
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ホラーは、少しだけ違った。
ほんの少しだけだけど、閲覧数が増える。
大きな変化ではないし、目立つ数字でもない。
それでも、確実にゼロではない。
更新するたびに、わずかに増えていく。
時間が経っても、少しずつ増えている。
それがどういう意味を持つのかは分からない。
ただ、数字として残っている。
それだけで、少しだけ続ける理由になっている。
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コメントは、来たことがない。
一度もない。
だから、誰が読んでいるのかは分からない。
本当に読まれているのかどうかも、正直よく分からない。
数字だけが増えていく。
理由も分からないまま、増えていく。
それが当たり前になっている。
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気がついたときに確認して、少し増えていると、なんとなく安心する。
減ることはないからだと思う。
増えるだけなら、それでいい。
それ以上は望まない。
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特別なことは何もない。
誰かに誇れるような実績もない。
ただ、普通に働いて、普通に生活して、趣味で小説を書いているだけの人間だ。
こうして書いてみると、本当に何もないなと思う。
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まあ、それでいいと思っている。
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これはわたしの自己紹介。
あなた達に、少しだけわたしを知ってもらうためのもの。
たぶん、それで十分だと思います。




