エーゼル
「午後は基本剣術実習だったよね。ボクには必要ないから寮でゆっくり休むよ。」
アリエットはそういって寮に帰っていった。俺は急いで昼飯を食べると実習に参加する。
実習ではいろいろな剣の基本的な使い方を習った。長剣、短剣、大剣、突剣と試してみたが、どれも自分には向いてないように感じられた。強いて言うなら短剣が一番使いやすかった。
この実習では二人の生徒が目立っていた。ルナールとリオンだった。ルナールは長剣の扱いが非常に上手く、教官すら驚嘆するほどだった。リオンは大剣に優れていた。本人の桁違いの力と非常に合っていた。もちろん、下地となる技術もしっかりしていた。ルナールが正統派剣術ならリオンは実戦的剣術であった。
他にも何人かは目立った生徒がいたが、ほとんどは変わらない力量だった。カストールは俺よりちょっと上手いくらいだった。
実習後、残って練習をする生徒が何人かいた。俺も練習をすることにする。やはり剣はある程度使えた方がかっこいい。短剣は小型の怪物と人には有効だが、大型の怪物には相性が悪いそうだ。父親に習ったのは対小型怪物用だったようだ。俺は対人用の型を復習する。
「ねえ、よかったら、対人稽古をしないかな。」
しばらく、型の練習をしていると、エーゼルに声をかけられた。エーゼルも基礎科目をすべて受講していたので何度も話していた。ちょっと引っ込み思案だが芯の強い少年だ。
「ああ、いいよ。」
俺は、対人稽古を受けると、木の短剣を手に持つ。授業では対人戦では木の武器を使うように決まっていた。エーゼルは木の長剣と木の盾を構える。ちょうど横で見ていた先生が審判をしてくれるようだ。開始の号令をかけてくれる。俺は、号令と共にすばやくエーゼルに近づく。間合いの直前でエーゼルの左に回り込み、切りつける。俺の一撃は難なくエーゼルの盾によってはじき返される。体勢が崩れたところをエーゼルが切りつけてくる。しかし、俺はそれをかわすと切りつける。受けられる。かわす。切りつける……。
5分後、先生が終了の号令を出す。引き分けだった。俺はエーゼルの守りを崩すことができず、エーゼルも俺に攻撃を当てれなかった。だが、おそらくこのまま続けていると、俺の方が先に攻撃を受けていたはずだ。俺は息が切れているが、エーゼルはまだ余裕がありそうだ。どうやら、先生のジャッジに助けられたようだ。
それから先生の講義が始まった。反省会である。周りで見ていた生徒も参加する。やはり先生はわかっていたようで、このままだと俺は負けていた、と指摘された。後はいくつかの攻撃の仕方や足運びなどを教わり、エーゼルもいろいろと指導を受けていた。充実した実習だった。
「ねえ、補講はどうだった?」
帰り道、俺はエーゼルに質問される。やはり気になってたようだ。
「怪物と戦ったり、野営をしたり、いい経験ができだぜ。」
「すごいね。怪物を倒したんだ。」
「エーゼルでも大丈夫じゃないかな?さっきの盾の使い方とか上手だったし。俺は弓、アリエットは魔法がメインだったから、前衛の人がいるとさらに楽だったと思うよ。」
俺は素直に思ったことを言った。エーゼルはとても喜んでいた。俺のこの言葉がエーゼルの人生に大きく影響することを当時の俺はわからなかった。盾を装備する前衛職は大楯使い代表するように前線で怪物に狙われながら戦く危険なポジションである。したがって、需要は高いが人気は低かった。エーゼルは俺の言葉で大楯使いを目指すことになる。それは危険で過酷な道であることは疑いようがなかたった。




