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003.世界のルール…………ブレイカー

 元手が掛かっていない、2ガロン分のミードは、白金貨700枚になりました。

 いくら高価で売れたと言っても、ほんの推定3,500万円ほどです。

 元いた世界の政府からの依頼の裏の仕事の報酬に比べればかなり少ないですけど、全く命の危険性がない仕事なので、こんなモノですよね。

 ほんと、ミードにして単価を上げていなければ、ほぼタダ働きに近いです。


 少ないながらもミードの売り上げは独り立ち貯金として貯金しています。


 お師匠さまの元を離れるとき、独り立ち貯金は、一部をお礼として渡すのと、その後の生活資金になります。

 このことは、お師匠さまには内緒ですよ。


 そんな街からの帰り道。



   キンッ、キンッ、カンッ、カンッ、カンッ



 白を基調とし金色の部分がアクセントになった格式が高そうなハーフプレートの鎧を着た女性…………女騎士が戦っている。


「はぐれミノタウロスか」


 女騎士のことをはぐれミノタウロスって言っているわけじゃ無いですよ。

 戦っている相手がはぐれミノタウロスだって言っているんです。


 そう………戦っている相手ははぐれミノタウロスでしょう。

 消去法も何もそれくらいしか、思いつかないです。


 お師匠さまはこの国では超が付くほど有名人らしいです。

 そして、ここ住みだして約3年、用が無ければ、不用意に、この周辺…………お師匠さまの家の周りには近付くなって言われてます。

 悪い子を叱るときに『悪いことすると、フレイムマスター卿がやって来て、敵のように燃やされちゃうよ』…………とも。

 普通の人は憧れ、悪い人は怯える、元とは言え王国筆頭魔法使いであるお師匠さま。

 そのお師匠さまが住む家の目と鼻の先で活動する盗賊なんかいやしない。

 そんなことをするより、ドラゴンの巣に貯め込まれた財宝を狙う方が安全ですからね。


 つまり、この周辺には悪人がいないってことで、人が戦う相手となると…………そう、人にあらざるモノ。

 古い魔法石鉱山の鉱山跡がダンジョン化して、ミノタウロスが生み出されている。

 ごく希にダンジョンから、湧き出てくるが、ダンジョンモンスターなので、放っておけば、普段ならボク以外はダレともエンカウントすることなく1時間もすれば、すぐに消滅してしまうのだが、この女騎士はどうも運が悪かったようだ。


 女騎士とはぐれミノタウロスとほぼ互角。

 これがオークなら『くっころ』を楽しめたんだが…………も、もちろん冗談ですよ。

 だから、そんな目で見ないで下さい、。

 ボクが、『くっころ』って言いたい気分です。


 え?

 血の臭い?

 戦闘用の感覚に切り替えなくても感じる血の臭い……かなりの血が流れていると推測出来る。


 念のために切り替えた戦闘用の感覚で把握出来たのは、はぐれミノタウロスと女騎士の気配のみ…………。

 はぐれミノタウロスは、傷一つついていない…………が、血が付いたばかりの斧を持っている。

 女騎士の動きを見た限り………………怪我もしていないようだが…………はっ!!

 他にもいたのか!?


御鏡(みかがみ)流:縮地(しゅくち)


 仙術で、血の臭いの強い場所…………女騎士の傍に近付いた。

 何かを守るような感じで戦っていたので、ある程度、場所は検討が付いた。

 金色の…………さらさらの髪の女の子が倒れている。

 首の頸動脈に手を当てる…………でも、まだ身体は暖かい。


「こ、こんなところに、こども? 君、危ないから、ここからすぐに離れるんだ」


 女騎士は、ボクに気付いて、注意してきた。


 チラッと女騎士とはぐれミノタウロスを見る。

 どう動くべきか…………はぐれミノタウロスを倒してから、この娘を…………いや、この娘が先だ。

 1秒でも早く…………少しでも蘇生の確率を上げるんだ。


「こっちは気にするな。はぐれミノタウロスに集中して…………5分だ。3分でもいい。持ち堪えてろ」


 思わず、3歳児の演技を忘れて、素が出てしまった。

 時は一刻を争う。

 そんな状況だ。

 自己保身や自己満足のための演技をしている場合じゃ無い。


 うつ伏せに倒れている女の子に目をやった。

 背格好から言って、ボクと同じ位の年齢だろう。

 はぐれミノタウロスの斧の先が擦ったように背中からバッサリ…………さっきも確認したようにすでに息はない。


 アイテム収納…………アイテム収納魔法を使って仕舞ってあった敷物を取り出して女の子を仰向けに寝かせる。

 北欧の民族衣装であるブーナッドに似た赤を基調とした服。

 この国のいいとこのお嬢ちゃんが着るような服である。

 シルク素材、金糸、銀糸を使った豪華であり細かい刺繍…………そして、女騎士が護衛に付いているってことは、お忍びで、お師匠さまに会いに来たお姫様とか何かか?


 顔についた血を拭ってやる。

 本当に、傷らしい傷はなく、背中にある傷だけだ。

 綺麗な顔してるし、ウソみたいだが、死んでるんだぜ。


 いくら、この世界に魔法があるといっても、蘇生魔法はない。

 四肢の欠損を治すことの出来る完全回復(パーフェクトヒール)魔法があっても、魔法で死者は生き返らせることは出来ない。

 そう、それが、お師匠さまに教えられた『この世界のルール』である。




 死体は見慣れている。

 でも、それは死んで当然なヤツらの死体ばっかりだ。

 そう、世界に理不尽を産み出していたヤツらの死体だ。

 元いた世界で、そんなヤツらを何人に手を掛けたか覚えていない。

 それだけ、世界に理不尽が産み出されていたんです。


 そんな産み出された理不尽に翻弄される国民を少しでも減らすためにボクは手を汚してきたんです。

 約700年…………ボクたちの一族は、それを生業にしてきたんですよ。


 だからボクは、だからボクは、こんな理不尽な死は…………絶対、許しぇまちぇん。




 …………噛みました。

 こんな理不尽な死と良いとこで噛むボクも許せません。


 『この世界のルール』なんて、くそッ喰らえです。


 助けられそうな命をそのまま見捨てることは出来ません。

 そうです。

 こんな理不尽な死は本当に許せないんです。


 魔法がダメなら、医学があるんですよ。

 ボクには、簡単な医学なら多少の知識があります。

 それに万が一のために訓練はしてあります。

 もちろん、元いた世界でですけどね。


 転生特典より現代の知識の方がマジでチートです。


 この状況、救急処置が直ちに必要な心停止でも、心肺蘇生法でなんとかなるかもしれないんです。

 助かる可能性があるんです。


 だから、諦めてはいけない。

 太ももに隠してある自作の苦無を取り、女の子の服の前を切り裂き、胸をはだけさせる。


「貴様、何をっ?」


 そんな余裕も無いのに、チラチラッと、こっちを見ていたようだ。


「この娘を助けたかったら、はぐれミノタウロスに集中しろ!! こっちに構うな。全員やられたいのか!?」


 そう怒鳴る。


 3歳児のボクの小さな手を、息をしていない、女の娘の胸に手をやり、集中する。

 柔らかい…………女の娘特有の…………そうじゃない。

 子供特有のプニプニさだ。

 そうでもない。


 まだ、死後硬直が始まっていないんだ。


感電(スタン)


 身体中に電気が流れびくんっとする女の娘。


 自動体外式除細動器…………そう、電圧、電流を調整することで、ボク自身がAEDの代わりになるんだ。

 『貧乳が正義の世界』…………じゃなくて、『剣と魔法の世界』ならではの助け方です。

 蘇生魔法による蘇生でなく、現代知識による蘇生なら助けられると思うんです。


 斬られたことによるショック死なら、AEDによる電気ショックで蘇生は可能なはずです。


 心臓マッサージをし、人工呼吸をする。

 そして、本能の赴くまま、唇を胸に…………って、違います。

 心臓の音を確認するために、胸の中央付近に耳を当てる。


 くっ、まだだ。


感電(スタン)


 また、心臓マッサージをし、人工呼吸をする。

 そう、報われない努力なんて無いんだ。


 元いた世界と違って、心臓が少しでも動いてくれれば良い。

 この世界には、蘇生魔法はないが、回復(ヒール)魔法がある。


 魔法+現代の知識はとてつもなくチートです。


 そうです。

 ボクには、努力して覚えた完全回復(パーフェクトヒール)魔法があるんです。


 もう一度…………いや、何度でもやってやる。

 触り慣れてきた女の子の胸に手をやる。


 そう3度目の正直…………。


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 『死者蘇生(リザレクシヨン)魔法』を習得しました。

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 何百何十度目かの魔法取得…………えっと、ボクの通った後に世界のルールが出来ました。

 転生特典の方が、現代の知識よりマジでチートでした。


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