第33話 令嬢達の宣伝会議
「サロンにお客さんが来てくれないのは、宣伝不足が原因ね」
「宣伝って何です?」
この世界だとまだ宣伝の概念があまり浸透していない。
口コミとか常連さんとか。
そんなあやふやな物で商売が成り立っている。
「新しい物を広げるためには、宣伝は必須なの」
前世では商社社員として、多くの商品を拡販する手伝いをしてきた。
直接プロモーションとかは行いはしないかったが、新商品の宣伝会議には多く参加している。
「宣伝の基本はね。気になる存在になることなの」
こんなところで宣伝の基礎講座をするとは思わなかった。
エックハットとクララ、ノーラ。
まずはこの3人が宣伝の担当者ね。
「そのために、まずはサロンの位置づけが大切なのよ」
「位置づけって、また場所を移動するってことですか?」
「あ、その位置づけじゃないわ。心の中の位置付けよ」
うーん。教育が全く違う異世界だから話が通じないなぁ。
「ここに来る人は、冒険者ね。魔物の森にやってくる。その人たちにとって、このサロンはどんな意味があるのかってことよ」
「おいしいお茶が飲めるとこっ」
ノーラがシンプルな答えをくれる。
「じゃあ、考えて。冒険者はお茶を飲みたい時って、どういう時かな」
「それは、危険を乗り越えて帰ってきたとき、かしら」
「ううん、違うっ。魔物と戦って勝ったら、ビールよっ」
ノーラがおっさんみたいなことを言う。
確かにそうかも。
祝杯あげるならティーサロンより、居酒屋っていうのが定番ね。
「でも、冒険者って男ばっかりじゃないのよね。女子もいるんじゃない?」
「確か2割くらいは女性もいると知り合いに聞いたことがあります」
エックハットの知識は広いから便利ね。
家のことだけじゃなく、家の外の人と関わることが多い執事は知識も豊富じゃないと務まらない。
「その女性たちをメインのお客さんにしましょうか」
「えー。冒険者の女性って、女傑って感じがするんですけど」
確かに。女だと言っても冒険者するくらいだから、おとなしい人じゃなさそうな気がする。
「一番いいのは、今日の4人組みたいに。これから戦いだーって男の人に、ここに来るまでの道中の疲れを回復して、
最高の状態で魔物の森に入る。そんな人達かな」
なかなか鋭いですね。クララさん。
「それ、いいわね。その考え方がないからサロンに来ないのよ。そこから教育しないとダメね」
「教育って。メイドさんみたいに雇っているなら教育もできますが、お客さんですよ」
「教育はね。誰に対してでもできるものなのよ」
クリスが考えたのは、連続した10枚の看板。
漫画の一コマ一コマを看板にして、道を歩く冒険者に見てもらおうというアイデア。
道を歩いているときは、どうせ暇なんだから漫画みたいな看板があったら見てしまうもの。
「だけど、クリスさん。絵と文字で伝えるって言いますけど、誰が絵を描くんですか?」
「えっ、そんなの無理よ。私もあなたたちも絵が下手だから」
それじゃ、どうするのかって?
そういうときこそ、ガチャがあるんじゃない。
ガチャに看板10枚お願いして、最高の教育漫画を完成させてみるわ。




