第1話 スローライフの始まりはガチャ召還
「お嬢様、なんでいきなり山登りなんです?」
後ろから登ってくるのは、執事のエックハルト。
別荘についてきた3人の使用人のうち、ひとり。
「いいから、ついてきなさい」
この山は、我が男爵家の別荘の裏にある山。
男爵が狩りをする時のために、男爵直轄地として入山禁止になっている。
この山の山頂にあるはずなの。
私が今、求めているアレが。
高さ800mの山だから1時間ほどの登山になる。
貴族生活をしているこの令嬢の体力はあまりない。
だから、たかが一時間の山登りでも、息が上がる。
「待ってください。お嬢様」
エックハルトはもっと体力がないらしい。
もう40歳を超えているので、この世界ではもう高齢者扱いだ。
「もうすぐよ。ほら、見えてきた」
山頂は木が生い茂ることがない開けた丸い広場になっていて、直径15mくらいある。
そこには、ストーンサークルと呼ばれる古代の遺跡があり、真ん中の四角い岩を中心に回りに12の大きな石が円状におかれている。
「着いた」
「ふぅ。よかったですね。お嬢様」
「それでは、始めるわね」
「何をですか?」
真ん中の岩の上に登って、岩の中心に座る。そして、背負っている鞄から3つの卵を出し、岩の上に一列に並べる。
「今ここに、ガチャ樹を召喚する。天空に座します大いなる主よ。力を貸し給え」
天空より一筋の光がクリスの頭上に当たり、あたりは光に包まれる。
その光が消え去った後、岩の上に高さ1mほどの切り株が現れる。
「できた」
これが転生の時にクリスが手に入れたユニークスキル、ガチャ召喚だ。
「さて。やってみましょうね。何が出るか楽しみ」
ガチャ樹の全面には、卵を3つ置く場所がある。
そこに卵を並べて、スロットマシンのレバーの様な位置にある枝を前に倒してみる。
ガチャ樹が輝きだし、根の間にある穴からひとつ丸い物が出てきて、光が収まる。
その丸い物がカプセルだ。
「さて。最初の1個は何かな?」
《ルビーの杖:☆☆☆》
いきなりレア度3のアイテムだ。
魔法を手助けする効果がある。
相場は金貨10枚。
「ほら、エック。こんなものが当たったわよ」
エックハットに見せびらかそうと思って振り返ったら、
目を大きく開いたまま、固まっていた。