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第9話 公爵からの手紙

「クリスお嬢様にお取次ぎを」


単騎で男がひとり、男爵家の別荘にやってきた。

執事のエックハルトが対応する。


「すると、公爵様の特使だというのですか」

「はい。直々に公爵様の手紙を預かってきています」

「なんで婚約破棄したお嬢様のとこに手紙などよこすのか」

「それは手紙を読んでもらえればわかります」


結局、エックハルトだけでは判断ができず、お嬢様に話を通すことにした。


「ええっ、なんで今頃、元婚約者から特使が来るのよ」

「わかりません。手紙を読んでもらえれば分かると」

「わかりました。手紙を受け取りましょう」


私は特使ら会うことにした。

緊張した特使が手紙をひとつ寄越す。

たしかに、公爵の封印がある手紙だ。

本人の手による物と思われる。


ひとりで読むのも気が進まないので、特使と執事の前で読むことにする。


「封を開けて」

「はい、心得ました」


ペーパーナイフで封を開け、中の手紙だけを手渡してくれる。


「親愛なるクリス殿」

形通りの書き出しで始まる手紙には、婚約破棄に至る経緯が書いてあった。


「元々は、このほどの婚約は、お父上の男爵より提案があったものです」

これは知っている。公爵家とのパイプを強くするための政略結婚として、私は差し出されたのだ。


「6か月前にクリス殿にお会いしたとき、胸が高鳴ったのを覚えています」

おいおい。40歳のおっさんが何言ってるんだか。


「正直、この結婚は無理強いだと思い、男爵に断りを入れようと考えていました」

えっ、そうなの?


「しかし、初めて会ってクリス殿に挨拶したとき、気持ちよく話してくれて。もしかしたら、と思った私がいました」

それって、6か月前よね。私が転生する前ね。


「それから三か月の間、何度もお会いし、男爵が進める婚約も無理強いではないのかと思う所がありました」

うーん、そうなのか。いいのか、私になる前のクリスよ。


「ただ、三か月前に会ったときから、本心では結婚を望んでいないことが分かってきました」

あ、そのあたりから、私になったんだ。確かに、おっさんは嫌だから冷たくあしらってたなぁ。


「男爵にそのあたりを話、結婚はなかったことに、とお願いしたんですが、聞き入れてもらえません」

おいおい。父上、そんな話は一切きいてないぞ。


「この婚約は強引にでも解消しないと、クリス殿と無理強いで結婚することになる、と考えました」

うーん。そんなこと考えていたのか、おっさん。


「婚約破棄の話は、私側の一方的な事情とお話させていただきました。男爵の反対を突破するためです」

なんだよ。頭が固いのは父上だったのか。


「きっと、婚約破棄になれば、自由になったクリス殿は元気になると思っていました」

あー、めちゃ元気になったぞ。


「ところが、落ち込んで別荘で療養していると聞いて驚いています」

あ、そういうことになっているのよね。実家では。


どーも、公爵は私のために婚約破棄を言い出したっぽい。

そのあたりの事情は、この特使も知っているのだろう。


「この手紙に書いてあることは、本当ですか?」

「はい。もちろんです。クリス殿が落ち込んでこちらに来ていると知った時から公爵様にイライラしっぱなしです」


あー。そんなことが起きていたんだ。私達がガチャで遊んでいる間にね。

それはとっても失礼なことをしてしまった。


「公爵殿のお気持ち、理解しました。『私は田舎で楽しく暮らしている』と伝えてくださいね」

「ありがとうございます。きっと、公爵様はほっとされることでしょう」


うん。誤解は解消しておかないとね。


「あ、それと」

「なんでしょう」

「公爵殿にプレゼントがあります」

「えっ、本当ですか?」

「はい。特使様と一緒にプレゼントを受け取りに行きましょう」

「えっ、どこにですか?」


もちろん、ガチャ樹のとこですね。


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