第五十話:我は人間なりや?
気づけばブクマ90!?
うれしい、うれしい......
勇者君が何か話しかけてる。多分、説得だと思う。
処刑台の兵士が罪人を次々と読み上げているその間にも、勇者君は私を説得する。
周りが異変を感じてざわつき始める。
あぁ、急がねば。
私が敵対してることを確実にわからせる言葉はないかな?
それなら、一つ、確実なものがある。
みんなも気になっている?いや、気になってないかもしれない。私がなぜ【勇者君の本名を先程から言わないのか】だ。
もちろん、簡単な答えだ。
「ねぇ、東雲さん、聞いてるの!」
「ごめんね、勇者君。」
「ちょっと、僕の名前は......」
「あんたの名前、すっかり忘れたんだわ。」
満面の笑みで答える。
「......え?」
凍りついた顔の勇者君が手を掴んでいた力が緩んだ隙に、杖を呼び出す。
『やーーーーっと、俺の出番だなぁ!?派手にやっていいんだよなぁ!!!!!!』
黒杖が久々に暴れていいという私の意思を読み取り、嬉々として杖のなかで苛み続け、生者に憎しみを持つようになった魂たちを引きずり出していく。
広場は死霊魔術により阿鼻叫喚と化した
「なん......で......」
勇者君は絶望した顔でこちらに訪ねてくる。
なんで、なんでかぁ......うーん、強いて言えば......
「あんたは人の勇者で私は魔王の幹部だから?」
多分それだろう。
それしかない、はずだ。
まあ、異世界に来た仲間?みたいなのを考えてるんだろうけど......
「私、追放されてるし?君達も一度も探してくれてないでしょ?」
「それは、だって追放されたら......」
追放されたら、それは死と同じ。
でも、違う。
「いざとなれば、魔族領にいた人間の村を転々と見て回ることもできたよね?」
見てないのに言い切れる理由?ちょろちょろと通りすぎたネズミがアンデットになってるとか、考えたりしないでしょ?さすがにプライベートな部分は見てないからこそ、結婚に驚いたんだけどね。
「ライト・アロー!」
「っ」
勇者君に追い討ちをかけようとしたのに、邪魔が入っちゃった。伴侶の魔法使いか。実にめんどくさい。
「大丈夫!?」
「あ、ああ......」
む、他も続々来るような気がする。
めんどくさいのはごめんだからなぁ......
キュルルルルルッ!!
お、タイミングよくガルーダが二人を安全な場所へ運んだ合図の鳴き声を出してくれたし、帰るか。
そうそう、ちゃんとバイバイの挨拶しなきゃ、勇者君がかわいそうかな?
「それじゃ、さよな......」
ずぶり
肺の辺りに異物が入り込み、じわりと熱をもつ。
あとから痛みが、痛み?え?ぁ?なにこれ?
「逃す分けねぇだろクソやろう!」
私の胸を剣が貫いていた。
いつのまにか背後を勇者の先輩がとったらしい。
込み上げてきた血をごぼっ、と口から吐く。
「ひっ......」
悲鳴をあげたのは魔法使い。
人がこうなるのに慣れてないんだろうな。
ずるり
と剣が抜かれる。途端剣に邪魔されて流れてなかった血が血管を通らず体外に流れる。
まずい、死ぬ。
痛覚がマヒしてるといえど、これはかなり痛い。
「っぶ......こ、来い、グリフォンッ......」
杖を握り、中のそれを喚び出す。
勇者どもの追撃をは魔法と杖で弾き返す。
喚ばれたゾンビグリフォンは即座に私を空中からかっさらう。
逃げていく私の背後から何やらわめき声が聞こえた。
そのなかでもよく聞こえたのは
「どうして......どうしてなの!東雲さん!ねぇ、待ってってば!」
勇者の、まだ、理解したくないという悲鳴のこもった声だった。
意識が、闇へと沈む。
ぼんやりと、次、無事に目を覚ませたらいいなぁ、と思った。




