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夕食屋  作者: プリン
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夕食屋へようこそ

結婚式と披露宴を終えて、ウォルフと一緒に駅馬車に乗る。

港町に船が入港するので、新婚旅行ついでの仕入れ旅行。

道中の温泉と、クリスたちとの再会が楽しみだ。


王都でも大きな商会の次男坊と侯爵家の令嬢の結婚、結局華やかになった。

商人達、社交シーズンで王都に集まっていた貴族達が招待され…

お忍びで王太子もやってきた。今世では花嫁姿を見せてくれたな~と泣いていた。

余計な誤解を招くから帰れ!と早々に追い返した。


コルセットに必要以上のペチコートは嫌だぁと我儘を言った結果の

光沢のあるピンクベージュの体に沿った形のドレスも、大好評でした。

新たなドレス注文もあったらしい。

東方の布を大量に発注していて良かったとウォルフが笑っていた。


ルーデル商会で新たに売り出した物がもう一つ。ハンドクリーム。

リンさんと農場で作った物を見て、ウォルフのお父さんが量産体制を作り販売した。

通常品と香料入りの別注品がある。香料入りはバニラ、バラ、ラベンダーの3種類。

クリスたちへのお土産として持っていく事になった。

そういえば今回の船で醤油も輸入するらしい。お刺身、煮物…料理の幅が広がるのがうれしい。


クリスたちも結婚を、社交シーズンが終わった後の10月で考えているらしい。

実りの秋、魚も脂がのりだす時期、最高だ。

クリスの結婚式には参列したいとウォルフにおねだりをする。


王太子とオリビアさんは…

オリビアさんは前の結婚が白い結婚と認められ、わが侯爵家の養女となり、王太子との婚約が成立した。

本人は覚える事も、気を遣う事も多くて大変だと苦笑いしていた。

すでに国内の貴族の顔と名前は覚えたといっていた。

短期間で覚えた秘訣は見た目と名前の特徴からこっそりあだ名をつける事らしい。

どんなあだ名なのかは決して教えてくれなかった。

10月から王妃の外交についていくのだとか。

王宮の女官と侍女が陰でオリビアさんの事を…、覇王と言っているらしい。

それを聞いた王太子が「魔王」の間違いじゃと笑いながら言うので、殴っておいた。

10年教育を受けたけど、なんとなくオリビアさんには勝てない気がする。

覇気とか覇気とか覇気とか…


「僕の奥さんは何を考えているのかな」とウォルフがニコニコ笑いながら見ている。

最近ウォルフの笑い顔の違いが分かるようになった。

いつもの営業用スマイルと嬉しくてたまらない時の笑顔。

「これからの事を考えていたの。あと、あの時ウォルフがお店に来てくれて本当によかったなあって」と言ったら、ウォルフが本当の笑顔になった。

その後数十年、ウォルフと私は仲良く暮らし続けた。


結婚式から2年後、隣国で革命が起こった。

皇帝が追放され革命の余波は周囲の国に及んだ。

私たちの国でも血は流れなかったが、ゆっくりと影響を受け…色々なことが変わった。

王族中心の政治から徐々に議会中心の政治へうつり、貴族は少しずつ弱体化していった。

一部の貴族だけが、議員や官僚になったり、資産と商才を生かして財閥化するなどして、より力をつけて残った。


王太子は王に、オリビアさんは着々と信者を増やし…じゃなくて、王妃になった。

弟のアレクは、ユリアちゃんと無事に結婚。

ルーデル商会との縁を生かして商売に乗り出した。

宰相子息は色々暗躍しているらしい。元婚約者は押しかけ嫁になったらしい。

リザさんは、官僚になった。次々と来る見合いの話をすべて無視した挙句、年下の同僚と結婚した。子供を産んだ後も仕事を続け、文字通り国の為に持てる力を注ぎ続けた一生だった。


「火山があるということは、温泉もあると思うのよ」というオリビアさんの意見により温泉開発はその後も続き、温泉を利用した観光事業も発展した。

地盤の強固な王都に関しては、一番近い温泉でも馬車で2時間かかったが。一泊旅行で行ける保養地として人気となった。


時代の変化はあったけど、夕食屋は営業し続けた。

カフェのように、芸術家や革命家が集まり、変化の中心になるなんて事は全くなかった。

ごく普通の労働者が美味しく食事を食べて明日への活力につなげる為の店として、静かに役割を果たした。


「こんばんは、今日の夕食はなあに」

「キノコのシチューとポテトサラダですよ。どうぞ召し上がれ」

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