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第29話 未来へと


 再び旅へ出てから、一年。

 季節をいくつも越え、風の匂いも景色も変わった頃、セナ達は天蘭王国の王城へと戻ってきた。


 門が開く。

 懐かしい石畳。高くそびえる王城。

 そして、階段の上で待っていたのはシウォンだった。


「おかえりなさい」


 王の衣をまといながらも、その微笑みは変わらない。


「ただいま」


 セナは胸を張って答える。

 そんなセナの隣には、変わらずルソンが立っていた。


 視線が交わる。だが多くは語らなかった。




 その夜。

 王の私室にて、三人は再び顔を合わせた。


「今月、あなたの戴冠式を行います」


 シウォンが静かに告げる。


「準備は整っています。一年前の約束どおり、王位はあなたに」


 セナは一瞬だけ目を閉じ、それから頷いた。


「……ええ」


✾✾✾


 戴冠式前夜。

 城の回廊は静まり返り、月光(げっこう)が白い床を照らしている。

 中庭に面したバルコニーで、セナは一人立っていた。


「こんなところにいたのか」


 背後から、聞き慣れた声なセナの耳に届く。

 振り返ると、ルソンが立っていた。


「少しだけ、風に当たりたくて」


 沈黙が落ちる。

 だが、それは居心地の悪いものではなかった。


「……ルソン」


 セナが、ゆっくりと口を開く。


「わたし、あなたのことが好きよ。旅をしていくなかで、あなたはかけがえのない存在になっていた」


 手すりを握る指が、わずかに震える。


「王になる前に、この想いだけは伝えたかったの」


 ルソンはしばらく何も言わなかった。

 そして、静かにセナの隣に歩み寄る。


「……俺も」


 月明かりの中で、ルソンの表情が柔らかくなる。


「あなたのことを、一人の女性として好きです」


 その言葉に、セナの瞳が揺れた。

 嬉しさと安堵が混じり、思わず笑みがこぼれる。


「私、あなたをそのうち将軍にするわ」

「……は?」

「そしたら、あなたと結婚できるもの」


 あまりに真剣な顔で言うから、ルソンは吹き出した。


「はは、姫さまならやりかねなさそうだ」


 苦笑しながらも、その目は優しい。


「姫さま」


 そっと、ルソンはセナの頬に触れる。


「俺の心は、いつもあなたのそばにあります」


 そして。

 そっと、口づけた。

 淡く、優しく。

 ゆっくりとルソンの熱が離れる。

 セナは頬を赤く染めながらも、嬉しそうに笑う。


「わたしもよ」


 そっと胸に手を当てる。


「私の心は、いつもあなたにあるわ」


 月が、そんな二人を照らしていた。

 これから先、何があったとしても(ルソン)は私の側にいてくれる。

 それが何よりも心強く感じた。


✾✾✾


 翌朝。

 王城は祝賀(しゅくが)の装いに包まれている。 そんな中、待機部屋の扉がノックされた。


「セナ」


 入ってきたのは、シウォンだった。


「そろそろ、戴冠式が始まります」


 穏やかな声。

 セナは深く息を吸う。

 そして、頷いた。


「ええ」


 隣に立つのは、専属護衛であるルソン。

 幼なじみ三人の視線が交わる。無言の誓い。


 扉がゆっくりと開かれた。

 長い回廊の先に、玉座の間が見える。

 王女は、王となるために歩き出す。

 新たな時代が、今まさに幕を開けようとしていた。

これにて【完結】となります!

セナとルソン。天命の盾の仲間達の旅にお付き合い頂きありがとうございました!


これから天蘭王国の王として様々な困難や苦難が待ち受けてますが、外の世界を旅して城の中にいる頃よりも成長したセナなら大丈夫でしょう。


話は変わりますが本作は【王女が大切な人を身内に奪われる】×【幼なじみの護衛と王女が外の世界を旅していく】をテーマに生まれた作品となります。


私は幼なじみって関係性と主従物が三度の飯より好きなので、また和風か洋風の王国物を書けたらいいなと思います。また作者マイページからお気に入りユーザー登録をしていただけると嬉しいです。

感想や★評価なども、とっても励みになります……!


では、また次の作品でお会いしましょう。

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