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純粋少女と不良少年  作者:
好き と 嫌い
37/51

36 もう一つのクリスマス







時間帯としては、クリスマス。

特に用事があるわけでも、仕事があるわけでも、ましてや彼女がいるはずもない。

だから、朝から自分の部屋にこもっている(ひじり)を、からかってやろうとした。

なのに……。


「聖、お前何やってんだ?」


聖の部屋に入ると、部屋の(あるじ)は服を着て、鏡の前でうんうん(うな)っていた。

いや、別にいいんだけどさ。

センスないとか、そういうことじゃないんだけどさ。

服が少ないんじゃないのか?

タンスが小さい、小さい。


「いきなり入って来るんじゃねぇよ!」


案の定、怒鳴られた。

合鍵を持っていることを知らないから、あんまり警戒してなかったんだな、こいつ。


それよりも、何で少ない服でファッションショーしてるんだ?

……あぁ、そうか、クリスマスだもんな。

デートぐらいするか、普通は。


「ほうほう。 その顔はデート服に悩んでいる様子」


聖は何で分かった!というような、衝撃的な顔を、無表情で表した。

普段から仏頂面だから、顔が硬いんだよ、お前は。


「そういうことなら、耀(よう)くんにお任せだ!」

「だが断る」


断られた。

しかし、諦めないのが耀くんだ!


「よし、俺の服を貸してやろう」

「人の話を聞け」


人の話を聞かないのも耀くんだ!

……いや、そんなことはないんだけどね。


15分間、聖をモデルにして、やっと収まったのが無難な服だった。

見た目不良とか、ギャル男っぽいんだけどなぁ。

派手な服、全然似合わないんだもん。


「もう、家出るから」


そう言って、聖は大人の一歩を踏み出していった。

もう、二歩か三歩を進むんじゃないか?

本当はもっと、会話とか色々あったけど(はぶ)く。

彼女いないの?って聞かれたけど、いねぇよ。

教師は恋愛する暇なんざ、ねぇんだよ!


「ま、デートのお相手は、那子(なこ)ちゃんだろうな~」


耀くんはお見通しなんだよ。

……勘がいいヤツは、察しぐらいつくけどな。

大半の人は、聖が那子ちゃんをパシッてる風に見えてるんだけどさ。

最近は誤解が解けてきているそうで、結構なこった。


「昼飯はコンビニでいいか、聖いねぇし。 夕飯どうすっかなぁ~?」


ぐぅわぁ~…、と豪快な伸びをして、家事に励もうとする俺、切ない。

食器片付けて、洗濯して、あぁ、後買い物も行かないとな。

牛乳が切れてたんだっけ。

聖、飲みすぎだろ。

一日で半分は飲んでるぞ、あいつ。


「あっ、でも、明日はクリスマスセールとかで、スーパーの商品が安くなるはず!」


……主夫化してきたなぁ。

そう思う、今日この頃。


午後を少し過ぎた頃、一先(ひとま)ず家事を終えて、買い物をしに、外へ出た。

鍵はオートロックだから戸締りの確認はしなくていい。

だけど、昔の(くせ)で閉まったかどうか確認してしまう。

いつまでも直らない癖なので、あまり気にしないようにはしているけど、

近所の人は俺を(いぶ)しげに見ていたりする。

もう慣れたけどね。


「寒くなったなぁ……」


車の免許はあるけど、車自体は所持していない。

あんまり乗らないし、学校も近いし、必要ないからだ。

でも、手袋ぐらい着けてくればよかったなぁ、と少し後悔しながらも、近くのスーパーに向かった。

近場といっても、多少歩く。

その道中、クリスマスシーズンなのは分かるが、商店街を(のぞ)くと、やや(にぎ)わいを見せていた。

正月もあるし、その買出しとかする人もいるんだろうな。

ケーキ屋なんかは、儲かってるんだろうな。

とか、思いながら歩く。

今日は、いつもより寒い。

吐く息も白かった。


今年のクリスマスは一人か……、と思うと、空しい。

去年は彼女がいたような気がするなぁ。

覚えてないけど。

酷い話だと思うだろうけど、実際、付き合った時間は短かった。

そして何よりも、思い出も何もなかった。


カラン、カラン……。


と、音がしたので、ふと、ケーキ屋を見た。

繁盛(はんじょう)してそうなケーキ屋から、見覚えのある人物が出てきた。


「やぁ」


そう声をかけると、その人は俺を見た。

嫌そうな顔まではしなかったが、怪訝そうな視線を向けていた。


神林(かんばやし)先生、何でここにいるんですか?」

「俺はここの近くに住んでるんだよ。」


そう言っても、その人―斎条加奈は、訝しげな視線を俺に投げつけていた。











まだクリスマスネタ続きます。

長くなったから、ここで切る。

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