↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
純粋少女と不良少年  作者: 朔
好き と 嫌い
PR
36/51

35 好きになってくれて、





店から出て、プラネタリウムへと向かった。

プラネタリウムは16時に上映された。

説明もあったけど、そんなのは真面目には聞かない。

散らばってる星を、ただ、ただ、眺めていた。

それから、上映の途中で、突然那子(なこ)が話し始めた。


「お父さんね、天文学者になりたかったんだって」

「なりたかった……?今は?」

「今は、旅行関係の仕事かな」


何か、いきなりディープというか、反応に困ってしまう質問をされてしまったな。

まぁ、那子の思い出の場所っていうか、そんなところだし。

そんな話をしたい気分なのかもしれない。


「天文学者って、なるまでが大変だし、なってからも手探りって感じじゃない?」


これは私の見解なんだけどね。と言った那子は、いつもと違い、

真剣味でも帯びているかのような顔付きだ。

そんなことを聞かれても、俺には分からないんだけどな。

それは那子も察しはついているようで、勝手に話を進めていく。


「お父さんもそれは分かってたから、今は違う仕事をしてるんだけど、昔は夢だったんだって。

 だけど、それも夢でしかなくて、現実とは違うからね。

 ずっと星とか宇宙に、憧れっていうのかな、そんな感じで、いつか宇宙に行ってみたいとかね。

 だったら宇宙飛行士でも良かったんじゃないの、って聞いたら、

 自分の力で宇宙を開拓したかったんだ、って言ったの。」


そこで、那子は一呼吸置いた。

手に持っていた缶ジュースを一口飲んで、また、口を開いた。


「でも、やっぱり現実は厳しくって、結局、夢を諦めたんだって。

 親の反対もあったのね。

 でも、お父さんは今でも宇宙にはロマンとか、持ってるの。

 大人にもなってそんなこと、って思うけど、でも、それはそれで、いいのかもね」


そう言って、那子は俺を見て、微笑んだ。


「私もお父さんに似て、夢、見てるのかも」

「何を?」

「お父さんみたいに宇宙には別段、興味は無いし、夢っぽい夢じゃないんだけど」


それでも、夢は夢でしかなくって。

それは叶わなかったら、夢でしなくって。

現実にならなかったら、夢でしかなくって。

誰でも夢は見るけど、見るだけで。

私も夢は持ってるけど、持ってるだけで。

夢が叶う人は、一握りの人間だけで。


「初恋は実らないって言うよね」

「あぁ……、そうだな」

「でもね、人が心から恋をするのって、一度だけで、それが、初恋なんだって」

「…………」

「どっちも、誰かが言った言葉なんだろうけど、どういうことなんだろうね?」


分からない。

俺はそう答えた。

そう、答えることしか、出来なかった。

那子の夢は何か、それは聞き出すことは出来なかったけど。

那子が最後に話したことと、繋がりとしては、きっと、関係があることなんだろうと。

そう、思うことにした。


「私ね、プラネタリウムに来ると、色々と考えちゃうの」


自分はここにいるけど、宇宙から見ると、この星みたいに小さいんだろうな。

自分という人間は存在しているんだけど、どれほどの人が私を認識しているんだろうか。

お父さんは出張中で家にはいないけど、私のことを考えてくれていると、

愛されていると感じていいのかな。

この世界は一つしかないけど、他の世界というものはあるんだろうか。

私のことを好きって言ってくれる人は、どれくらいいるのかな。


―私は、誰かを好きになることがあるんだろうか―


「とか、ね」


周りがパッと、明るくなった。


『上映は終了致しました。 ご来場、ありがとうございました』


アナウンスが聞こえ、座っていた人たちが外へと向かう。


「私達も、行こっか」

「……ん」


外は、寒かった。

風こそ吹いてはいなかったが、寒かった。

もう、冬だ。


「お腹空いちゃったなー、マックでいいよね?」

「あぁ、そうだな……」


那子はさっきとは違い、笑顔だった。







帰り道。

デートも、もう終わりだ。

そろそろ、学生が外に出る時間ではなくなる。

ムードも何も無い、普通の住宅街を、学校帰りのときのように、歩く。

そんな、帰り道。


「ごめんね。 プラネタリウムのとき。いきなりあんなこと言われたら、困るよね」

「いや。那子が普段、そんなこと考えてるとは思わなかったから。

 少し驚いたけど、那子のこと、知ることができて、良かった。」

「何か、色々カミングアウトした、って感じだけどね」


でも、本音でもないんだ。

思っただけ。

そう言った那子は、少し寂しそうな、悲しそうな、顔をした。


話している間に、嵐家に着いた。

楽しかった時間も、終わりだ。


「送ってくれて、ありがと。楽しかった」

「あと、さ」

「ん?」

「は、初詣(はつもうで)!行かないか?」

「初詣?」


終業式の日、峰に誘われたから、那子にも言っておかないと。

と、いうわけで、今、言った。

タイミングとしては、悪いかもしれないけど。


「峰に誘われたんだ。斎条とか、呼んでさ」

「あぁ、いいね。誘っておく!」

「じゃあ、今度、また連絡する」

「うん。」

「それから」


返事を聞いてから、俺は鞄に入ってたUSBを取り出して。


「これ」


と言って、那子に渡した。


「何?」

「できたんだ、小説」


素人が書いた小説だけど、と付け加えた。


「え?」


那子は驚いた顔をした。

そう。

そのUSBには、俺が頑張って書いた小説が保存されているのだ。


「本当に?」

「うん」

「できたんだ?」

「そう、です」

「…………」

「だから、見て、ください」

「わ、かりました」


お互い、歯切れが悪いな。

タイミングが悪かったのか?


「私、本当に聖(ひじり)君が、その、小説書いてくるとは、思わなかった」

「え、何それ?」

「いや、あの、だって、私、元々冗談で言ったことだったし……」


別に、期待してなかったわけじゃ、ないけどね!

と、那子は弁解したけど。

何だかな。

ちょっと、那子、酷くないか?

俺、結構真剣だったのに……。


「…だから、あの、那子」

「はい?」

「俺と、付き合うこと、考えておいて、ください」

「うん」


那子は笑顔で返事をしてくれた。

何か、ちょっと、ほっとした?かもしれない。


「それじゃあ、見ておくね。見終わったら、連絡するから」

「おぅ」

「またね。プレゼント、ありがとう。それから」


好きになってくれて、ありがとう。

そう言って、那子は家の中に入っていった。











那子だって、色々と、たくさんのことを考えているんですよ。

でも、聖が何だか奥手に見えてきたな。

本当の聖はへタレなんだ。


色々と歯切れが悪いなぁ。

しかも、これ、初デートだよね?

重い、思いが重いなぁ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。