8話 印象は最悪
「重要な書類を持ってくるわけないだろう。試したんだ」
第二王子は私が勧めるまでもなく目の前の椅子に座った。そして、肩をすくめて両手をあげながらやれやれと言った風に息を吐く。そんな目の前の相手に、殺意が芽生えても仕方がないだろう。
テーブルの上で握った手がふるふると震える。
私がどれだけ不安になってどれだけ心に負担があったと思うの? それを試した? 何のために? 理不尽な内容だったら、許さない。
「何故ですか?」
「まず第一にお前に魔法の力が開花しているのであれば王族直属の交渉をしようと思っていた。第二に、魔法の力でなくとも当てられる占いなのであれば、今後のことに協力を仰ごうと思っていた」
「それであれば普通に協力を仰いでください。印象最悪です」
思ったことがもう口からついて出る。けど、第二王子が気にした様子はなく眉を上げて笑った。笑うとこじゃないからっ。
「ずいぶんはっきりと物を言う。それでこそ協力を仰ぎたいと思ったわけだが」
イヤだという気持ちを込めてねめつけると、目の前の相手は口端をあげたまま椅子の腕に肘を置いて小ばかにしたように首を傾げ、足を組む。
「試したのは悪かった。だが、俺も第二王子という立場上、ただ言うことを聞くだけの人物はいくらでもいる。だが、俺が欲しい協力者は、俺に対して引け目を感じない人物が良かった。それに分析し、困難を打破しようとする力は、より収穫がある」
「お断りします」
お願いされる前にぴしゃりと言い放った。それが人に謝る態度か。だいたい、人を試すようなヤツと協力関係になりたくなんてない。
しかし、断られても第二王子は表情を崩さない。胸元に手を入れて何かを取り出す。
「そうか? きっとお前にも理がある話だと思ったんだが」
第二王子が取り出したノートには見覚えがあった。鍵をつけた引き出しに入れっぱなしにしていたノートによく似ている。
「お前、随分と王家や侯爵家関係の噂が好きなようだな?」
あのノートは私が前世の記憶と噂を元に、五人の関係性を書いたノートだ。もう! もうもう! なんなのこいつ!! 人のプライベートまで勝手に漁って最悪!! 好きなんじゃなくて、対策を考えてただけよ!
ノートを私の方に置き、彼は笑いながら言った。
「こいつらの関係性調査について、お前に協力を仰ぎたい。占い師ミシェル・シルヴァレーン」
関係性調査? この五人についてこの人も調べたいってこと?
正直、こんな最悪なヤツに協力なんてしたくない。でも、でも、背に腹は代えられない。私は、自分の今一番の目的のために、イヤなヤツの協力者になるしかなかった。
だって、冷静になって考えたら不敬罪で首が飛んでもおかしくなかったし、五人の関係性に踏み込めないで時間が過ぎてしまってたのも事実だし、生きたいなら、そうするしかなかったのよ。
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