7話 不安的中占いの失態
「……言っている意味がわかりかねます」
絞り出した声は完全に震えていた。声も低さを保てずにいつもと同じ声色になってしまう。取り繕うことができなかったことに歯噛みする。
「お前の母親は王族直属の占い師だぞ? 娘に才能がないとよく嘆いていたのを直接耳にしている」
なんでこの人、ずっと威圧してくるんだろう。私の中で不安と怒りが入り混じって、言い返したくなってしまった。
「占い師の才能がないからと言って、占いをしてはいけないという法律はなかったように思いますが?」
そんな法律があれば、おまじないとかも出来ないし、普通に稼業にしてる人も辞めなきゃいけなくなっちゃう。
だから、私も強い口調で言い返してしまった。
「……問題はそこじゃない」
第二王子は一瞬驚いたように身を引いた。けど、すぐに顔を引き締めて身を乗り出し、バンっとテーブルの上に何かを叩きつけた。
テーブルに叩きつけられたのは何枚かの書類だ。国の刻印が見えるということは、これは重要な書類のはずだ。
「占い師の才能のない貴様が、なぜ国家秘密事項がしまってある鍵の番号まで知っている?」
「…………」
しまった、心当たりがある。二週間前の相談だ。宮廷勤めの兄が大事な書類を鍵のついたロッカーに入れたまま番号を忘れてしまったからどうしたらいいかという内容で、その勤務場所がゲームの魔王城つまりは現在の王城になるんだけど、ゲームで開ける宝箱の場所と一致したのよね。謎解き形式で印象に残ってたから、番号を助言しちゃったアレだ。
少し考えればそれが本当のことかどうかなんてわからないのだから、答えてはいけなかった。もしかしたら悪いヤツが書類を盗もうとしたかもしれないのに。
でもあの時は占いが当たるって評判になって一番調子に乗ってた時で、万能感でついそのまま答えちゃったのよ……。
サッと頭から血の気が引くのがわかる。
「先ほどやっていた占い方法から見ても、王族直属の占い師エヴァリーナ・シルヴァレーンとやり方がまったく違う。占いの力が開花したわけではないのは明白だ。貴様はどうやって鍵の番号がわかったんだ?」
ちょ、前の人の占いを勝手に見てたですって!? 占い師として情報の漏洩は許しがたいことなんだけどっ。
今度はかっと頭に血がのぼって、頭の側面がじくじくとする。急な体の変化に目の前がちかちかして、倒れてしまいそうだ。
「答えられないと言うなら、貴様を連行する」
バンっと私はテーブルを叩いて立ち上がった。頭に上る血のせいでくらくらするし、理性よりも怒りが勝った。
「拒否します!」
この身体で始めて出たであろう大声で言った。叫びに近かった。出したこともない声量にぜぇぜぇと息が切れる。
第二王子は私の勢いに押されて、身を引きながら目を見開いて固まっている。
「占いに来た方のお兄様が宮廷勤めの方かどうか確認しなかったのは、私の落ち度です。しかし、このテーブルに置かれた書類がその保管されていた物なのですよね? 証拠のために持ってきたのかと思われますが、ライオネル殿下の手元に書類があるということは、盗まれているわけではないはずです。何をもって私を罰するのか、私にはわかりかねます」
私は一気に自分が言いたいことを捲し立てた。書類が無事なら私になんの罪もないもの。占いをしただけで、捕まってたまるもんですか。
第二王子は見開いていた目を眇める。そして口端が上がった。
「……合格だ」
「はっ?」
聞こえて来た音がどういう意味かさっぱりわからなかった。だから、素っ頓狂な声が出てしまったのは許してほしい。
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