6話 イレギュラー人物は第二王子
何故ここに第二王子が? ことりと喉が鳴ってしまった。
でも、私は平静を装わなければならない。私はこれでも占い師を名乗っているのだ、お客様が自分から素性を名乗らない限り、そこに触れてはいけない。
「今日は、何を占いにいらしたのですか?」
「シルヴァーン辺境伯の娘、ミシェル・シルヴァーンだな?」
ちょっと、いきなり人の詮索を始めるんじゃないっ! 思わず突っ込みそうになっちゃったじゃない。布で顔を隠しててよかった。絶対顔に出てたわ、今の。
私は目を細めて第二王子ライオネル殿下を見る。
彼の表情は真剣そのものというか眉根が寄ってるので訝し気な表情だ。こちらを怪しんでいるのだろうか。視線が妙に合わない。私の視線よりも少し上を彼の目は見ているように感じる。
彼の顔をじっと見ても、前世でのゲームの記憶にはかすりもしなかった。五角関係に出てくる第一王子のフィリップ殿下の弟だから、出てこないはずはないのだけど。もしかしたらほんのちょっとしか出てこないのかもしれないし、モブだとしたらシルエットで出てきていた可能性もある。
ゲーム情報もない、今世での記憶でも会ったことがない人物に、私はどう接すればいいだろうか。
「……私は占い師です」
暗に素性は言いたくないと、言葉で返す。一線を引く私に、第二王子はさらに顔を歪めた。
「ミシェル・シルヴァーンで部活の許可を取っただろう」
怒気とは違う、厳格で厳しい口調に私は肩が上がった。
わかっているならわざわざ問いかけてこないでよね。いけない、責められているようでイラついちゃう。落ち着かないと。
「……ミシェル・シルヴァーンですが、何か?」
私は顔にかけている布と、フードを外して自分がミシェル・シルヴァーンだということを示した。
ミシェル・シルヴァーンだったら何か問題があるというの? 元々この占いの館はお母様のものだし、それを使わせてもらっているだけ。部活だって第二王子が言ったように私はしっかりと申請を出して通している。活動にも相手の悩みに答えているだけでなんら違法なことなどしていない。怒られるようなことなんて何もない。
第二王子は私の顔を確認するように目を眇め、しばらく黙った。何を考えているのかはわからない。
「……貴様、よく占いが当たるそうだな」
「……ええ、ご贔屓にしていただいております」
慎重に言葉を選ぶ。よく当たると言われているのは事実だから問題ない。
「だがしかし。貴様に占い師の才能はないはずだ」
頭が真っ白になる。ガツンと殴られたような気分だ。なんでそこまでこの人は知っているのか。そこが何か問題なのか。私は何かミスをしたのだろうか。
不安が頭をもたげる。
面白い、楽しい、と感じて頂けたら、
下の星マークから評価やブックマークをいただけますと、今後の活力になります!




