59話 持っている情報
過去の私は、ライオネル殿下に前世の記憶の一部を話していたはず。それであれば、前世の有益な情報を持っていると提示できるかもしれない。幼い頃の記憶は戻ってなかったとしても。
もし、前世の話しまでしていなかったとしたら冗談で強引に流そう。
「……やはり、占いの館をし始めた頃か?」
「入学式の時ですわ」
ライオネル殿下は私が記憶の断片を思いだしたのではないかと気づき、私に接触を図ったわけだ。
「あの、もしかして私に接触してきた理由や目的って、噂の真相を確かめるということではなかったのですか?」
「お前が昔言ったんだ。第一王子、侯爵令嬢、宰相の孫、平民、騎士の五人の関係性が国が亡ぼすと。だから、噂の真相を確かめ、何が影響を受けているのかを調べていた」
やはり、幼い頃の私はライオネル殿下に前世の話をしていたらしい。
「では、私と同じく、国のひいては世界の滅亡を回避するのが目的。と思ってよろしいのでしょうか?」
「ああ、相違ない」
目的も一緒となれば、認識をすり合わせておきたい。
「……ライオネル殿下から聞く限り、幼い頃の私は、今の私よりも多くの記憶を持っていたようです。持っている情報をすり合わせませんか?」
私の提案に、ライオネル殿下はテーブルにそっと何かを置く。
「これは……?」
分厚い本のようにも見える。けどタイトルがない。
「お前が幼い頃に書いたものだ」
私が書いたもの……その本に手を伸ばす。
「俺には読めない文字で書かれていたが、今のお前なら読めるかもしれないと思って持ってきた」
本を開く。その文字を私は読めた。懐かしいと言えばいいのかしら、前世で使っていた文字は小さな手で書いたせいか少し読みづらいけど、私の字だった。
「……読めます」
私はページをめくって読んでいく。内容は、私が覚えてる範疇の内容がほとんだ。けど、細かく記載されている部分には覚えのない内容があって、手が止まる。
ライオネル殿下の項目だ。
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