60話 ライオネルの設定
ライオネル殿下の項目だ。
『戦場の獅子と呼ばれ、指揮官としても戦士としても優秀で戦況をひっくり返す力を持つ。勇者としての圧倒的力を引き継いでいる人間。十六歳の時、何者かに毒を盛られる。強力な毒だったが、一命をとりとめた。しかし、右足の麻痺という障害が残り戦場には立てなくなった。彼の戦力を失ったことがすべての始まりだった』
最後の言葉に私はぞっとした。
「なんて書いてある?」
書いてあるままを言っていいのだろうか? どこまで幼い私は彼に伝えているの?
「…………」
「俺は十六歳になった今年、毒を盛られて戦場に立てなくなる。そして、その後国が亡ぶことまで聞いている」
「聞いてる通りです。誰が毒殺しようとしたのか、どんな毒なのかは書いてません。でも――」
記録の内容を見て、ライオネル殿下について記載されていた資料を思いだした。内容の記載とともに毒を盛られた青年が倒れているシーンの絵が描かれていた。今ならわかる。あの部屋は寝室に違いない。ベッドは描かれてなかった。でも、服装、そしてかすかに描かれた古いナイトテーブルにはカイリス王国の紋章が入っていた。
「ライオネル殿下が倒れている絵を思い出しました。憶測になりますが、ライオネル殿下が倒れるのは王宮のいずれかの寝室かと……」
「どこの寝室かはわからないのか?」
「王国の紋章が入った古いナイトテーブルがある寝室ですが、心当たりは?」
「……兄上の部屋だな」
まさかフィリップ殿下の寝室で毒を盛られるの?
「兄上とは情報交換をするのに、決まった日取りで夜に話をする。そのタイミングかあるいは、遅効性の毒か……」
私よりも冷静に分析するライオネル殿下。落ち着きすぎてない……? 毒を盛られるのよ?
「であれば、その日は解毒作用のあるものを飲んでおく方がいいか……倒れている俺の姿に今の俺と違う要素はないか?」
聞かれて、ライオネル殿下をまじまじと見る。カラーでの挿絵ではなかった。一色刷りの小さな絵だった。
「服装が寝衣だと思います。色がない絵でしたが、倒れてるライオネル殿下に大きな特徴はなく、手にカップを握っていたことぐらいしか……」
「色がないとなると発疹などもわかりづらいだろう……毒の特定は難しそうだな」
「毒にお詳しいのですか?」
「ああ、慣れているからな」
ずいぶんとスムーズに応えられて衝撃を覚える。慣れているとは、何度か経験があるってことよね? 暗殺ってこと?
「想像している通りだ。派閥の争いで命を狙われることが多い。兄上と俺で派閥が争っているせいだ」
だから、王位継承権放棄をしたと言っていたんだ。
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