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牛飼いと守護精と  作者: 久保 公里
第13章

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第13章-25 牧場の行く末

 「そんなもんですかねえ。俺にはとても無理だなあ」


 セイジュが吐息とともにつぶやいた。ライモンは苦笑しつつ、彼を見やる。


 「年季が違うだろう。俺はあいつらが生まれた時から見ているんだ。わからないはずがない。それに、あんただって騎士だろう。自分のところの厩にいる馬たちは見分けがつくんじゃないのか」


 確かに、とセイジュは考え込んだ。確かにどの馬が誰のものか、すぐにわかる。わからなければ仕事にならない。ライモンが言うのは、そういうことだろう。


 「なるほど。なかなか陰険なことをしますね」


 「俺は親切でわざわざ連れて行ってるんだ。文句言われる筋合いはないな」


 「まったくです」


 セイジュがうなずく。だが、とライモンがひとりごちるようにつぶやいた。


 「実際、フウケツのところのものが牛を連れているのを見るのは初めてだな。気づいたら、うちの牧場のそばにいるんで、なんでそんな頻繁に迷子になるのかと思ってたら、このあたりまで連れてきていたのか」


 「なんだか、すごい執念ですね」


 ため息交じりに、セイジュが言った。そう言われて、ライモンは初めて得心が言ったように、うなずいた。


 「そう言われればそうだよなあ。なんでうちにそんなに執着するのかな。牧場を広げたいなら、勝手にすればいいし、うちには関係ないだろうに。開拓していない土地は、この辺にはたくさん広がっているんだからな」


 「そうなんですね。土地がなくて、次期さま……んん、ライモン……の牧場を狙って、こんなことをするんだと思っていました」


 名を呼ぶのに言いにくそうに、成獣がそう言った。だよなあ、とライモンが応じる。


 「あとから来て、先に開墾して牧場を開いていたうちを、なんだか知らないけど、目の敵にしてるんだよな。どんどん広くしていってるんだから、うちはほっとけばいいと思わないか」


 まったくですよねえ、と今度はセイジュが応じる。


 「それで」


 ふと思いついたかのように、セイジュが言った。ライモンは首を巡らせて彼を見やる。


 「ライモン……は、自分の牧場を大きくしたいとは思わないんですか」


 「俺が?」


 その問いに、ライモンは少し考え込んだ。


 「うーん、俺は今のところ、考えてはいないな。母さんとロウ爺と三人では、今の規模で手いっぱいだからな。そりゃ、将来的にはもっと人を雇ってお大きくできればなとは思うけど」


 「でも、今は人がたくさんいるじゃないですか。近くを開墾すれば、広くなってもっと牛も飼えるんでしょう。したいとは思わないんですか」


 セイジュの言葉に、ライモンはああ、とうなずいた。つい、元のままで考える癖がついているようだ。


 確かに今の状態では、手が余っていることが多い。そんなときは、いままで手付かずだった家や牛舎などの修繕や、畑仕事をしてもらっている。


 「そうだな。だが、しばらくすれば俺はここにはいなくなる。母さんやロウ爺はどうするかはまだわからないけど、いなくなる俺が決めることじゃないだろうからな」


 「あ、そうですねえ」


 のんびりと話していると、モエギが小走りで近づいてくる。ライモンは笑顔で彼を迎えた。


 「ライモン!」


 「終わったのか、モエギ」


 「はい!」


 主の問いに、守護精は元気よく答える。ライモンはその頭をポンポンと軽く叩いた。


 そこへ。


 「おしゃべりはそのへんにして、薬草を回収して戻りましょう。そろそろお昼でしょう。お腹がすいてきましたわ」


 シラフジがまじめな表情でそう言う。あとの三人は顔を見合わせた後、誰ともなく服出すかのように笑った。


 「ああ、帰ろうか」


 ライモンは背負い籠を取り、薬草を詰め始めた。


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