第13章-22 持ち帰る準備
「おい」
ライモンがその背に呼びかける。
「牛、忘れてるぞ」
ライモンがのんびりと草を食んでいる牛を指し示した。トビたちが不自然に連れてきていた牛だ。カチが慌てて牛の鼻輪をつかんで引っ張った。牛は抵抗するように少し抗ったが、すぐにカチに連れられていく。
「あ、ちゃんと薬を取りに来なさいよ」
シラフジが思い出したかのように、トビの背に声をかける。その声が聞こえたのかどうかはわからない。少しだけ、振り向いたような気がしたが、気のせいかもしれない。
ふたりと一頭の姿が見えなくなると、ライモンは吐息をついた。
「思わぬ時間を取りましたわね」
シラフジもライモンと同じ気持ちと見え、ため息とともに髪を払った。ライモンはむすっとしたまま、うなずく。
「まったくだ。こんなに日も高くなってしまった。早く薬草を持ち帰らなければいけないんじゃないか」
「そうですわね。こんなに採れるのであれば、馬車で来ればよかったですわね。まあ、あの悪路では、馬車は難しいですけど」
「なんだよな。ここは徒歩で来るほうがいいんだよな」
「問題ないでしょう」
ライモンの言葉に応えるように、モエギが言った。ライモンがおや、というように守護精を見やる。
「どういうことだ、モエギ」
「運びやすいように、波動をかけてしまいましょう。このくらいなら、四人で運べると思いますよ。背負い籠もありますし」
そう言いながら、モエギはシラフジのほうを見やった。
「シラフジさまも遊ばないでください。あなたのほうがよくご存知だと思いますよ。おひとりでこのくらいは持ち帰ることもあるでしょうに」
シラフジは少しばかり肩をすくめた。その際に、わずかに舌を出したのを、ライモンは見逃さなかった。
「シラフジさま!?」
「あら、薬師には必要な波動ですわよ。薬草は大量に必要になりますからね。まあ、体力勝負なところはありますけど」
はあ、とライモンはため息を落とす。背後でセイジュが笑いを堪えているのがわかった。
「それで」
とライモンはモエギに目を移す。
「これをどうするんだ、モエギ」
「水分を少し抜きます。本格的に乾燥させるのは戻ってからになりますが、水分を抜くことで嵩も減りますし、多少は重さも軽減されます。つまり、持ち帰りが楽になるということですね」
「そうか」
わかっているのかいないのか、ライモンは大きくうなずいた。
「じゃ、それをやってくれ。終わったのから籠に入れていこう。種類別にしたほうがいいんだよな」
「そのあたりは、長殿にお任せいたしますよ」
指名されて、シラフジは自分で自分を指さしたが、すぐににっこりと微笑んだ。




