第12章-42 お土産
「母は私がまだ幼いころにはかなくなられました。父はあのとおり、忙しい人ですから、あまりお会いしたことがありません。会えばかわいがってもらいましたが。その代わりと言ってはなんですが、叔母が母の代わりによくしてくださいました」
「さきほどの、王妃さまと間違われたという叔母さまですわね」
「はい。わたくしの母の姉ですが、足しげく王宮のわたくしのもとに通ってくださいました。母の代わりにと、いろいろと気を配ってくださって、感謝してもしきれません。わたくしはあの方と、乳母を母として育ったようなものですわ」
「すてきな叔母さまなのですね。私も一度お会いしてみたいわ」
「はい、ぜひ!」
フヨウは嬉しそうにアカネの手を取った。
「一度と言わず、何度でも。アカネさまもライモンさまと一緒に王都に来られるのでしょう。叔母に紹介いたしますわ。おふたりは、よき話し相手になるような気がします。ぜひとも、会って話してみてくださいませ」
フヨウの熱心な物言いにたいして、アカネはあいまいな笑みを返した。アカネは王都に行くかどうか、まだ決めていないとは、フヨウには告げなかった。
それに気付かぬように、フヨウは楽しげに笑い声を立てた。
「ええ、きっとおふたりは気が合うと思います。楽しみなことですわね」
「そうですね」
アカネはただ、それだけを返した。
そこへ。
ライモンが息せき切って現れた。立ち止まると、膝に手をついて荒い息を収めようとする。隣にいるモエギが、息も乱していないのとは対照的だ。
「ライモン?」
アカネが少し驚いたように、息子に声をかける。ライモンは息を整えると、顔を上げた。
「すみません、遅くなりました。フヨウさま、これをお持ちください」
ライモンは布に包まれたものをフヨウに差し出した。フヨウは目をしばたたいて、受け取るのを躊躇した。
さもありなん、彼女は差し出されたものを直接受け取らないように、教育されている。もちろん、ライモンは知らぬことではあったが。
ライモンは、フヨウが受け取らないのをみて、小首をかしげた。
「次期さま、それは私が」
ライモンのそばから、ハシドイが手を差し出した。ライモンが不思議そうに彼を見やる。それから、包みを彼に手渡した。
「そうだな。少し重いから、ハシドイさまのほうがいいですね」
ハシドイに渡した包みはふたつあった。確かに見た目よりずしりとしている。今度はハシドイが首をかしげる番だった。
「次期さま、こちらは……」
「ああ、うちのチーズです。さっき喜んでもらったし、陛下も気に入っておられたから、お土産にと思って。この間、街に売りに行ったし、あまり残っていないから少しだけなんですけど」




