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ぷるぷる。ボクは……、悪いスライムだよ?

 ぷるぷる、ボクは悪いスライムだよ。

 色んな奴らを恐ろしい目に合わせるのが大好きなんだ。

 今日も獲物を探して山の中をお散歩中さ。


 おっ! さっそく獲物発見!


 人間が倒れてるぞ。

 まずは少し離れたところからこっそり様子を探ってやろう。


「うう……。腹が減ってもう動けない……。このまま餓死するしかないのか……」


 なるほど、倒れて動けないのか。

 この辺りは人間があんまりこないからな。

 きっと不安で仕方ないはずだ。


 よーし、ボクが更なる恐怖を与えてやろう!


『スライムは周辺に獣がいないか探し始めた』


 んーと……。

 いた、イノシシだ。

 必殺! スライムニードル!


『針というよりは槍のような形状に変形したスライムによって、イノシシは頭部を貫かれて絶命した』

 

 よし、一撃で仕留めたぞ。流石はボクだね。

 あとは……、火炎の息!

 ふっふっふ。野生の猛獣もボクにかかればこの通り、一瞬で丸焼きさ。

 中までしっかりばっちりこんがりだよ!


 あとはこいつを……。


『スライムはイノシシの丸焼きを背負って先程の男のところへ向かった』


 よっこらせっと。


 ドサッ!


『スライムは気が付かれないように丸焼きを男の近くに放り投げると、急いで身を隠した』


「こ、これは……?」


 ふっふっふ。こわいだろー?

 イノシシを丸焼きにするような強いモンスターが近くをうろついているんだぞー!

 ボクに襲われるかもしれない恐怖を存分に味わうがいい!


 ……あ、そうだ。

 今度は人間達の住処に行ってみよう。

 人間はひ弱だからな、きっとたくさん悪いことができるぞ!

 こっちの人間は見捨てて行こう。

 ふっふっふ。我ながら悪いスライムだぜ。


 ボヨン、ボヨン。


『スライムは思い立ったが吉日とばかりに人里に向けて跳ねていった』


「イノシシうめぇ! きっとこれは神様の思し召しだ。助かった!」


 ★


 ぷるぷる、ボクは悪いスライムだよ。

 色んな奴らを恐ろしい目に合わせるのが大好きなんだ。

 今日は獲物を求めて人間達の巣に来たよ。

 

 おっ! さっそく人間達を見つけたぞ! 

 あんまり大きくないな。

 まだ子供みたいだ。


「お前なんて仲間に入れてやらねーよ!」


「あっちいけ! ばーか!」


「そんなぁ……。うぅ……」

 

 ふっふっふ。さっそく群れから一人逸れたぞ。

 運命がボクに悪いことをしろとささやいているな。

 よし! あの人間を洗脳して、奴らを内部から崩壊させてやろう。


『スライムは一人になった子供に近づいていった』


 ボヨン、ボヨン。


「あ、スライムだ」


 ボヨン、ボヨン。


「僕と遊んでくれるの?」


 ボヨン、ボヨン。


「ふふ、かわいい」


 騙されているとも知らずに、バカな人間め。

 ほれほれ、ボクの言う事聞かないと体当たりしちゃうぞー、こわいぞー、いたいぞー。


「おい! あいつスライムと一緒にいるぜ!」


「ほんとだ!」


 さっきの人間達か。

 ちょうどいい。お前たちも一緒に洗脳してやる!

 恐怖で震え上がるがいい!


 ボヨン、ボヨン!


「こっち来たぞ!」


「むかえうてー!」


 ボヨヨン、ボヨヨン!


「おい、お前もこっち来いよ! 一緒に戦おうぜ!」


「え……、いいの?」


「スライムから村を守るんだ! いくぞ!」


「う、うん!」


 ボヨン、ボヨン!


 ふっふっふ、人間達が集団行動をするようになったぞ!

 さっそくボクの洗脳が効いてきたな!

 

 ……おっと、もう夕方か。

 今日はここで許してやるとしよう。

 人間たちよ、ボクの恐ろしさに震えながら眠れない夜を過ごすがいい!


 ボヨン、ボヨン!


『スライムは村の外に向かって跳ねていった』


「よし、追い払ったぞ! これからは俺達みんなで村を守るんだ!」 


「お前も一緒だぞ! いいな?!」


「ボ、ボクも? ……うん、ありがとう!」



 ぷるぷる、ボクは悪いスライムだよ。

 色んな奴らを恐ろしい目に合わせるのが大好きなんだ。

 今日も人間の巣に来たよ。

 四本足で歩くちっこい人間のご機嫌をとってるんだ。


「あぅー」


「あらあら、スライムと遊んでるの? 仲良しさんになったのね」


 ふっふっふ、愚かな人間どもめ。

 こうして愛想を振りまいているのはもちろん演技さ。

 本当のボクはすっごく腹黒いんだ。

 お前たちが油断しきったところを――。


「あぅあぅあー」


 おっと、中々鋭い攻撃じゃないか。

 お前、さては勇者だな?

 よーし、ボクがお前に敗北を教えてやろう!


 ボヨン、ボヨン!

 

「あぅー」


 ほれほれー。

 ふっふっふ。ボクはつよいんだぞー?


「ぅあー」


 ……おっと、もう夕方か。

 今日はここまでにしてやろう。

 すぐには殺さないぞ。

 勇者よ、自分の無力さを存分に噛みしめるがいい。


『スライムは村の外に向かって跳ねていった』


「いい遊び相手が出来てよかったわね」


「あぅー」



 ぷるぷる、ボクは悪いスライムだよ。

 色んな奴らを恐ろしい目に合わせるのが大好きなんだ。

 今日も人間の巣に来たよ。

 でも人間達はみんな魔王軍に殺されたみたいだ。

 

 ボヨン、ボヨン。


『スライムは倒れた人間達に触れてみた。……全員、ただの屍のようだ』


 みんな死んでる。

 すごい顔をしてるな。

 きっと苦しんで死んだんだろうなぁ。

 他人の不幸は蜜の味ってやつだね。

 惜しむらくはこいつらが苦しんでいるところを直接見れなかったことかな。

 やっぱり自分で恐ろしい目に合わせてやらないと楽しみが半減だね。


 そうだ!

 

 今度は魔王のところに行ってみよう。

 魔族たちは人間とは違う反応をしてくれそうで楽しみだ。


 ボヨン、ボヨン。


『スライムは魔王城の方向に向かって跳ねていった』



 ぷるぷる、ボクは悪いスライムだよ。

 色んな奴らを恐ろしい目に合わせるのが大好きなんだ。

 今日は魔王城に来てみたよ。

 セキュリティはバッチリの物件みたいだけど、残念!

 ボクのスライムボディなら少しの隙間さえあれば侵入できちゃうのさ!

  

「魔王様バンザーイ! 魔族バンザーイ!」


 どうやら宴会中みたいだね。

 みんなガンガンお酒を飲んでるよ。

 よーし、それじゃあボクもさっそく悪いことしちゃうぞー!


『スライムはこっそりと酒の入った樽に近づいた』


 バレないように小さく穴を開けてっと。

 よーし、酒の中に毒を注入だ―!

 天然の毒草からボクが直々に抽出した毒さ。

 でも普通の濃度だと魔族には効きが悪いからね。

 一ヶ月掛けて集めまくった毒をしっかり濃縮しておいたよ。

 これならどんな魔族でも昇天確実さ!

 無味無臭で遅効性だし、まさに『気がついた時にはもう手遅れ』ってやつだね!

 

 おっと、どうやら魔王はここにはいないみたいだ。

 上の方かな?

 バカと煙は高い所が好きっていうしね。

 もちろんボクは違うよ?


『スライムは魔族達に見つからないように城内を探索し、飲料に片っ端から毒を入れていった』


 ここが最後の部屋か。

 おっ! いたいた!

 なんかすごい偉そうだし、コイツが魔王で間違いないね!

 よーし、本を読んでる隙にグラスのワインに毒を注入してっと。


 おっ! さっそく飲んだ。

 飛んで火に入るなんとやらってやつだね!


 あとはこいつらが死ぬのをじっくり観戦するだけさ。

 人の不幸は何回見ても飽きないものだよね!


『次の日の朝。魔族は一人残らず死に絶えていた』


 うーん。

 やっぱり苦しまずに死ぬのはイマイチだったなぁ。

 まあ、いっか!


 さてと、それじゃあ次の獲物を探しに行こうかな。

 あ、そうだ!

 せっかくだし、戦利品としてこの王冠を貰っていこう。


『王冠を乗せたスライムは人間の村に向かって跳ねていった』



 ぷるぷる、ボクは悪いスライムだよ。

 色んな奴らを恐ろしい目に合わせるのが大好きなんだ。


 今日はこのあいだ魔族達に殺された人間どもの墓を見に来たよ。

 他人の不幸は何度見ても気分がいいね。

 人間の巣がまるごと全滅だったからな。 


 そうだ!

 嫌がらせにこの王冠を飾ってやろう。

 へっへっへ、どーだー、お前たちをぶっ殺した奴らの親玉が持ってた王冠だぞー。

 こんな奴らに殺されてくやしいだろー。


 ぷるぷる。


 ぷるぷる。


 ぷるぷる。


 ……ちゃんと仇は取ったからな。


 ボヨン、ボヨン。


『スライムは誰にも見られることなくどこかに向かって跳ねていった』



 ぷるぷる、ボクは悪いスライムだよ。

 さーて、今度はいったいどんな悪いことをしようかな!


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[一言] スライム… お前が疫病神やったんか…
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