バレンタインと不合格
1月が終わり、2月が来た。
2月と言えば、節分の日…もあるけれど、2月14日のバレンタインデーがある。
「バレンタインデーかぁ~。もうそんな季節か」
「東間は今年も力君にあげるの?」
「あぁ、うん。義理だけどね」
「本命じゃないのか。分かってはいたが」
櫻田はすっかり元のキャラに戻っている。
「そういうお前は兄妹にあげるんだろ?」
「あげないと死んじゃう人いるからね」
「木崎君達にはあげないの?」
「あぁ~そうだね。いろいろとお世話になってるから…稲井君の分も作ろうかな」
「あっ、忘れてた。稲井君」
「失礼な奴だな、お前」
「あははっ。でも木崎君って確か甘い物だめじゃなかったっけ?」
「えっ?…あぁ~なんかそんなこと道久君に聞いたな」
記憶が曖昧すぎて、本当かどうか分からない二人。
「まぁ、本人に聞けば良い話だよね」
「あぁ。そうだな」
学校へ着いた後、櫻田と東間はB組の教室へと向かった。
しかし、木崎はまだ学校へ来ておらず、聞くことが出来なかった。
「いないね」
「待ってたら来るんじゃないか?」
「えっ、でもさ…「木崎なら今日は休みだぞ」
すると、宮間が櫻田と東間に声をかけてきた。
「おはよう、宮間君。木崎君、休みなの?」
「あぁ。それより、木崎に何の用だったんだ?」
「いやぁ~もうすぐバレンタインでしょ?それで木崎君、甘い物嫌いだとかって聞いたからさ。確
認で聞いておこうかって櫻田と話しててね」
「道久に聞いたんだな?…あのお喋りめ」
宮間は少し不機嫌な顔をする。
「宮間君…」
「あぁ、すまん。木崎が甘い物がダメなのは、本当だ」
「そうなんだ。じゃあ、木崎君にバレンタインあげられないね」
「そうだな。甘い物がダメならお菓子全般がダメなわけだし…何か代わりのものを渡すか」
「いや、真剣に考えてるところ悪いが…あいつの前で、バレンタインの話はしないでもらえるか?」
「「えっ?」」
二人は思わず声を揃えて驚く。
「あいつにとって、バレンタインは地獄みたいなもんなんだ。だから、そっとしてやってほしい」
「「…分かった」」
なんだか重い雰囲気になったため、櫻田と東間は自分達の教室へとまっすぐ帰って行った。
しかし櫻田はどうしても気になったため、昼休みにD組の教室を訪れる。
「あれ、りゅーちゃん?どうしたの?」
「道久君。ちょっといいかな?話があるんだけど」
「いいよ。ここじゃだめな話だね」
察したのか、畑本は椅子から立ち上がると櫻田と一緒に屋上へと向かった。
「良かった。誰もいなくて」
「…うん」
「それで、話って何?」
「実は、今日…バレンタインの話を東間としてて。それでお世話になってる木崎達にチョコを渡そ
うって」
「うん。それで?」
「で…木崎が甘い物ダメだったんじゃって話になって。でも曖昧だったから木崎に確認しようとし
たんだけど、宮間君にお休みだって言われて…「あぁ~なるほどね。大体わかった」
「ゆーと君に言われたんだね。きー君の前でバレンタインの話をするなって」
「…うん」
「それで、知りたいんだよね?どうして、ゆーと君がそんなことを言ったのか」
「…うん」
「けど、りゅーちゃん。君がそれを知ってどうするの?」
「えっ?」
畑本の口から冷たい言葉がかけられた。
櫻田はその言葉に思わずドキッとする。
「友達だから知りたいの?それとも…ただ気になるだけ?」
「そっ、それは…」
櫻田は考える。
そして考えた言葉は…。
「僕は木崎にいろいろなものをもらった。木崎と会って、宮間君や道久君に会えた。自分が想像して
た高校生活とかなり違っちゃったけど…それでも僕は三人に会えて、一緒にいてすごく楽しかったから。
だから…バレンタインをきっかけに何かお礼がしたいって思って…。何かしてあげたいって思って…。
僕がしていることは…間違っているんでしょうか。大切な友達のことを知りたいというのは…間違い、
ですか?」
「…」
櫻田は彼の言葉を待った。
すると…。
「きー君にとって、2月14日は悲しい日なの。今のりゅーちゃんには、それしか言えない」
「えっ…」
「不合格」
「えっ!?」
訳が分からないが、畑本に不合格と言われた櫻田は落ち込んだ。
「大丈夫。まだチャンスはあるから」
「えっ、チャンス?」
いったい何のチャンス?と聞き返そうとしたが、畑本は「あっ、そろそろ教室戻らないと」と逃げる
ように早足で屋上を出て行った。
「…何なんだ?」
櫻田はそう独り言を呟いた後、自分も教室へと戻ったのであった。




