木崎・宮間に振り回される櫻田
そして、あっという間にテスト一週間前に入った。
「櫻田さん、大丈夫?顔色悪そうだけど」
「あぁ…大丈夫。ちょっと頭使いすぎただけだから」
とはいうものの、気分的に櫻田は病んでいた。
その理由は宮間との勉強会で、彼の言葉が彼女の心をずたずたと突き刺さるよ
うに振ってくるのだ。
「お前は基礎からなっていないな?」
「どうしてこんな問題が解けないんだ?」
「まったく…お前は…」といろいろと言われるのに耐えながらの勉強会。
櫻田はますます宮間に苦手意識を持つようになってしまう。
「無理しちゃダメだよ?」
「ありがとう。でも、大丈夫ですから」
そして、その日の放課後も少人数教室で勉強会が開かれた。
「少し休憩だ」
「はっ…はい」
だんだんと言葉が今まで通りの敬語に戻ってきていた。
休憩だと言っても気を抜いてはいけないと思い、まだ克服していない部分に
目を通す。
「休憩だと言ってるだろ?」
「でも、もう一週間前だし…」
すると、宮間は櫻田が自分に対する態度を見て彼女の顎をぐいっと
自分の方へと無理やり向ける。
「えっ?なにっ」
「ちゃんと俺を見ろ。逸らすな」
櫻田は人の目をじっと見ることができない。特に苦手な人間に対しては
どうしても目が泳いだりする。
「俺が怖いか?」
「いっ、いえ…別に」
「そんな震えた声で言われても説得力がないぞ」
「…」
櫻田は黙り込んでしまった。
シーンと静まり返る教室で二人は見つめ合ったまま動かない。
すると、宮間は櫻田にこう話した。
「努力していることは認める。俺に文句言われながらも、必死について行こ
うとしていることも、分かりやすいように授業で使うノートと別に苦手分野
に分けてノートを作っていることも」
「あれは中学の時の学習ノートのあまりで…」
「担任教師が英語を担当しているということから、昼休みの間に
テスト範囲についていろいろと聞いてただろ?」
「っ!??」
宮間の言う通り、櫻田の担任は英語を教えている。
話しかけやすいということもあって、彼女は担任にお願いして昼休みに
昼食を早めに切り上げて授業始まるぎりぎりまで聞いていたところをたまたま
職員室に用事があった宮間に偶然見られてしまったのである。
「みっ、見てたんですか?」
「用事があって、偶然な。気が付くかと思ったが、集中していたのか全く
もって気がつかなかったみたいだが」と宮間はここで初めて笑みを浮かべる。
よほどおかしかったのだろうか?
「お前が努力していることぐらい、俺が知らないわけがないだろ?
そんなことも知らずにお前は俺を鬼畜な鬼教官だと思っていたのか?」
「…」
図星である。
「休憩は終わりだ。さっきの続きから行くぞ」
「…はい」
櫻田はその日以来、宮間に徐々にではあるが少しずつ心を開いていき
勉強会も嫌ではなくなった。
中間考査当日には、覚えた所が出てきてすらすらと解答していき
中学ではあり得ない清々しい気分を味わい、二日目・三日目も余裕であった。
数日後、テストが返ってきた。
「全教科80点以上採れましたぁー!」
「おぉ~すげぇな、櫻田。中学の時はそんな点数採ったことなかったのに」
「東間、僕頑張ったよ~」
「おぅ、よしよし~頑張った頑張った」
「良かったね、りゅーちゃん」
「木崎、あの約束忘れたとは言わせないぞ?」
「あぁ~もう。分かったよ。やればいいんだろ、やればっ!」
木崎は観念した。
「あぁ…これで解放される~」
櫻田は、テストという呪縛から解放されて力が抜ける。
すると木崎がまたしてもとんでもないことを言い出した。
「ただし、地味子も一緒じゃないと俺は嫌だからな」と、付け足されたのだ。
これを聞いた櫻田は「はっ!?」とすぐさま地べたに座り込んでいた身体を
起こして立ち上がった。
「木崎…」
「俺、地味子と一緒ならS組に入ってもいい」
「もう!いい加減にしろぉーーー!!!!!!!!!!!!!!」




